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10 いいこと思いついた

 関係各位の皆様。

 最近、お話の進め具合が遅くて誠に申し訳ございません。

 素直な気持ちで謝ります。


 ところで、いいこと思いつきました。

 別に卑猥なことではございません。

 ヨハネさん殺しちゃいましょうということです。

 もしもヨハネさんを殺してしまえば、預言が破綻しますので、四文字さんの計画は台無しです。

 しかし、問題はヨハネさんがやたらチートくさいことです。

 チートってわかりますか?

 ズルしてるってことですよ。

 この世界の理をぶっちぎっている存在です。

 空中元素を固定とかいっていますが、水はともかくとして金属まで固定しちゃう時点で軽く物理法則を無視しやがっています。


 それと……。

 軽い雑談の中で判明したのですが

 シモンちゃんもアンデレちゃんもちょっぴりチートでした。


 まず、シモンちゃんですが、そこらに鎮座していた大のおとなと同じくらいの大きさの岩を軽々と持ち上げてみせました。

 どんな筋力しているんでしょう。

 見た目的には完全にロリでぷにっとしています。

 お肌は初雪のように白くて、マンゴープリンのように弾力があります。

 重力でも操ってるのかと思いましたが、今度は野球のボールぐらいの小さな石を粉砕していましたから、単純にパワーがあがっているとみるべきでしょうね。

 あるいは対象の構造自体を変化させているとか?


 アンデレちゃんのほうは先ほどの一件でもちらほらと見せつけていましたが、カッターナイフやはさみ、定規、コンパス、鉛筆などの文具系統の破壊能力をあげる力があるみたいです。

 ためしに鉛筆を投げてもらったら、岩を連続貫通してました。

 なにそのペンシルマグナム(震え声)。

 たぶんカッターナイフで切られてたら、カマンベールチーズのように柔らかく三枚おろしになっていたんでしょうね。


 さて、ここで問題なのは、ヨハネさんを殺せるかということですが、肉体的には普通の人とそれほど変わらないように思えますので、殺しようはあるかと思います。

 ですが、たとえ殺せたとしてもシモンちゃんとアンデレちゃんに、後から殺される可能性が高い。

 もちろん隠ぺいしつつ殺せば、その恐れもないわけですが、仮にそういった状況をおこなうとすれば、預言というこれまたチート能力によって感知され、そのことを弟子たちに伝えている恐れがあります。

 

 したがって、殺せない。

 少なくとも私の生存を前提とする限り、殺すことはできないということになります。

 残念。


 しかたないので、これからのことを考えます。

 いま、私たちはヨハネさんのお家でくつろいでいます。

 土壁のしょっぱいお家だとばかり思っていたらそれは一階部分だけで、地下に入ると異空間。

 レッドカーペットふかふか。

 ソファもふかふか。

 ベッドは二段式!

 暖炉も完備。

 中世程度のレベルはありそうです。

 おもしろいことになぜか将棋盤が置いてありましたので、絶賛対局中です。

 ヨハネさんは平均的なレベルからすればかなり強いですね。

 預言ほどではないですが、近未来予知能力でもあるんでしょうか。私の手が微妙に読まれている気がします。

 ただその能力も万能ではないようです。

 私が二パーセントほどリソースをさけば勝てる程度の実力のようです。

 ただ、ここでゲームに勝つことなんてほとんど意味のない事柄です。

 将棋をする時間を使って、いろいろと聞き出すべきでしょう。


「ヨハネさん、私はどうすればよいと思います?」

「どうすればって?」

「私は預言では三十歳まで引きこもりでよかったですよね?」

「いや、十四だけど」

「は?」

「いや、だから。十四歳から布教開始」

「おかしいですね。私の記憶では三十歳ですよ。まちがいありませんか?」

「まちがいないよ」

「そもそもどういうふうに預言というものは授かるわけです?」

「夢だね」

「内容とかはこちらで決定できないんですか?」

「ある程度はできるね」

「ある程度とは?」

「うーん。説明が難しい」

「説明してください」


 あ、ヨハネさんがさりげなく駒を二度動かしました。

 それでも二十手ほどしか延命できないですが。


 ヨハネさん曰く。


「まず夢の中にいくとな、暗い部屋の中なんだ。そこにはやたら目の大きな女の子の絵が張ってあってな。ベッドには横長の枕に同じような絵がプリントされている。見渡すと金属でつくられた奇妙な棚の上には、同じく目の大きな女の子の像がいくつも置かれていた。不気味だった。ここはもしかすると邪教徒の巣ではないかと思って、幼いながらも恐怖を覚えたよ」

