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1-12.令嬢たちの夕食

 その夜。

 夕食の時間になったので、食堂へ行ってみると、アメリアたちは既に来ていた。

 四角いテーブルが並び、四人掛けと二人掛けが混在している。


 やはり春休み中だからか、人はまばらだ。

 座席指定は特にないのか、アメリアたちは食堂の真ん中あたりの四人掛けのテーブルに座っていた。

 初対面の貴族にどう挨拶したら良いのか見当もつかず、ドキドキしながら向かうと、アメリアが手を上げて先に声をかけてきた。


「ああ、結城さーん!こちらですわ!」

「あ、はい、今行きます」

(大丈夫かな、変な目でみられたりしないかな)

 自分の服装をチラリと確認しながら、小走りにアメリアの元へ向かう。

 アメリアの向かいには、二人の少女が座っている。

 一人は、白い雪のようなおかっぱに水色のカチューシャをした少女で、金色の瞳をしている。身長は150cmほどだろうか。どこか眠そうで、まるで小動物のような印象だ。

 もう一人は、黒い髪を肩のあたりで縦ロールのようにゆるくカールした、黒い瞳の少女だった。こちらはどこかミステリアスな雰囲気を漂わせている。

 ひよりが近くに寄ると、アメリアが座りやすいように椅子を後ろに下げてくれた。

「さあさあ結城さん、遠慮はいりませんわ。どうぞおかけになって?」

 ありがとうございますと言い、椅子に座る。

 四人の前には水が置かれており、おかっぱ少女の前にだけはココアの入ったマグカップがあった。

 おかっぱ少女はココアにふうふうと息を吹きかけながらちびちび飲んでいる。


 一方ひよりは、貴族の令嬢三人に囲まれていると思うと心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしていた。

(うわあ……孤児院出身の私じゃ場違いかも……)

 そういった考えが頭を過ぎるも、何も話さないのも失礼だろうと何とか口を動かす。

「それじゃあ……ええと、自己紹介、でしょうか?」

 ひよりが三人をみながらそう聞くと、黒髪の少女がそれを制した。

「それより、夕食を先に頼んでおいた方が良いかもしれませんわね。出来上がるのを待ちながら話した方がスムーズでしょうし」

 そういうわけで、リサが手を上げ、メイドを呼ぶ。

 今は春休みで、一種類しか夕食がないとのことで特に迷うことはなかった。


 注文を終えた後、黒髪の少女が先を促す。

「それじゃあ、自己紹介をしてもらいたいところだけど、基本的には爵位の高い人からするのがマナーになるわ」

「あ、じゃあ」

「でも、あなた以外顔見知りだから、あなたが一番手で大丈夫。社交パーティーの時とかだけ気をつけて」

 ひよりは頷いて、

「分かりました。それじゃあ……私は結城ひよりです。今度この学校の高等部に入学します」

 ぺこりと頭を下げると、向かい側の二人もぺこりと頭を下げた。

 なんだか少し不思議な光景だ。

 そして黒髪の少女が縦ロール気味の長い髪をばさりと後ろに払って話し始めた。

「それじゃあ、次は私にさせてもらおうかしら。私はリサ=ヴァイスベルク。ヴァイスベルク侯爵家の長女です。以後お見知り置きを」

「よろしくお願いします。ええと…侯爵家というと……」

 確かテイラー先生が、身分階級としてはてっぺんに王族、その下に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵と続くのだと教えてくれた気がする。

 一生懸命思い出そうとするひよりを見て、黒髪の少女は上品に手を口に当てて笑って言った。

「うふふ。王族を除くと二番目に偉い身分ですわ。領地は南の国境沿いの暖かい地方で、美味しい果物や野菜がたくさん取れますのよ」

 そこでアメリアが口を挟んだ。

「彼女の領地、かなり広いんですの。それに作物にも恵まれているので、王都でも流通していてここの料理の材料になったりしていますわ」

 その話を聞いてひよりは目をキラキラさせる。

「へええ、じゃあリサ様の実家と同じご飯が食べられるって訳ですね!」

「リサ〝様〃?」

「え?」

 リサの周囲の空気が少し冷たくなった気がして、ひよりは蛇に睨まれたように固まった。

(え、私何か間違えた!?)

