「二十五」
適当なところで佐保ちゃんに暇を告げつつ、俺はおもむろに早妃の手を取った。
――瞬間、やっぱりか、と確信する。
そして、確信した以上は、もう迷っている余地はない。
「っ……にい……さま……?」
頬を染めながら、困惑した顔で俺を見上げる早妃。
佐保ちゃんはと言えば、
「え? あっ――わっ、分かりましたっ! そ、それじゃっ、えとっ、ごゆっくりっ……!」
などと、顔を真っ赤にして、あたふたと。
……何をごゆっくりなのだろうかとは思いつつも、思惑通りではある。
佐保ちゃんは早妃へ慌ただしく手を振ると、機械仕掛けの人形のようにくるりと回れ右をした。
佐保ちゃんの意識が逸れたのを確認して――彼女の肩に、手を伸ばした。
指先へ確かに触れたそれを、一息に摘み上げる。
隣で、あっ、と小さな声が漏れた。
気配に気付いたのか、佐保ちゃんは一度振り向いた。が、こちらが笑みを返してやると、軽く会釈をして再び背を向ける。
遠ざかる背をじっと見送っていると、驚きを隠せない声で早妃が言った。
「にいさま――見えるの……ですか?」
……手の中では、白い服を着た小さな女の子が、じたばたと暴れていた。




