第四話 ウルトラマート編④
みんなが行った方向とは逆方向。佐久間に連れられて僕はウルトラマートまで来ていた。
「なんでこんなとこ来たんだよ。」
「よし、説明するか。恐らくあいつらは同じ監禁場所を何度も使ったりはしない。だから、ウルトラマートに潜入して敵の情報を探る。まあ、俺とお前なら普通の客に見えるから大丈夫だ。心配するな。」
佐久間は歩き続けたが、食料品売場の片隅で止まった。
「ここから先は、関係者以外立入禁止だ。関係者って言ってもアルバイトやパートタイマーは入れない。ウルトラグループ直属の奴しか入ってはいけないようになってる。それって不自然だろ?」
「うん。で、それが鹿島の親父にどう関係あるんだよ?」
「ここに監禁されているとは言わないが、ここに潜入できれば何か重要なことを知ることができる。もしかしたら、鹿島の親父の居場所の手掛かりとなるものも発見できるかもな。」
「でも、入ったらすぐ見つかるんじゃない?」
「それでだ。他の奴には連絡をとって、俺達は閉店時刻まで待つ。閉店後、客がいなくなり店員も帰宅した後が狙い目だ。親とか学校には俺から連絡しておく。俺なら疑われないだろう。」
そして、佐久間は菅原の携帯に電話をした。
ウルトラマートのフードコートで僕と佐久間が昼食をとっている時、月島から電話があった。
「もしもし、北野?」
「どうした?」
「千代田の言った通りの場所に来たんだが、何もなかったんだ。菅原が佐久間から電話があったとか言ったからさー、今何人かの奴はウルトラマートに向かってる。閉店まで待つんだろ。僕に何か出来る事ある?」
「ちょっと電話変わって。」
僕は佐久間に携帯を貸した。
「お前ら、全部で何人いる?」
「今は、三十人以上はいると思うけど。」
「そうじゃなくて、ウルトラマートに来れる人数。」
「あ、そっか。えーっと。」
暫くの間があった。
「十人。僕と鹿島、菅原、菅原の姉と弟二人に、澁澤、千代田、天野、森野。」
「いつくらいに着きそう?」
「あと十五分くらい。」
「あっそー?分かった。じゃあ、正面口で待ってるな。」
佐久間は右手に持っていたハンバーガーを一口で完食し、僕にも早く食べろと急かしてきた。
十五分後、十人がやって来た。
十人の内、六人は既に紹介したと思うが残りの四人についても紹介しよう。
菅原の姉。菅原澪。僕達の二つ上の高校三年生。南高の三年A組に所属している、菅原兄弟の最年長。佐久間ほどではないが、頭がよく、見た目も可愛らしいので南高の男子にはそれなりの人気がある。実は鹿島はこの人に思いを寄せている。だが、鹿島と澪さんでは釣り合いがとれるかというと懐疑の念を浮かべてしまう。
菅原の弟。菅原亮と菅原崇。小学六年生と小学四年生。亮も崇もいつも公園で友達と野球をして遊んでいるのでよく目にする、元気が取柄の二人。菅原家に於いては、次男と三男である。サ●エさんで例えるなら、磯野カ●オである。
森野慎吾。我が一年C組の学級委員。しかし、僕達の勝手な推薦でいやいや就任したような奴なので、学級委員に必要なリーダーシップには欠けるが、学校では真面目に振舞っているので先生や親からの評判はいい。うまいことやる奴である。
そんな十人が合流したところで、佐久間は、
「閉店時間になったら俺と北野で、ウルトラマートに潜入する。三十分経って戻ってこなかったら、お前らの内二人ずつ入って来い。それと、今晩は家に帰れないけど都合の悪い奴はいるか?」
誰も手を挙げない。鹿島や澁澤、千代田などはともかく、小学生の菅原兄弟や森野、天野が手を挙げないところからして、みんな相当の覚悟があるようだ。
暇なので、ぶらぶらとそこら辺を歩いて時間を潰そうとしたが、ショッピングモールで何も買うものもなく一日を潰すのは意外ときつい。亮と崇は、近くの公園で野球しようと言い出す始末。
なんとか、亮と崇を言い包めて閉店時間まで時間を潰すことに成功した。
「まもなく、閉店のお時間でございます。皆様、本日はご来店頂き、誠に有難うございました・・・」
店内アナウンスが聞こえた時、佐久間が、
「じゃあ、各自トイレにでも隠れろ。作戦を開始するときは、俺がメールを送る。音がしないようにしっかりマナーモードにしとけよ。あと、菅原の弟は携帯持ってないから、誰かと一緒に行動しろよ。」
菅原兄弟はそれぞれ、姉と兄の方に着いて行った。
僕が隠れたのは三階の紳士服売場の棚の下。覗かれでもしない限り、絶対見つからない所だ。僕は、佐久間の連絡を待った。