 しかし次の瞬間、冷たい空気はすっかり消え去っていた。

 リサは黒髪を揺らし上品な笑いを崩さないまま、

「うふふ、冗談ですわ。基本的にはそれで合っていますもの。でもさん付けで良いですわよ。近頃は礼儀についても随分とゆるくなりましたし」

 リサがそう言うと、おかっぱ少女も同意する。

「ん。そっちの方が仲良くなった感じがして良い」

 そうなると、アメリアも黙っている訳にはいかなかったようで、ひよりの手を取り目をまっすぐ見て、

「結城さん、他二人がこうおっしゃってますし、是非私もさん付けでお願いしますわ!私だけ距離を取られるなんて寂しいですから!」


 アメリアはいつもパワフルだ。

 はい、と言うと、ひよりとしても友だちが増えた気がして心が温かくなった。

 そして次の自己紹介はアメリアの番となった。

 アメリアは自信満々に、

「ではわたくしも。もうみなさんご存知ですから簡単にさせてもらいますわ。アメリア=クロフォード。クロフォード伯爵家の長女ですの。領地は東の海沿い。海洋産業を主としていますわ」

 特に付け加えることもなかったので、では次、とおかっぱでカチューシャの少女の番となった。


「じゃあ次。私は白雪ゆの。子爵家。領地はない」

 その名前の響きにひよりの胸が小さく跳ねた。

「あれ、じゃあ、元日本人……?」

 白雪ゆのは頷いて、

「そう。だから領地がないの」

 その言葉の意味が分からず、ひよりは首を傾げてしまう。

「元日本人だから領地がない……?どういうことですか?」

「私たちは移民だから。魔法師として爵位は与えられるけど、領地まで持つ権限がない」

 そう言う白雪ゆのは表情が変わらないままだ。

 アメリアが水で喉を潤しながら補足をする。

「あなた方の先祖がわたくしたちの国に避難してきた時、そういう取り決めがあったんですの。内戦を経験した日本人の魔法師は実戦に強いですから、それ以上力を持つことを王族が恐れたのではと言われていますわ」

「そ、そうなんですか……」

 あまりにもシビアな裏事情を聞いてしまい、ひよりはしどろもどろになる。

 そこでふと白雪ゆのの発言の違和感に気づく。

「あれ、でも子爵ってことは、一番下じゃないですよね?私は男爵位がもらえるって聞いたんですけど、それはどうしてですか?」

「私の家は、氷見家ほどじゃないけどちょっとした魔法の名家だから。だから子爵位がもらえてる」

「へええ。それじゃあゆのさん、優秀なんですね!」

「ん」

 ひよりにそう言われたゆのは少し頬が赤くなっていた。

 そうして、ひよりはふと三人の令嬢達と普通に話せていることに気がつく。

 平民だった自分が、こんな貴族の令嬢たちと同じ席についている。それがなんだか現実じゃないみたいで、少し不思議な気持ちになった。

 ちょうどその時、夕食がやってきた。

 メインはグラタン、そして横にはパン、奥にコーンスープ、そしてトマトときゅうり、レタスで彩られたサラダが置かれた。

 ひよりは手を合わせながら、

「わぁぁ、ここの食堂、いつも美味しそうなご飯を出してくれますよねぇ」

「一流のシェフが集まっているんだもの。当然よ」

 そうリサが言い、いただきますと食事を始めた。


 しかし、いざ食事が始まると自分の所作が正しいのか不安になりスプーン一つ持つのにも緊張してしまう。

 グラタンを食べ、次にサラダをフォークでつつこうとしたところ、アメリアが口を挟んだ。

「ああ、結城さん、サラダはレタスが大きいので、中にきゅうりなどを挟んで二つ折りにすると食べやすいですわよ」

「へ、へえ、そうなんですね」

 さっきから何か間違えないかと緊張しっぱなしでフォークを持つ手が震える。

 それに気づいたゆのが、相変わらず眠たそうな目で無表情で言う。

「最初は誰でも失敗する。これから覚えていけば良い。だから大丈夫」

「は、はい」

 そう言われても緊張するものは緊張してしまう。

 コーンスープをスプーンで掬い、口に運ぶ。

 するとリサが目を瞬かせた。

「あら、スープの飲み方はもうきちんとしてらっしゃるのね。大体すすってしまうのですけど」

「あ、これは前いたところでうるさく言われてたんです。すするのは行儀が悪いって」

「そう。きちんとした所だったのね」

 リサは微笑を浮かべ、パンをちぎって口に運ぶ。


 そうして食事を取っていると、突然横から声がかかった。

「あら、変わり者同士、仲良く食事を取っていらっしゃるのね。それに見慣れない方が一人。相変わらずはぐれものを集めているのかしら、リサ=ヴァイスベルク様?」

 その声は氷のように冷たくひよりの胸に刺さった。

 振り向くと、金髪を豪華な縦ロールにした少女が立っていた。瞳はアメリアと同じ、夕日を思わせるオレンジに近い赤だが、その視線はどこか鋭い。

 着ている制服も一切の乱れがなく、完璧な令嬢という言葉が似合いそうな人物で隙がない。

 さっきとは違う緊張で、思わずコーンスープを掬っていたスプーンが食器にぶつかりカタンと金属音を立てた。

 冷たい声の主はそれを目ざとく見つけ、

「あら、食事のマナーもなっていないようね。その方と一緒にいると、品位が疑われるのではなくて?」

 ひよりは恐怖で何も言い返せず、そのまま固まってしまう。

(これが、貴族の本当の社会……?平民出身だし、魔法が使えないことがバレたら……)

