[一]
十七歳の春。
俺が奥出雲の家を訪れたのは、じいさんの遺品を整理するためだった。
俺と、親父と、母さんと――妹。一家総出の大仕事。
蔵いっぱいに詰め込まれたガラクタの山を、たった四人で片付けると言うのは楽なことではなかったけど、爺さんの縁戚は、もはや俺達一家で全てだったのだから仕方がない。
しかし、案の定と言うべきか、春休みを全て費やしての作業も虚しく、終わりの見えぬままにタイムリミットはやって来た。
ごくごく真面目な高校生である俺には新学期と言うものが待っていたし、今年ようやっと念願の高校生となる妹にしてみれば、その意味はもっと大きい。
俺の新学期などはともかく、妹が心待ちにしていた入学式の邪魔だけは出来ない。それが、俺も含めた家族全員の統一された見解だった。
奥出雲を離れる朝、俺は妹と共に蔵の中にあった。
と言っても、妹は俺にくっついて来ただけで、別に申し合わせたわけでもない。
どんなにこっそりやろうとも、いつだって俺の行動は、何故か妹には全て分かってしまうのだ。
本当なら、四月とは言えまだまだ凍える山の朝に、妹を戸外へ連れ出したくなどはなかったのだが、頑固さだけは一丁前の妹に、俺の言葉は無力である。
蔵には、まだまだ手付かずのガラクタが積み上がっている。幾らかは片付けたが、終わりは一向に見えてこない。
けれどよく見れば、通路以外の地面が少しは覗くようになっている。
――出発直前の早朝にわざわざ足を運んだ理由も、そこにあった。