1話 ラスボス撃破!
カチャッ、カチャカチャ!
自室で静かに鳴るレバガチャの音。俺は今、未だかつてないほどゲームに集中している!
「HPバーは……あと数ミリ!」ボスのめっちゃ多い体力も長い時間をかけてようやく終わりが近付いてきた。せっかくのトドメの一撃を通常攻撃で倒すのは地味だし、最後は大技を撃ち込んでやる!「これでトドメだぁぁー!!!」剣士ジョブが現時点で使えるスキルの中でも最強の技"神殺しの一閃"を命中させる!
「バカな……この我がああぁぁぁ!!」ラスボスの断末魔と共に壮大に鳴り響く、アレンジされた特殊なファンファーレ。勝った、勝ったんだ……!
「よっしゃーー!!新バージョンのラスボスも撃破ァー!!」大人気VRMMOゲーム、"ファンタジー・トライ"に大型アップデートが来てからはや七日。ちょうどテスト期間じゃなかった幸運も重なって、高校生なのにすぐクリアしてしまったぞ。
「ラスボス倒せたし写真撮ろーっと!」パシャッ!カメラ機能を使ってラスボスの死体とツーショットを撮る。現実世界だとサイコパスな行為だけど、倒した証拠としてSNSに載せる時に使うから必要だ。
「ふぅー。これから先どうすっかなー。これから当分はアップデートが来ないのに、結構遊び尽くしちゃったぞ?」俺とした事が、ハマり過ぎてやる事がなくなってしまった。他のジョブに転職して職業ランク上げるとか、コレクション要素とか、探せばいくらでもやり込み要素はあるのだけど、そこまでガチると単なる作業になってしまいそう。
「……あっ、そうだ。一度、アレやってみたかったんだよなー。縛りプレイ」縛りプレイ、すなわち、自分にキツい制限をかけてゲームを遊ぶ事。動画とかでスーパープレイを見る事はあったが、自分でやった事はない。
「でもなー!ファントラ(ファンタジー・トライの略称)は自由度高いから、出来そうな縛りも多いんだよなー!あー、何にしようー!」一つのゲームでこんなに悩めるなんて、思わず嬉しい悲鳴が出てきてしまう。「防具を付けない裸縛りは?……ダメだ、難しくてすぐにやめそう。縛りプレイ初心者だし、やめずに続けられるような、ちょうど良い難易度の縛りにしよう」
う〜〜〜〜ん。アイテムを使わないとかもあるけど、回復がキツいな。装備のランクを一つ落として挑むとか?うーん、それじゃ今までとやる事あんまり変わらないし……あっ、良い事思いついた!
「『錬金術師のジョブで、戦闘中に錬金釜で作ったアイテムだけでしか戦えない』ってのは面白そう!本来は剣や魔法も使えるジョブだから、作ったアイテムだけだと苦戦するけど頑張ればちゃんと勝てるし、常に錬金釜を持って戦う事になるから移動も遅くなる!プレイしてて全く別のゲームをやってるみたいになるぞ!」俺、天才か?と思ったけど、絶対に先駆者はいるだろう。でも、こんなの誰でも思い付くアイデアだし、パクリとか言われないよね?ね?(威圧)
「よし、さっそくサブ垢を作って一からファントラを楽しむぞー!」セーブしてタイトルに戻り、今のデータとはしばらくおさらば!新しいデータで弱くてニューゲームだ!
本垢のアバターは普通な黒髪の少年です。




