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きみという花

作者: あきの丘
掲載日:2025/10/21



たねを蒔いたのは今から6年ほど前。

小学5年生の春だった。


2年ごとに行われるクラス替え。

小学生最後。卒業まで一緒。 

これまでとは違う、

特別な意味を持っていた。

昇降口に掲示された新クラス。

早々に自分の名前を見つけ、

足早に教室へと向かった。

いつもと違う下駄箱。

いつもと違う渡り廊下。

いつもと違う教室のドアに手をかけた。

誰がいるかわからない。

このわくわくがたまらない。

教室の中に入り、あたりを見渡す。

1番に駆け寄って来たのは彼女だった。

「また同じクラスだね!」

そう言葉をかけてくれたはずだ。

昔のことすぎて、

正直あまり覚えていない。

単純にうれしかったことはよく覚えている。

そのとき、別の感情が芽生え始めたことも。


僕の仲の良い友達は別のクラスだった。

といっても、うちの学校は2クラスしかなく

すぐに会えるのだけれども。


その子は彼女の幼馴染だった。

正直羨ましかった。

親同士の仲も良いらしい。

このクラス替えで、

少し優位に立てたような気がしたのは内緒です。


小学6年生の秋。

僕とは違う中学校に行くことを知った。

同じところに行くとばかり思っていたので

内心、かなり落ち込んでいたと思う。

会えなくなるのは嫌だな、と。

このつながりを手放したくないと強く思った。


卒業式。教室前の整列。

「ネクタイずれてるじゃない!」

と直してくれたことをよく覚えている。

この4年間、世話を焼かれっぱなしだった。

「ありがとう」

これで最後か。

僕は別れを噛み締めていた。


卒業式の余韻もつかの間。

クラスメイトたちと公園で遊んでいた。

鬼ごっことかいう、

小学生のうちに幾度となく繰り返してきた遊びを。


日も傾き、住宅街が茜色に染まる。

疲れ切った帰り道。

クラス替えからの2年間。

一緒に過ごしたいつものメンバー

とも呼べる4人で帰っていた。

そこには彼女もいた。

終わってほしくないな。

ぼんやりしながら、

段差が不規則な階段を登っていたとき。

「4人のグループライン作ろうよー」

とその中の1人が口にした。

「中学生になってからもう一回遊ぼう!」

続けてこんなことも言っていた。

僕たち4人は全員、別々の中学校。

よっぽどのことがない限り、会うことはない。

うれしかった。

このつながりを保っていられる。

苗木のつるが揺蕩うことなく、

支柱にしっかり絡んだような安心感があった。


そこから僕は中学生になった。

学区外の中学校だった。

かつての友達は少なく、

心細く感じていた。

しかし、心配もつかの間。

そこには幼稚園児時代の

かつてのともだちがいた。

6年ぶりの再会であった。


新たな出会い、再会。

自らを取り巻く環境が大きく変化した。


それからというもの。

彼女との関わりは当然のことながら少なくなった。

でもひとつ新たな変化があった。

定期的にメッセージを送り合う仲になったのだ。

内容は学校での取り留めのない話や雑談。

かつての教室での会話と

さほど変わらないものだった。


中学1年生の時の担任は、二者面談の時、

最後に決まって

「誰が気になっている人とかいないの?」

と恋愛ごとに一歩、

足を突っ込んでくるような人だった。

「いないですよ」

僕は決まってこう答える。

聞かれた瞬間、彼女の顔が真っ先に浮かぶのに。

知られると色々と面倒なので、

僕は秘密にしていた。

大切に、1人育てるように。


中学校最後の1年。

またしても、いつものメンバーとも呼べる4人が

新たに出来上がっていた。

そして彼らとも約束をしたのだ。

「高校生になってから、またどっか遊びに行こう」と。

4人とも違う高校で、

会うことは確実に少なくなるだろう。

また会える。 

このことがどんなに嬉しかったことか。


この3年間、

彼女と直接会うことはなかった。それでも、

メッセージを通して言の葉は着実に枚数を増やし、

上へ上へと伸びていった。


そして僕らは高校生となった。

そろそろ覚悟を決める時だ。


高校1年生の夏、僕は彼女を花火に誘った。

いつものメッセージアプリ、

言の葉に満ちた箱の中で。

今まで交わした数々の会話。

箱の底には腐葉土のように、

形も崩れ、思い出すことも難しい、

そういったものもたくさんあると思う。


だけど、そうして積み重ねてきた年月が、

僕たちをこの場所に連れてきてくれた。


想いという名のたねを蒔き、

自覚が芽吹き、

つるが伸び、行き先に迷いながらも

支柱に巻きつく。

着実に葉の数を増やし、

時には舞い落ち、

土に還り、

栄養としてさらなる成長を促す。

上へ上へと。


朝顔が日の出とともに花開くように、

この言葉を合図にして、

きみという花を咲かせよう。


「好きです。」


夜空を飾る綺麗な花。

街の声をぎゅっと光が包み込み、

音のない2人だけの世界がうまれる。


お読みいただきありがとうございます!

今回は恋を全面に押し出した内容となっています。


たねを蒔いたその瞬間、

想いが成長していく過程、

花が咲いたその瞬間、

恋の自覚、告白のタイミングって

ほんとに人によってさまざまなんだなぁ

と高校生ながらに感心している今日この頃です

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