「なるほど。それで?」

「それで、肢の細い机の上に、なにか奇妙な四角い石版のようなものが置かれてあるんだ」

 指先でだいたいのサイズを指し示すヨハネさん。

「私は座ってみた」


 ヨハネさんはそのときのことを思い出すかのように座ります。

 そして、両の手をゾンビが威嚇するときのようにおもむろに前方へ突き出します。


「ちょうどここあたりに、奇妙な文字盤があったな。押すとへこむんだ。それで右には軽石のような丸い形をしたものが置かれてある」

「へぇ……」

「いろいろと操作していると、突然石版が光りだして、ジジジと虫の鳴くような声が聞こえたわ。そして、軽石を動かすと画面に現れた白い矢印が連動して動くことを知った」

「興味深い話ですねぇ」

「そうだろそうだろ。それから石版に現れたマークのようなものを押していると、突然カチっという音がしてね。そこにはこんなふうな文字が書かれてあったわ」

 羊皮紙の上にヨハネさんが文字を書き連ねます。


 G O O G L 略。


 やたら達筆ですが、間違いない。

 この人、ググってる。

 この人、ググっちゃってるよ。

 

「もしかして、その文字の下あたりに白い空欄のようなものがあったりしませんでしたか?」

「お、さすがメシア様。もしかしてメシア様も預言を授かったことがあるのかい」

「ええ、と。まあ授かりまくりだったようですが……」

「ともかく私は必死だったよ。文字盤を押すと文字が表れるが読めないんだ。まずはその解読から始めた。私が夢を見始めたのは五歳くらいのときだったから、それから十年。解読に時間がかかったね」

「失礼ですが、ヨハネさんっておいくつなんです?」

「十七歳」

「何進法でですか?」

「イシュアちゃん、あまり変なこと聞いてると、また洗礼しちゃうわよ」

「ごめんなさい」


 なんだろう。

 瞬間的に謝っていました。

 素直さを旨とする私としても、ほとんど反射に近い反応です。


「なるほど理解しました。ヨハネさんは、検索することでいくつかの運命を知ることができたというわけですね」


 その検索サイトやらパソコンもどきが本物かどうかはおいておいて、

 なんとなく四文字さんのユーモア力がうかがいしれるような気がします。

 おそらくは本物の、二十一世紀のパソコンではないのでしょうね。

 また、おそらく、某有名な検索サイトでもないのでしょう。

 十四歳で布教開始とか、どこにも掲載されていませんし、そもそも私が女の子な歴史なんてどこにもなかったはずですし。

 ありうるとすれば、この世界の未来からもたらされた情報なのかもしれませんね。

 ああ、今すぐヨハネさんをぬっころして、タイムパラドクスを引き起こしてみたい。


「ああ、それとな。シモンとアンデレのことなんだが」

「はい。なんでしょう」

「こいつらのこと頼む」

「頼むとは?」

「面倒をみてくれ」

「具体的には?」

「扶養してくれ」

「ええと……」

「私と結婚して、扶養家族になってくれ!」

「……」

「ああ、その腐りかけた卵を見つめるような、残念なものを見つめる表情、とてもイイ。イシュアちゃん踏んでッ!」

「お望みとあれば踏んでもいいんですが。本気で言ってるんですか?」

「本気。本気。生足で踏んでください」

「いやそっちの本気ではなく。お二人を扶養しろってことです。要するにヨハネさんの弟子をやめて、私の弟子にしろってことですよね?」

「そうだよ」

「ヨハネさん。あなたやはり死ぬつもりだったりします?」


 死ぬつもりだから、私におふたりを任せたいんですか?

 それはべつにいいですけどね。

 私は彼女たちのことを殺したいくらいには好きなようですし。


「頼むよ」


 ヨハネさんは自分のことは言いませんでした。

 ただ、懇願。

 わからないのですよ。

 どうして、そうやって他人のことを気にかけることができるのでしょうか?

 共感しているのですか?

 共感の極致で、あなたは死ぬのですか?

 数百の思考パターンを思い描きましたが、私には共感の能力がありません。

 ゼロに何を掛けてもゼロですから、私にはついぞヨハネさんの気持ちはわかりませんでした。

 ですが――、


「いいですよ。あなたが死なないことが条件です」


 わからないことはわからないまま放置しておくしかありません。

 それにしてもこの世界のことをググりたいです。

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