 嫌な想像をして手がじっとりと汗ばむ。


 するとリサが食事の手を止め、落ち着いて反応した。

「ごきげんよう。……確か貴方は、アルトレイユ侯爵家の」

「ええ、エレノア=アルトレイユですわ」

 リサはエレノアの目をまっすぐ見て反論する。

「アルトレイユ侯爵家の方が、私たちにどういったご用事ですか?まさか、嫌味を言いにきただけなんておっしゃいませんよね」

「嫌味ではないわ。事実を言っただけよ」

 エレノアは扇子を口元に当てており、表情は見えない。

 そうして視線をひよりに向ける。

 リサの時と同じ蛇に睨まれたような感覚だが、こちらはペット用の蛇ではなく毒蛇だ。

 視線を向けられているだけで自分の心が削られていくのが分かる。

「貴方、名前と学年は?」

 ひよりは喉が張りつきそうになりながらも、エレノアの方を向き必死で声を絞り出した。

「ゆ、結城ひより、です。今度高等部に入学します」

その返答にエレノアの顔が歪んだ気がした。

「その名前……やはり移民なのね」

 そこでゆのが援護する。

「エレノア様。移民の私たちを好きになれないのは分かりますが、必要のない騒ぎを起こしてしまうと貴方の品位も疑われるかと」

 ひよりがふと気づいて周りを見ると、周囲がこちらを見てざわついていた。


 エレノアは周囲に目も向けず眉を顰めて言葉を続ける。

「それを移民の貴方に言われる筋合いはありませんわ。貴方がたがわたくしたちの家族に……妹に何をしたか、お忘れになっているんですの……?」

 その言葉と共に、テーブルがサァ……と白い霜で覆われていく。

 その言葉には怒りが含まれていた。

 単純な怒りではなく、心の底からマグマが湧き上がるような深い怒り。

 その怒りを受け流し、ゆのは冷静に言う。

「あなたの怒りはもっとも。でもそれは、関係者じゃない彼女にぶつけて良いものじゃない。あなたの妹も、それを望んでないはず」

「あの子の……今も眠っているあの子の言葉を……勝手に代弁するんじゃありませんわよ!!」

 ひよりがエレノアの方を見ると、ゆのに向けて氷の槍をいくつも展開していた。

 しかしその表情は、怒っているというよりどこか泣き出しそうに見える。

「ちょっと、エレノア様、やり過ぎですわよ!」

 アメリアがすかさず立ち上がり、風魔法で氷の槍を撃ち落とそうとするが間に合わない。

(怖い……!でも、このままじゃ他の人にも当たっちゃう……!)


