伯爵令嬢×独白
お待たせして申し訳ございません。
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……っ……どうしてなの?アルベール様っ!
私は貴方の隣に立つに相応しい、完璧な令嬢と成れるよう血も滲む努力をしてきたというのに。
私の何がいけないというのですか……っ!
貴方の理想とはなんですかっ!
貴方は何処にいるのですか!
貴方の心はあの娘にあるというのですか……っ!
思えば、貴方のやることはいつも分からないものばかり。
ふらりと帰って来たかと思っていたら、会えぬまま貴方はまた何処かへと行かれてしまう。
今度こそ、と行動に移してもすれ違い続き。
そうあの時……
『申し訳ございません、お嬢様。若様は只今手が離せない状況でして…面会のほうは難しいかと……』
『申し訳ございません、若様は会談中でして……』
『申し訳ございません、旦那様とともに御城に参上中で若様はいらっしゃいません』
『申し訳ございません、……若様は行ってしまわれました』
えええいッ!もうっ、腹立たしいッ!
グットレーベン家執事の『申し訳ございません』を何度聞いたことかッ!
何度私が訪れたというの!?たとえ忙しくとも少し顔を見るだけでいいというのに!
しかも、思い出すことがアル様ではなくてあの執事だなんて嫌がらせじゃない。
それにしても、アル様に会える時間すら取れなかったというの?!あの執事無能なのか、有能なのか皆目見当がつかないわ。毎日の様に足を向けていたのだから、次も来ると容易に見当出来たでしょうに。
気づかなかったの?
気付いていて配慮しなかったというの?
思い遣りがなかったのっ!?
まあ、どっちにしたっていいわ。次に会ったら最後。
この怨み、すべて返してやるんだから。
ふふふ、覚悟していなさい。グットレーベン家執事!
復讐に燃える私の嫌がらせ覚悟していなさい!!
突然、私の脳裏に一つの考えがキラリと閃きました。
……ちょっと待って、あの執事今回の仲間なの?
だったら話しが繋がるわ。社交界の噂にも流れず、襲名にもならず、且つ周りにも気付かれないように逢引することは難しい。
しかし、それらの関門をすべて潜り抜けることができる場所がすぐ近くにあるではないですか。
それはアル様の屋敷グットレーベン家。普通はお父上やお母上に鉢合わせてしまう可能性が大のため逢引候補からは一番にはじき出されてしまいます。
ですが、協力者がいるとしたらどうでしょう?
執事ともならば、すべてのスケジュールを把握し手引きすることが可能です。
私と会っていなかった空白の時間に二人は愛を確かめ合っていたっていうの?
『ねえ、ラビスちゃん、俺のこと好き?』
『やだわ、恥ずかしい……。そんなことアル様はご存知でしょう?わざわざ言わせるなんて酷いお方』
『ふふ、好きな女性には四六時中言ってほしいものなんだよ。だから、ねえ、言ってよ……』
『嫌ですわ。恥ずかしくて死にそうですわ』
『クス、本当に可愛いなラビスちゃんは……。でも言ってくれないとイタズラしちゃうよ?』
そのままふたりは蜜のような甘い時間を……
っっって!!うわああああぁぁぁ!!
消えてっ!お願いですから、消えてくださいぃ!
何ですかこれはっ!
私の不潔っ!ケダモノ!破廉恥過ぎます!
こ、こんなことを想像してしまうなんて……!
う、ううっ汚れているわっ!こんなのでは嫁の貰い手が無くなってしまいますっ!
アル様は私のですううぅぅ~!!他の女に渡すなんてこれっっぽっちもありません!!
たとえ、アル様の心がこちらに無くとも、戻らないのだとしても知りたい!
私の何がいけなかったというのか、一体彼女は何者であるのか。
アル様は何を考えておられるのか。
よおしっ。そうと決まれば明後日に情報収集といきますか!
これが吉と出るか凶と出るか分かりません。
しかしアル様、私は貴方のことを忘れることができません。
あと少し、少しでいい。貴方を知る権利を私にくださいませんか?
どんな辛い結果が出ようと諦めてみせますから。
ミジャルト家長女、ガーネスト。家の名により誓います。
この先どんな真実が待ちうけていようがすべてを受け入れ諦めてみせます。
私は薄ぼんやりと見える先に不安になりながらも進むと誓う。
それを証明するように胸元をぎゅっ、と握りしめた。