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13 かつては妹ちゃんを光源氏計画してました

 関係各位の皆様。

 展開遅い。行き当たりばったり。

 と、ご心配おかけしているかと思います。

 しかし、はっきりと申し上げておきます。

 私はプランがないように見えて、実はいろいろと考えております。

 ただ予定は未定。

 いろいろと不確定要素があるのが困りものです。

 私の最終目標についてはふたつあります。

 まず、四文字さんが決めた寿命よりも長く生きのびること。

 もうひとつは、四文字さんの横っ面をグーパンしてやることです。

 いや、別にいいんですよ。

 何度も申し上げますが、私には普通の人が持っている精神ストラクチャがどこか壊れ気味。

 つまるところ、私には私が無い状態でして、果てしなくすべてがどうでもいいことだったりします。

 ただし、どうでもいいことではあるのだけど、それでも『私』の記憶が生存を希求する。

 そのため、かろうじて私は生存を欲望する。

 文字列にすれば――、言葉にすればそんな感覚ですが、おそらく正確に伝えることはできないんじゃないかと思います。

 この感覚を、仏教では『空』とか読んでるんでしょうか。

 四文字さんの横っ面にグーパンも同様です。

 正常な人間が有する精神ストラクチャが無いということは、私には憎悪がほとんど機能していないということです。

 ただひたすらに計算する機械になっています。

 したがって、私にとっては四文字さんが引き起こしたこの死亡フラグ満載な今世に対しても、たいした憎悪、怒り、復讐心、敵愾心といったものはなかったりするんです。

 ただ、これも例によって『私』の前世記憶からすれば、理不尽だなぁという感覚が残っていて、だから、たぶん右ストレートでぶん殴りたいんだろうなと考えている次第です。

 そのためにはどうすればいいでしょうか?

 少なくとも四文字さんに実体がなければ、ぶん殴ることもできなさそうですし、そうなれば自動的に歴史の流れ(笑)とかいうやつに沿って、わけもわからないまま磔にされそうです。

