00.プロローグ
太陽が街に薄い明るさを与え、鳥の鳴き声が微かに聞こえ始めてくる明け方に、私は外から聞こえてきた大きな声で目を覚ました。
浅くなった私の眠りを貫通して届いたその声は、どうやら酔っ払いのものらしかった。
単語にもならない奇声に近い声を上げながら、まだ誰も活動していない街を徘徊している。
――せっかくの休日なのに
そう思い目を閉じようとするが、声が遠ざかり再び街に静寂が訪れると、一番リラックス出来るはずのベッドの上で、自分の鼓動が通常より大きな音を立て、速く動いていることに気が付いた。
私は自分を落ち着かせるために、サイドテーブルに置いてあるペットボトルに手を伸ばし、深く呼吸をして息を整えてから一口飲む。
機能性よりデザインを重視して選んだ白のベッドにはヘッドボードがなく、小物は全てサイドテーブルに置いている。
このベッドを購入すると決めた時母親からは、深愛ちゃんは物が多いんだから枕元にもベッド下にも収納がないベッドなんて絶対に後悔するよと言われたけれど、私は購入してから一度も後悔していない。
ベッドに合わせて、サイドテーブルやドレッサーや机も白を基調として揃えていたので、毎日可愛い家具に囲まれて眠りにつけるのは、むしろ幸福であった。
しばらく深呼吸を続けていると、すっかり通常の心音に戻っていた。
大きな音は、何年経っても瞬間的に私を緊張させる。
どんな状況、どんな場所であっても瞬時に全身に力が入り、心臓がドクンと大きな音を立てて、私自身に危険だよの合図をくれる。
原因は、分かっているのだ。
そして、この体質がきっと、恐らく、直らないことも。
だから、これが自分だ、と受け入れて生きていくしか方法はない。
私は私を愛せるようにならなければいけない。
自分自身を愛することは、
ハルさんを愛することと同じだから―――。




