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「三」
社の小さな扉を開くと、中には細長い桐箱が一つ収められていた。
隠された社に安置された桐箱。
得体の知れないものを感じなかったわけではない。そうでなくとも、お社と言うのは元来神聖なものなのだ。みだりに俗世の人間が手を触れて良いものではない。
――だが、ここまで来てどうして後に引けよう。
一つ生唾を飲み込んでから、俺はそっと桐箱を開けた。
収められていたのは、一本の掛け軸だった。地上の蔵に幾つもある、他の掛け軸と何ら変わらないごく普通の掛け軸だ。強いて言うならば、さして大きいものではない、と言うくらいのもの。
別に禍々しさのようなものも感じなかったし、高価なようにも見えなかった。
だから、さして躊躇することもなく、俺はその封を解いたのだ。
――現れたのは、垂れ髪をした着物姿の少女だった。