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第二話 ウルトラマート編②

 次の日の放課後。僕は鹿島と月島の三人でウルトラマートの予定地に行った。

「大体、佐久間はあーだこーだ言ってるけど別に協力する筋合いなんて全くないよな。」

 鹿島がぼそりと呟いた。

 鹿島だけでなくC組のメンバー全員がそう思っているだろう。しかし、佐久間のあの時の表情から察すると、佐久間はそうとう何かを思いつめているらしい。普段そうそううろたえたりしないような奴がいきなりああいう態度をとると、周りの人間は何事かと心配してしまう。

「折角ここまで来たから、すこし遊んで帰ろうぜ。」

 月島の一言で、僕達は目的を忘れて近所のボウリング場で時間を潰した。


 木曜、金曜があっという間に過ぎ去り、とうとうウルトラマートの開店の日がやってきた。佐久間の慌て様とは裏腹に、問題は何も起こらなかった。開店したウルトラマートに来店しようとこの町の半分くらいの人はウルトラマートへ足を運んだ。

「結局なんだったんだ?佐久間があんなに慌てたのは。」

 電話越しに鹿島がそう言った。遊ぶ場所がさほどない地方都市の高校生にとって、休日は友達と電話して時間を潰すのは有効な時間の利用だといえる。

 その時、家のチャイムがなった。家には僕しかいないので、しかたなく出る事にした。一旦電話を切って、玄関まで行くと、僕は意外な訪問客に驚いた。

 訪問客は澁澤。我がクラス一の問題児だ。澁澤は僕が玄関の扉を開けるとすぐさま、

「おい、北野(僕の苗字)。俺のバイク仲間の千代田がヤクザに因縁つけられて、どっか連れてかれたんだ。お前、千代田探すの手伝ってくれよ。頼む。」

 と懇願してきた。千代田は隣のクラスの奴だが、澁澤と同じくあまり柄がよくない。普段は彼らとの接点がないので、澁澤が僕に協力してくれと言う理由がわからない。

 澁澤があまりにも頼むので僕は澁澤に着いて行くことにした。

「千代田が因縁つけられたのはここら辺なんだよ。」

 澁澤が連れてきたのは、南高から西に数キロほど離れた新興住宅街。ウルトラマートに近いということが、僕の心に少し恐怖感を覚えさせた。

「あの、澁澤。もしかして佐久間に連絡したら何か教えてくれるかも。」

「そうだな。お前佐久間に電話しろ。」

 佐久間は電話をかけるとすぐに出た。

「代われ。」

 澁澤はそう言って僕の携帯を取り上げた。

「もしもし、佐久間。」

「澁澤か。お前の言いたい事は分かってる。隣のクラスの千代田とか言う奴のことだろ。」

「お前もう知ってたのか。どうすりゃいいんだよ?」

「大事にはならないから一旦落ち着け。」

「ん?ああ。」

「この町にはもともとヤクザなんて存在しない。だから、因縁をつけたとかいうヤクザはウルトラグループの一味に間違いないと思う。」

「それと、千代田の親は俗に言う過保護過干渉の部類だ。下手に時間かけると、親がサツにチクるぞ。」

「あいつらは、警察にチクられる前にはあいつを釈放するさ。あいつらは、ああいうことには頭が回るからな。」

 澁澤が僕の携帯で佐久間と話していたとき、澁澤の携帯が鳴った。

「千代田からだ。」

 澁澤は驚きを隠せなかった。佐久間と通話中の携帯を僕に投げ返して、自分の携帯を開いた。電話の向こうの声は聞こえないが、澁澤の表情でどういう状況になったかは大体見当がついた。

「千代田が釈放されただと。」

 澁澤はそう言った。

「お前には、面倒かけたな。もう帰っていいぞ。」

 澁澤は僕にそう言って、自分も颯爽とバイクにまたがってどこかに消えた。


 帰り道のこと。

 自転車に乗りながら家路を辿っていた時、大通りの向こう側でヤクザみたいのが誰か見覚えのある中年男性にからんでいたのが見えたような気がした。でも、僕がもう一度目を凝らして見ると、犬の散歩中の主婦が歩いていただけだったので、僕の頭の中は今晩の夕食のことで一杯になった。

 家に帰り、携帯を開くと、メールが一件入っていた。鹿島からだ。

「親父がウルトラマートに行ったきり帰って来ない。」

 僕はすぐさま鹿島の家に自転車を飛ばした。

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