 ただ、これだけ具体的に預言やらしておきつつ、黒歴史ノートからはずれた行動をすればバッドエンド直行便つきということを考えれば、実体はどこかにありそうです。

 であれば、いずれは私の首元にある見えない爆弾をはずし、四文字さんのルートからはずれることも可能かもしれません。

 希望はまだあるのです。

 確か、いいカモがそのうちやってくる手はずになっていたはずです。

 新約のほうを読まれた方なら、なんとなく察しがつくでしょうか。


「イシュア!」


 いろいろと分離思考しながら適当に議論していたら、ようやく現れました聖母マリア様。

 もといお母さん。


「どうしてあなたはこんなところにいるのよ。私もお父さんも心配して探したのよ!」


 マリアさんは目に大きな涙を浮かべていました。


「どうして、私を探したんですか? 私が自分の親の家にいるのは当たり前でしょう?」


 われながら思春期の子どもっぽい言い訳でした。

 当然、マリアさんは半切れ気味になって、さらに叱りつけます。


「あ、それと家族増えました」

「はぁ?」


 シモンちゃんとアンデレちゃんを前にやり、両親に見せます。

 混乱の極みにありました。


「この子たち、どこの子よ」

「実の両親はいないようです。なので拾ってきました」

「そんな動物みたいに育てれるわけないでしょ! 元の場所にかえしてきなさい」


 いや、それはそれでひどい言いぐさだと思います。


「ふたりとも良い子ですよ。きっとお手伝いもたくさんしてくれます」

「しますッ!」

「します……」


 シモンちゃんとアンデレちゃんは声を合わせて懇願します。

 ヨハネさんの言いつけを守る良い子なのです。

 マリアさんはあいもかわらず絶句していました。

 そりゃ、いきなり十二歳の子どもがさらに小さな子どもを連れてきて、いっしょに育ててくださいと言ったら、並の人間は絶句すると思います。

 いくら、私が通常と異なる精神構造をしていても、それぐらいはすぐにわかります。


 ですが――、


 無理を通すのが私の役目。


 さて、百通りくらい考えておいたストーリーのどれを開陳しましょうかね……。

 そう、考えていた時でした。

 砂利を踏む音が背後から聞こえました。

 振り向くと、見知った顔。


「お、イシュア姉ちゃん見つかったんだ。おばさん」


 私の従妹でした。

 親しみをこめて妹ちゃんと呼んでいます。

 名前はヤコブ。おそらくですが、十二使徒のひとりだと思います。

 スーパーロングヘアーの銀髪美少女です。

 謎配色についてはつっこまないでください。

 もともとこの世界、ピンク色の髪の毛の人が普通に歩いている世界みたいなんです。

 ちょっと着崩した服の着こなし方は日本基準でひと昔前のワルのよう。

 五年ほど前に私が調子乗って多段フリルの作成方法を教えたら、自分の服を魔改造してしあげる能力をもっている侮れない娘でもあります。

 私の育て方も甘かったのでしょうが、根っこの部分が破天荒なためか、親族の皆様からは煙たがられています。

 私ですか?

 特に何も。

 というか、そろそろ関係各位の皆様も私のことを理解しつつあるかなと思うのですが、

 生きている人間も墓場で眠っている死体も私にとっての意味はさほど変わりませんよ。魚の死体のほうがおいしいので好きです。

 そもそもの話、ヨハネさんに会う前は三十年引きこもり計画を立てていましたので、

――彼女とかかわるのは三十年後

 程度にしか思っていませんでした。

 素直な子だと思いますよ。

 基本的には私の言うことはきちんと聞く子ですし。

 ただ、私のほうが年上なのに、発育具合で絶望的な差があるのが、少々、腑に落ちません。

 私の前世が男だとすれば、こんな小さな事柄本当にどうでもいいはずなのに、

 また加えて器の精神構造からしてもそんなことは些事であるはずなのに、

 格差社会が憎かったのでしょうか。

 腑に落ちないなぁ。

 どうしてなんだろうなぁ。

 と、計算します。

 ぺったんぺったんと謎の擬音を心の中で唱えながら、計算しました。

 何度も何度も壊れた計算機のように計算しました。

 角度を変えて眺めすがめつしました。夜な夜なこっそり覗きにいきました。いっしょにお風呂も入りました。

 何度計算しても、彼我の戦力差は圧倒的でした。

 話が長くなりすぎちゃいましたね。

 結論だけ述べましょう。

 私、わりと意味不明ぎみに


――殺意♪


 無駄にリソースをさくのももったない気がしたので、彼女のことはデータとしては殺していたんです。

 妹ちゃんは、頭一個分ぐらい背が高く、私のほうにズンズンと近づいてきます。

 年はそれほど離れていません。三か月ほど私が先に生まれたはず。


「妹ちゃんですか」

「あいかわらずお姉ちゃんはちっちゃいね」

「……そう、ですか」


 殺意制御リソースが、3パーセントほど上昇しました。


「みんなして探してたんだよ。お姉ちゃんかわいいから誰かに連れ去られてんじゃないかってさー」

「まあ、いろいろありまして」

「お……、このさらにちっちゃい子たち何?」

「シモン・ペトロちゃんとアンデレちゃんです。ゆえあって拾ってきました」

「さすがイシュアお姉ちゃん。この子たちを自分色に染めて育てる気だね」

「あなたのことをそうしようとはしましたけどね」

「さりげに重要事項をカミングアウト!」

「育て方をまちがえました。そんなはしたない胸の子に育てた覚えはありませんよ」

「姉ちゃんに育てられたわけじゃないしなー」

「十二歳のくせに」

「ごめんね。お姉ちゃんに分けてあげたいんだけどね」


 勝者はいつだって残酷なものなのです。

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