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突然の異世界

「クリアああああああ!」

多田ただ英知ひでかずは深夜の自室で、叫んでいた。モニターには見慣れたゲームのラスボスが、派手なエフェクトと共に消滅していく光景が映し出されている。やりこみ型のVRRPG『エターナル・ファンタジー・オンライン』、通称『エタファン』の最高難易度ダンジョンを、数多の屍を乗り越えてついにソロクリアした瞬間だった。


「ふう、長かった……」


達成感に浸りながら、英知はコントローラーから手を離し、伸びをした。時刻は午前三時を回っている。そろそろ寝ようかと立ち上がった瞬間、強烈な光が部屋を満たした。


「な、なんだ!?」


反射的に目を瞑る。次に意識を取り戻した時、英知は硬い地面に座り込んでいた。見慣れない土と草の匂い、そして遠くから聞こえる鳥の鳴き声。薄暗かった自室とは全く違う、明るい陽の光が降り注いでいる。


「どこだ、ここ……?」


周囲を見渡すと、そこは広々とした草原だった。後ろには鬱蒼とした森が広がっており、今まで見たことのない植物が生い茂っている。空は抜けるように青く、白い雲がゆっくりと流れていた。


(なんだこれ……夢じゃないよな?)


現実味がなさすぎる光景に、英知は頬をつねってみる。痛い。これは夢ではないらしい。最後に見たのは、自室のモニターの光だったはず。一体何が起こったのか、全く見当もつかない。

とりあえず立ち上がってみる。特に体の痛みや不調はない。


しかし、見慣れない景色に不安が募る。何か手がかりはないかと周囲を探していると、ふと、自分の体にある変化に気づいた。


(あれ?なんだか……体が軽い?)


そういえば、ゲームを長時間プレイした後特有の倦怠感がない。むしろ、妙に体が軽く、どこか力がみなぎっているような感覚がある。気のせいだろうか?

その時、ふと視界の隅に何かが見えた。半透明の文字のようなものが、まるで空気中に浮かんでいる。


多田 英知

Lv1

HP:1000


最初は見間違いかと思った。しかし、目を凝らしてもその文字は消えない。それどころか、その下にさらにいくつかの文字が並んでいることに気づいた。


MP:1

SP:1

ATK:1

INT:1

DEF:1

MND:1

DEX:1

SPD:1

LUK:1


(これは……ゲームのステータス画面にそっくりじゃないか!?)


まさか、本当にゲームのような世界に来てしまったのだろうか?信じられない思いでいっぱいだったが、目の前の現実はそうとしか思えない。だとしたら、HPの「1000」という数値は一体何なのだろう?ゲームの初期ステータスではありえない高さだ。


(詳しいことを聞ける人に会わないと……)


この世界がどういう場所なのか、このステータスは何を意味するのか、全く分からないことだらけだ。まずは人のいる場所を探し、情報を集める必要がありそうだ。


英知は森とは反対方向の、開けた草原を進むことにした。遠くに見える小さな丘を目指して歩き出す。頼りになるのは、妙に高いHPだけ。他のステータスが低いままでは、この世界で何が起こるか分からない。一刻も早く、この世界のことを知る必要があった。


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