「二十九」
須勢理早妃と仙巌園佐保は、良く似ていた。
もちろん、趣味や性格や容姿は大きく違う。
けれど、共に友人を作ることが苦手なところ――意識的にしろ、無意識的にしろ、人を遠ざけてしまうところが、とても似ていると思った。
そしてそれは、必ずしも彼女たちが「悪い」わけではない。「原因」が彼女たちにあったのだとしても、そこに「責任」はないはずだった。
早妃が集団から孤立したそもそもの原因は、やはり虚弱であったことだろう。
長らく満足に学校へ通うことも出来ず、外を駆け回ることも出来ず、山中の屋敷の周囲には民家などまばらで、同年代の子供ともなると最早皆無だった。
しかし、孤立を決定付けたのは、何と言ってもその異能だ。
ただでさえ人が訪れ難い環境であるのに、その上、眼に見えない何かと談笑している姿など見られてしまったら、もうお仕舞いである。
当初は早妃の境遇を哀れに思い尋ねてくれた人々も、時が経つに連れ一人減り、二人減り、早妃が十になる頃には、じいさんと診療所の女医さん以外、誰もいなくなっていた。
――そんな早妃と、佐保ちゃんは同じだった。
佐保ちゃんから人々を遠ざけたのも、また――異能、だったのだ。




