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第六話 佐久間の新居編

 四月が過ぎ、五月がやって来た。五月病とも言われる通り、高校生活にも慣れてきた今、倦怠感を感じている奴はこのクラスに何人いるだろう。

 大型連休前の最後の授業の日。大型連休なのに僕には全く何の予定もない。

 鹿島と菅原は町内会の旅行で信州に。月島はあまりにも頭が悪いので、まだ一年生にも関らず親が勝手に塾の短期講習に応募した。澁澤と千代田はツーリングで他のバイク仲間と出掛けるらしい。

 (あと残っているのは、佐久間と森野くらいか。。。)

 C組には男子だけでもまだいるが、一緒に遊ぶくらい仲がよいのは以上の数名くらいである。因みに、あのウルトラマートの一件以降、澁澤や千代田ともよく喋ったりするようになった。

「おい、佐久…」

「あ、北野。お前連休中ヒマ?」

 お察しの通り。ということは、佐久間もか。

「じゃあ、明日の十時に緑が丘団地前に集合で。」

 そういえば、佐久間の家は駅前のアパートだったはず。佐久間は親との不仲の影響もあって、この町に一人暮らししている。高校生の一人暮らしというのは珍しいが、佐久間の生活力をもってすれば何ら生きていく上で問題になることはないだろう。


 翌日。

 緑が丘団地前に集合した僕達。僕と佐久間以外にも森野もいた。

「俺さー、引っ越したんだ。」

 突然の報告である。こういうことは、事後報告なのか?

「ここが、新しい家。」

 結局前の家には行ったことがなかったが、この家は何なんだ。

 高校生の賃貸住宅としては異例の一戸建て。それだけでも驚きなのに、市内でも指折りの高級住宅地に三階建ての広さは百坪くらいはあるかという豪邸。

「お前、親から金貰ったのか?」

 森野が恐る恐る聞いて見た。

「んなわけねーだろ。誰があんな馬鹿親のスネかじる真似すんだ。」

 あっさり否定された。

「ちゃんと自分で稼いだ金で買ったんだよ。」

「どうやったらそんな金稼げるんだよ。」

「もちろん訳アリ物件じゃないから結構高かったよ。でもな、世界同時不況の昨今の経済情勢を見ると、鍋底状態とも言われているが、実はそんな中でも元気な業界っていうのがあって、そこで…」

 まあ、佐久間の言っていることの八割は全く意味不明な経済用語であろう言葉だった。恐ろしい男である。

「でもさ。一人暮らしでこんだけでかい家だと、逆に手持ち無沙汰っていうか。」

 贅沢な悩みであるが、ここは黙って佐久間の話を聞き続けるとしよう。

「俺は一、二階あれば充分だから、三階は俺達で自由に使おうと思って。ここなら食料とかあるから、非常時にも対応出来るぞ。」

 持つべき物は友である。しかし、ウルトラマートの件が片付いた今、何もそこまでしなくても。

「常に臨戦体勢であることは決して悪いことじゃない。それに、親と喧嘩したりしたときも、ここなら二十四時間開いてます。」

 まるで、コンビニの宣伝文句のようだ。

「ま、外で話すのもあれだから、中に入れ。」

 佐久間の案内で早速新居に入る事にした。階段を登って、三階に案内された僕達。一、二階には結構物があった印象なのに、三階には何もなかった。

「今は何もないが、そのうち生活に必要な物品全てを兼ね備えた完全な空間をここに作り出すつもりだ。今日お前らを呼んだのは他でもない。この部屋に必要なものを買うための買い物をするんだ。どうだ、面白そうだろ。」

「あのさ、食事は下のキッチンで大丈夫だし、服は必要になったらその都度買えばいいじゃん。そうだ、寝袋は?」

「そうだな。じゃあ、寝袋も常備しとくか。」

 といって、佐久間は寝袋を十個大人買い。高校生はクレジットカードを発行できないので、当然現金一括払い。

「お前、一気にそんなに使って大丈夫なのか?」

「ケチケチするとストレスたまるぞ。」

 この点は、大金持ちの御曹司と言われても納得できるところである。我々庶民とは、金銭感覚が違う。その後も、立て続けに必要な物を買い漁って、最終的に出費は数十万円となっていた。当然持ち運べるわけもないので、後日佐久間家に直接輸送されることになる。


 連休も最終日。僕はウルトラマートに行ったメンバー全員を連れて、佐久間家にやってきた。

 佐久間家には、僕達の生活拠点になるような物品が完全に備わった空間に様変わりしていた。

「これで、今度からここはみんなで使えるようになる。ここの合鍵も出来たから、みんなに渡しとくな。どうやら、外に階段を作って、直接三階に入れるようにしたようだ。佐久間のアイデアによって作られたこの場所。後々、僕らにとっても大変役に立ってくれることになる。

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