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第一話 ウルトラマート編①

 全国トップクラスの学力を持つ奴のほとんど、いやこいつ以外は全員とてもがつくくらいご立派な優等生で品行方正な奴なんだろう。いや、こういう風に見えて実はこういう奴らには結構そういうのが混じっているんじゃないか。僕がこんな疑念を持ち始めたのはこいつと同じクラスになってからだ。

 僕が所属するのは南高校の一年C組。

 このクラス、一言でまとめるとしたら、「おかしい」。

 まず僕の目の前の席の佐久間。こいつは先ほども言っていた全国トップクラスの学力を持つ奴。進学校は遠いから朝が大変、という理由で家が近い南高に入学した中学の同級生。

 中学の頃は同じクラスになったことがなく、普通の優等生というイメージが強かったが、同じクラスになって見ると驚くことに、学校は遅刻。授業中には居眠り。そして、今は机の陰でゲームをしている。中学の時こいつと同じクラスの奴にこいつのことを聞くと、皆、

「あいつは優等生なんかじゃない。」

 と口を揃えて言う。

 そして誰もこいつの頭がどういう構造になっているのか理解しえない。


 そして斜め後ろの席の月島。

 誰もが認めるイケメン君。

 入学したばかりの頃は相当女子に人気があったようだ。

 しかし、こいつは馬鹿だ。偏差値50の南高によく入れたな、という程のお脳の持ち主だ。また、その他においても、某国民的アニメの主人公であるの●太並みの能力しか持ち合わせていない。


 その他にも非常にキャラの濃厚な方々が揃っている我がC組。

 他のクラスメートについてはまた後ほど説明する。


 朝のHR。入学して凡そ一ヶ月。そろそろ高校生活にも慣れてきた頃だ。

 今日は珍しく佐久間がチャイム十分前に登校していた。全員が席に座ったところで、担任が入ってきた。生徒の方はすぐ覚えられても、この担任は印象が薄い。

 担任が伝達事項などを一本調子な口調で喋っている。

 すると、佐久間が僕にノートの切れ端を渡してきた。ノートの切れ端には、

「今日の放課後屋上に来い。」

 と書かれてあった。まさか男同士で破廉恥な真似はしないだろうな。

「何のようだ?」

「後で説明する。それどんどん回していって。」

 仕方なく僕は月島に紙を渡した。

 担任が話を終えた頃には一番端の席の奴が紙を読んでいた。


 四時間もの長い授業を終えて昼休みがやってきた。

 この一ヶ月の間、弁当はいつも鹿島と一緒に昇降口付近の階段で食べている。

 いつも何かを喋りながら昼食を食べているのだが、今日の話題は専ら佐久間の紙のことだった。

「佐久間が一体僕らに何の用があるんだよ。」

「知ってたか。佐久間って親と喧嘩して駅前のアパートで一人暮らししているらしいぞ。しかも、親ってのが結構な金持ちらしい。」

「なんでお前がそんな事知ってんだ?」

 鹿島は佐久間と同じ中学というわけでもないし、佐久間と前々から知り合いだというわけでもない。ただ、この手の噂話は鹿島が多分クラスで一番把握していると思う。

「しかも男女問わずだぞ。」

「もしかして、生活費恵んでくれとか。」

「「・・・ハハハハハ・・・」」

 全く洒落にならなかった。高校生男子は小額の小遣いで一月凌いでいるんだ。人に恵んでやる余裕なんてない。でも、頭下げられたら断りづらい。どうすればよいのだろうか。

 なんてことを考えていたら、午後の授業の予鈴がなった。


 とうとう、我々が恐れていた放課後がやってきた。

 周りの奴を見ても見たところ全員が屋上に向かっている。

「でもすごいな。何の用かも書かずに屋上に来い、と言っただけでクラス全員動かせるんだぞ。」

「こんな状況だと俺達だけ帰るって訳にはいかないだろ。」

 ということで、僕と鹿島が最後に屋上に辿り着いた。肝心の佐久間も既に着いていた。

「何なんだよ、佐久間。」

 何なんだよとか言っておきながら、クラス一のヤンキーである澁澤も来ていた。

「突然だけど協力して欲しい事がある。」

「何だよ!」

 澁澤の怒りがMAXに達しそうだった。

「うるせーな、澁澤。」

 その声は、意外な人物からだった。確かあいつは天野という女子だったはず。このクラスでは珍しい良識ある一般人だ。

「天野ってあんなキャラか?」

 鹿島なら知っているかも知れないと思って、僕は鹿島に尋ねた。

「澁澤はあいつだけには弱いんだ。」

「もしかして、あれか。」

「あれだ。」

 澁澤に聞かれたら命が危ないのでここは「あれ」をお察ししてもらうしかない。

「わかったよ。で、何だ?」

 先ほどの勢いはどこえやら。澁澤は急に大人しくなった。

「個人的な事で申し訳ないんだが、今度うちの親の経営する会社がここら辺にも進出してくる。それを妨害して欲しいんだ。」

「は?何言ってんだお前。」

 そんな声が各所から聞こえてきた。

「うちの親は多分こっちでも容赦しないぞ。鹿島。お前ん家の八百屋なんて放っておいたらすぐつぶれるぞ。」

「お前の親って何やってるんだよ。」

「ウルトラグループの経営者だ。」

 僕を含める全員が唖然とした。ウルトラグループといえば世界にも進出する、国内最大級の会社だ。小売業以外にも様々な分野に手を出している。とすると、こいつはそんな立派な家の御曹司。こいつにはそんな片鱗ゼロだが。そして何よりも厄介なのは、あれだ。これは都市伝説なんだが、ウルトラグループというのは所謂「ヤクザ」業界にも進出しているらしい。

「何もしなかったらこの町はヤクザと金持ちに牛耳られるぞ。そうなると、面倒だ。」

「でも、それはそんなに俺らに関係なくねーか?」

 鹿島が言った。

「大いに関係ある。ヤクザと金持ちに牛耳られると色々と面倒だぞ。」

「で、ウルトラグループの進出はいつだ。」

「今週末だ。」

「もしかして、これのことか。」

 月島が風で飛んできたチラシを皆に見えるように広げた。

「ウルトラマート 土曜日午前九時オープン」

 そして、その下には、

「県内最大級のショッピングモール 是非皆様お越し下さい。」

 と書かれてあった。

「土曜日にオープンするってことは、ウルトラグループの奴らは明日あたりにでもこの町に来るぞ。」

 佐久間がやけに神妙な表情で言った。


 今日は火曜日。開店まであと4日。

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