表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/54

「四十三」

 サキ子ってのは、実に面白い存在だ。

 『付喪神』だってだけでも十分そそられるものがあるが、その成り立ち、有り様、どれをとっても興味深い。

 普通、『付喪神』ってのは「物」が『変化へんげ』した妖怪だ。ちゃこのように、生物自身の魂が『変化』し化生となったものもあれば、無機物が魂を得て『変化』したものもある。

 だがどちらにしろ、その『依り代』とする生物や無機物に支配される形で存在することになる。つまり、魂だけが抜け出て別の何かに宿る、なんてことは言語道断であるわけだ。

 ――だが、どうだ。サキ子が今、俺の元に在るのは、元々の『依り代』である掛け軸から、俺のスマートフォンに居を移したからだ。ルール違反もいいところである。


 それに、以前の記憶を一切持たず、自らのこと、『付喪神』のこと、その他諸々の当然あって然るべき「あちら側」の存在としての知識が、全くないと言うのも不思議なことだ。

 こうなってくると、余計な欲望――もとい、知的探求心がむっくむくである。

 サキ子がやって来て以来、その記憶を取り戻してやろうと言う建前の元、時間を見付けては色々と実験をしたもんだった。


 その結果、特性――と言うのは大げさだが、サキ子の出来ること、出来ないことが幾らか分かった。

 まず、サキ子の霊体は自由である。これは、掛け軸からスマートフォンへの移動を指すのではなく、現在進行形で自由なのだ。

 スマートフォンに『憑依』したまま――即ち『ウイネ・サキ』の姿のまま、スマートフォンから離れて行動するのは勿論、完全に霊体を切り離すことすら可能だった。

 ただ、どちらのケースでも、数メートル離れただけで「存在」が希薄になり、物体に触れることは疎か、早妃ですら姿形を認識するのが困難な状態になってしまう。

 そのまま離れ続けたらどうなってしまうのか――……は、流石に実験でやって良いレベルを超えている。早妃にも怒られたし、俺自身も、まあ、なんだ。……悲しいことは、嫌いなわけで。


 そしてまた、『依り代』を自由に移動することも可能だった。

 試したのは、漫画や雑誌、PC上の画像データ、フィギュアやそこらの文房具等。

 結果、サキ子の「感覚」を移すと言うことに関しては、全ての実験対象物に可能だった。

 しかし、自由に動ける『写し身』を作り出したり、話したりと言うことは、所謂「二次元画像」が主体を成す物体でなければならないようだった。


 ――そして、これが最も奇妙で、最も重要なことなのだが。

 サキ子には、早妃のように「あちら側」を感じる能力――所謂『霊感』がない。そこらの浮遊霊を見ることも、ちゃこの姿を見ることも出来ない。

 おまけに言えば、佐保ちゃんのような『霊媒』の力もなければ、ちゃこのような『祓除ばつじょ』の力もない。

 サキ子は在り方がおかしなだけで、その霊的価値としては、ほとんど俺と変わらない。


 そう。俺と、変わらないのだ。

 それはつまり、これまでの妖怪的特質を持ちながら――一切の霊的干渉・障害を受け付けない、と言うことだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