街へ
息を切らしながら集落の中へと入った英知は、門の近くでへたり込んでいた。
「ハァ…ハァ…」
「大丈夫かい?ゴブリンに追われてたようだね。街の中に入ったから大丈夫だよ。」
見張りの男たちが心配そうに声をかけてくれるが、まだ呼吸が落ち着かない。しばらくしてようやく立ち上がると、石畳の道が走り、木造やレンガ造りの家々が立ち並んでいる。行き交う人はそれぞれに忙しそうだ。ようやく訪れた安堵感をさらに深めてくれる。
「ありがとうございます。」
「ならよかった。その様子だとお金もなさそうみたいだから、入場料は大丈夫だよ。一応犯罪歴がないかだけチェックするね。」
見張りの人達は、謎の水晶をかざして俺を見つめている。
「うん、問題ないね。ようこそ、『歓迎の街 ウェルカム』へ!」
(ここなら、とりあえず安全そうだ。てか名前が面白いな)
「はい、ありがとうございます!」
俺は見張りの人達から解放されて歩いていく。
しばらく、街の中を歩いていくが皆忙しそうで話しかけにくい。
歩いてから5分ほど経過した頃、どうしたものかと途方に暮れていると、一人の老女が心配そうな表情で近づいてきた。
「坊や、大丈夫かい?顔色が悪いようじゃが」
「あ、はい。ちょっと……色々ありまして」
英知は曖昧に答えた。自分の状況を説明しても、信じてもらえるとは思えない。
「もしよかったら、何か困ったことがあったら、ギルドに行ってみるといいよ。色々な情報が集まるし、助けてくれることもあるからね」
老女は親切にそう教えてくれた。ギルドという言葉は昨日も聞いた。やはり、この世界では重要な場所なのだろう。
「ありがとうございます。ギルドはどちらにありますか?」
老女は丁寧に道のりを教えてくれた。お礼を言って別れ、英知はギルドを目指して歩き始めた。
しばらく歩いていると、向こうから歩いてくる一人の若い男性と目が合った。その男性はにこやかに微笑みかけ、何か言いたげな様子だ。
「あの、すみません」
意を決して声をかけてみた。男性は足を止め、快く応じてくれた。
「はい、なんでしょう?」
「実は、この世界に来たばかりで、何も分からなくて……」
英知が困った様子でそう言うと、男性はすぐに察してくれたようだ。
「ああ、もしかして『来訪者』の方ですか?」
またこの言葉だ。英知は素直に頷いた。
「ええ、たぶん……」
男性は優しく微笑んだ。
「やっぱり。どこか見慣れない雰囲気でしたから。何か困っていることはありますか?」
「はい、いくつか……まず、自分のステータスを閉じたいのですが…」
男性は少し考えてから言った。「ああ、それは簡単ですよ。心の中で『ステータスクローズ』と念じてみてください。そうすると、ステータスが閉じるはずです。」
半信半疑で英知が試してみると、昨日見たのと同じ半透明のウィンドウが閉じた。
「本当だ、ありがとうございます!」
「逆にステータスオープンって念じてごらん。」
多田 英知
Lv1
HP:1000
MP:1
SP:1
ATK:1
INT:1
DEF:1
MND:1
DEX:1
SPD:1
LUK:1
「ありがとうございます、確認できました!あの、他に何かこの世界で知っておくべきことはありますか?」
その後、ステータスクローズと念じてステータスを閉じる。親切な男性は、この世界の基本的な情報や、ギルドのことなどを丁寧に教えてくれた。やはりギルドは『来訪者』をサポートしてくれる存在であり、困ったことがあれば頼るべき場所らしい。
「ギルドは、この道をまっすぐ行って、大きな広場に出たところにありますよ。きっと力になってくれます」
男性は最後にそう言って、にこやかに手を振って歩き去っていった。
親切な通行人との出会いのおかげで、英知は自分の置かれた状況を少し理解することができた。ステータスを確認する方法も分かり、これで少しは安心できる。
教えてもらった通り、英知はギルドを目指して再び歩き出した。これから一体どんな出会いがあり、どんな困難が待ち受けているのだろうか。期待と不安が入り混じる中、英知は一歩ずつ、異世界の街の中を進んでいくのだった。
「そういえば、普通に言語はこの世界の特有の言語じゃなかったな…」