 どうしてこの少女が怒りを露わにしているのか、初めて会ったばかりのひよりには分からない。

 だが、ゆのとの会話やその表情から何か事情があることは想像できた。

 それに、泣きそうな顔をしていた。

 この人を悪者にする訳にはいかない。

 そう思い、とにかくエレノアを押し倒そうと右腕を持った瞬間、魔獣に襲われた時と同じ、エレノアと自分の中で何かが繋がるような感触がした。

 魔獣に襲われた時は分からなかったが、エレノアの中にある何かが氷の矢を操っているのを感じる。

 エレノアの腕を掴む手が熱を持つ。

 氷の槍の向きがわずかにゆのから逸れるように変わり、エレノアが一瞬驚いたような顔をした。

 しかしそれも別の驚きに塗り替えられる。

 エレノアの後ろから飛んできたいくつもの水の刃が、氷の槍を全て一瞬で砕き、落としたのだ。


 食堂に静寂が訪れる。

 全員がエレノアの後ろを見ると、腰まで届く黒髪をストレートにした、黒い瞳の少女が冷静な顔をして立っている。

 彼女がエレノアの氷の槍を砕いた主だった。

 彼女はパンパンと手を叩き、

「はい、ケンカはそこまでだ。エレノア様、生徒会副会長、橘遥花の名の下に、規律違反報告書の提出を命じます」

「橘、副会長……」

 エレノアが呆然とした様子で後ろを向く。

 ひよりがふと気づくと、エレノアは女の子座りのような格好になっていた。

 どうやら自分はエレノアの腕に体重をかけて後ろ向きに転ばせたらしい。

 結果的にエレノアに怪我をさせるところだったことに気づき、ひよりは正座で恐る恐る問いかける。

「あの、エレノア様、転ばせてしまってすみません……頭を打ったりしてないですか?」

「……してないわ。気遣いは結構よ」

 そうしてエレノアはすっくと立ち、橘と名乗った少女に頭を下げる。

「橘副会長、私の不手際で騒動を起こしてしまい申し訳ありません。報告書については後ほど」

「はい、それでお願いします」

 そう言い終えると、エレノアは食堂を出て行った。

 そうして後には静寂が残った。

 その静寂を破ったのは、やはり橘と名乗る少女だった。

 少女はひより達の方に近づいてくる。

「君たち、……っと、四人とも、怪我はないですか?」

 こちらに近づき上位貴族がいることに気づいたのか、橘遥花は口調を変える。

 緊張がまだ解けていないひよりに代わってリサが答えた。

「ええ、私は無事です。今テーブルに座っている二人も同様かと」

「そうか。結城さんは?」

 惚けていた自分に突然矢印が向き、ひよりは場違いな返答をしてしまう。

「あれ、何で私の名前……」

「高校からの唯一の入学者だからな。顔と名前は把握しているよ。それで怪我はないか?」

 少女の冷静な声に、固まっていた体がようやく解けてきた。

「え、ええと、多分ない、です」

 そう答えた瞬間、両目の奥から熱いものが流れ出てきた。

 止めようとするが、止まるどころかどんどん流れてくる。

「え、あれ、ええと、ひっく、すみません……」

 溢れ出てくる涙を両手で何度も拭い、手がべちゃべちゃになる。

 その様子を見て、橘遥花はひよりへハンカチを差し出した。

「もう大丈夫。怖い思いをさせてすまなかったな。もう少し早く気づくべきだった」

「いえ、ありがとうございます……」

 ひよりはハンカチを受け取り、涙で濡れた手を拭く。

 確かに人に悪意をぶつけられたのは怖かったが、それ以上に自分のせいで怪我人が出るのが怖かった。

 それに、自分がいなかったら、エレノアと名乗った少女はあんな泣きそうな顔をすることもなかったかもしれない。

 しかし、そんな後悔をする前にまずは言わなければならないことがある。

 ひよりは立って後ろを向くと、

「リサさん、アメリアさん、ゆのさん、さっきは私を助けようとしてくれてありがとうございました」

 そう言って頭を下げた。


 あんなことがあったにも関わらず、アメリアは自然な笑顔を作り、

「当然ですわ。お友達ですもの。エレノア様と遭遇してしまったのはタイミングが悪かっただけですわ。普段はそうそうこんなことは起こりませんから」

 そうフォローしてくれた。

 白雪ゆのも

「ん。ほとんどの人はいきなり攻撃したりしてこない」

 と言い、リサも頷いていた。

 橘遥花は苦笑し、

「まあまあ、エレノア様も前に色々あったからな。今日は運悪く虫の居所が悪かったらしい。結城さん、私からも言っておくから大丈夫だ」

 リサも真面目な顔で、

「よろしくお願いします。副会長。あなたの言葉なら彼女も耳を貸すでしょうから」

 と言った。

「ええ、分かっています。ほら、結城さんも食事に戻ると良い。少々冷めてしまっているだろうが」

「は、はい、ありがとうございます」

 少し落ち着いたひよりは、席へと戻った。

 そこでふと自分がハンカチを借りていることに気づく。

「あの、このハンカチは……」

 騒動を収め、帰ろうとしていた橘遥花をひよりが呼び止めると、彼女は振り返りヒラヒラと手を振って、

「ああ、明日生徒会室に来て返してくれたら良い。私たちも君に依頼したいことがあるから、13時頃に待ち合わせよう」

 そう言って帰って行った。

「い、依頼……?」

 さっきから色々なことが起きて頭がパンクしそうだ。

 何が何やらなひよりだったが、今は四人でご飯を食べ終わるのが先だろう。

 そう考えていると、アメリアがひよりの手に触れた。

「大丈夫ですわ。あなたはきちんとここでやっていける方です」

 その目はひよりの不安を見通すようで、自信に満ちていた。

 なら、期待に応えないわけにはいかない。

 まっすぐな目を見ていたら、平民という出自や貴族の目を気にしていた自分が可笑しくなってきた。

 ひよりは涙で濡れた顔で頑張って笑顔を作り、こう答えた。

「はい。そう出来るよう、これから頑張っていきます」

 リサもゆのも、静かに頷いていた。

 孤児院では、かつて慕ってくれていた子たちがいじめられていた時は相手と喧嘩してでもいじめを止めた。

 両親がおらず寂しくて泣いている子がいれば話を聞いたり一緒に絵本を読んであげたりした。

 環境が変わったからといって、誰かに寄り添ってあげたいという気持ちを押し留める必要はないのだ。

自分の力も分からないし、魔法を向けられた時は怖かったけど、自分に優しくしてくれる人たちの恩に報いたい。

 誰かを守れる力があるかまだ自信はないけど、少なくとも目の前のことから逃げるようなことはしたくない。

 そんな風に思った。

 そうしてひよりの食堂デビューの日は終了した。

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