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プロローグ

 魔法師。

 そう聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるだろうか。

 火や水を操る、結界を張る、人を回復させる――そんな姿を想像する者が多いのではないだろうか。

 しかし実際には、そうした火や水の制御といった一般魔法と呼ばれる魔法を使う魔法師がほとんどであり、結界や治癒といった特殊な魔法を扱える者は、日本ではごく一部に過ぎなかった。

 にもかかわらず、魔法師が一般社会で認知され、政治や経済の分野で発言権を持ち始めると、一般人からの反発が起こるようになった。

 魔法師は魔法で姑息な手段を取る、あるいは不都合な事実を隠蔽できてしまう――信用に足らない存在だ、という声が上がったのだ。

 一般人にとって魔法とは、自分には想像もつかない超常を引き起こせるもの、というイメージが最後まで拭えなかったのである。

 

 そして五十二年前。

 日本で魔法師と一般人の間にあった軋轢はついに決定的なものとなり、内戦が勃発した。

 魔法師は主に一般魔法を駆使し、一般人は銃や戦車といった兵器を用いた。

 その戦いは二年にも及び、やがて互いに住む場所を失い、生きていくために必要な食糧すら尽きていく。

これ以上戦争を続けることは不可能だと判断した両陣営の代表者達は、和平交渉を行おうとした。

 しかし、明日の生活にも困窮する状況下では交渉は思うように進まず、事態は膠着したままだった。

 そんな中、日本の惨状を聞きつけたとある王国が名乗りを挙げる。

 生き残った日本人たちの移住を受け入れる、という提案だった。

 

 ノヴァル王国。

 日本から遠く離れているものの、日本語を母語とする珍しい国であり、魔法師の存在を是とする国家であった。

 そしてかねてより日本と友好関係を築いてきたものの、少子化による人口減少に悩んでいた国でもあった。

 ノヴァル王国は移住にあたっての条件を提示してきたが、それは魔法師と一般市民でやや異なるものであった。

 魔法師には爵位が与えられ、生活と立場が保証される代わりに、魔法の実践的な技術を提供すること。

 一般市民は平民として扱われ、生活と仕事を保証される代わりに、生活に役立つ技術を提供すること。

 魔法師は王族の管理下に置き、一般人の中でも能力と意思がある者には魔法師を管理する職務に就く機会が与えられる、というのが内容だった。

 一般市民側からは魔法師が貴族階級として扱われることに反発する者もいたが、貴族として扱われるということは優遇を受ける面もあるが、王家の管理下に置かれることを意味するのだと説明され、何より日々の生活には代えられず、彼らは最終的に承諾した。

 

 こうして、日本人達の大規模な移住が行われることとなった。

 ノヴァル王国の住民は同じ言語を扱う者同士であり、王命もあってか日本人達を概ね好意的に受け入れた。

 そして日本人達はノヴァル国民となり、平和な時間が過ぎていった。

 しかし三十年後、そんな平和を揺るがす『ある事件』が起きた。

 それはノヴァル王国で名門とされていた魔法貴族が起こした、とある実験事故。

 あわや国が滅亡しかねない事態にまで発展したが、国民の尽力により、取り返しのつかない事態になる前にある程度の収拾はつけられた。

 そして今日に至るまで辛うじて日々の生活は守られている。

 そしてさらに二十年後の春。

 そんな火種が燻る時代に、とある少女が魔法師として学園に入学するところから物語が始まる。

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