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ゴブリンとの追いかけっこ

草原を歩き始めてしばらくした頃、英知は背後の茂みからガサガサという音を聞いた。振り返ると、そこには緑色の肌をした、小柄な人型生物が姿を現した。尖った耳と、ギザギザとした牙が特徴的だ。手には粗末な棍棒のようなものを握っており、低い唸り声を上げながらこちらを睨んでいる。


(ゴブリン……か!)


ゲームやファンタジー小説でよく見かける、典型的な小型モンスターだ。しかし、実際に目の当たりにすると、その存在感に気圧される。英知は身構えたが、自分のステータスを思い出して愕然とした。HPを除くステータスはオール1。まともに戦えるはずがない。

ゴブリンがこちらに気づき、甲高い声で何か叫んだ。次の瞬間、短い足を懸命に動かし、棍棒を振り上げながら突進してくる。


「くっ!」


考えるよりも先に、英知は走り出していた。ゴブリンの動きは単純で、狙いも大雑把だ。なんとか左右に身を翻し、迫りくる棍棒を紙一重で避ける。


「ヒッ!」


間合いを離すと、ゴブリンは再びキーキーと叫びながら追いかけてくる。幸い、ゴブリンのスピードはそれほど速くない。英知は必死に足を動かし、ゴブリンから距離を取ろうとする。


背後から「キーキー」という鳴き声と、地面を叩く音が迫ってくる。一度だけ振り返ると、ゴブリンはまだ棍棒を振り上げ、追いかけてきていた。単純な攻撃を避けながらも、確実に距離は縮まっている。


(どうすれば……このままじゃジリ貧だ!)


武器もない。魔法も使えない。頼れるのは、人並み外れたHPと、意外と動ける自分の体だけだ。

とにかく、人里にたどり着くしかない。英知は無我夢中で草原を駆け続けた。

どれくらい走っただろうか。息が上がり、肺が焼け付くように痛む。それでも足を止めなかった。何度も転びそうになりながらも、必死に前へ進む。


やがて、遠くに建物の影が見えてきた。それは小さな集落のようだった。希望の光が見えた英知は、最後の力を振り絞って走り出した。


集落の入り口には、木製の柵と見張りらしき人影が見える。英知が必死に手を振りながら近づくと、見張りの男たちは訝しげな表情を浮かべながらも、ゴブリンらしきものが追いかけてくるのを見て、慌てて門を開けてくれた。

息を切らせながら、英知は集落の中へと駆け込んだ。ゴブリンは門の前でキーキーと喚いているが、それ以上は入ってこようとしない。どうやら、集落の結界のようなものに阻まれたらしい。

安堵のため息をつき、英知はへたり込んだ。助かった……本当に助かった。見上げると、門を開けてくれた見張りの男たちが、心配そうな表情でこちらを見ていた。


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