5話 子の願いと親の決意
(ユウマが起きたのは気絶してから約10分後だった)
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(意識が朦朧としている中、何かを叫んでるような声がする)
【少女】パ………パ…!
【ユウマ】(そういや、俺は…)
【少女】パパ…パパ!
【ユウマ】(そうだ!俺は!)
【少女】パパ!パパ!
(ユウマは意識を取り戻し、状態を起こした)
【少女】パパ!よかったぁ!
【ユウマ】君は…あぁ、そうか
【少女】パパ大丈夫?
【ユウマ】あぁ、大丈夫さ
【ユウマ】(しっかし、この子どうしよう…)
【ユウマ】(あっ!)
【ユウマ】そういや君、名前なかったんだよね?
【少女】うん…
【ユウマ】悲しまないでくれ、もしよかったら、俺も君の名前を一緒に考えるよ。
【少女】!!!
【ユウマ】どう、だろうか?
(少女はユウマの手を握る)
【少女】うん!名前、考える!
【ユウマ】そうかそうか〜、じゃあ何か案はないかな?
【少女】うーん…
(少女は少し考えた)
【少女】ない!
【ユウマ】おぉ〜そうかそうか〜……ってえ?
【ユウマ】ない?
【少女】ない!
【少女】パパが考えて!
【ユウマ】(ん〜…困った…すごく困ったぞ…)
【ユウマ】(ん〜…どうしよう、どうしよう)
(ユウマはたった2秒間の間に数多の名前を思いついたが………)
【ユウマ】(不安だ、すごく不安だ)
【ユウマ】(この子が気に入ってくれる名があるのかが一番の問題だ、とりあえず思いついたのを片っ端から言っていくか)
【ユウマ】メイ!
【少女】うーん…
【ユウマ】(微妙な反応だな〜、じゃあ次だ!)
【ユウマ】じゃあアイ!
【少女】ん〜…
【ユウマ】(これも微妙そうだな)
【ユウマ】じゃ、じゃあユキ!
【少女】ん〜…
(少女は目を瞑り、腕を組み、不満そうな顔で受け応える)
【ユウマ】ホシノ!
【少女】ん〜
【ユウマ】サラ!
【少女】ん〜
【ユウマ】ユメ!
【少女】ん〜
【ユウマ】ポチ!
【少女】ん?
【ユウマ】コハル!
【少女】ん〜
(こんな感じで名前決めから10分がたった)
【ユウマ】ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ
【ユウマ】(いったい何個言ったんだ?)
【ユウマ】(ちっとも気にいる名前がないなんて)
(少女は依然として不安げな顔だ)
【ユウマ】(ん〜…なにか〜なにかないか〜?)
【???】この子の容姿から名を決めてみては?
【ユウマ】(その声はナビゲーターか、ふむ、この子の容姿か…)
(ユウマは少女の容姿をじっくりと観察する)
【ユウマ】(うーん、華奢な体、所々破けている白のワンピース、水色の髪、青色の瞳…)
【ユウマ】(青系統の色に白色の服、似合ってるな…)
【ユウマ】(っていかんいかん)
【ユウマ】ん〜。じゃあ
(少し間をおき、ユウマは新たな案をだす)
【ユウマ】「スイ」はどうかな?
【少女】!!
(少女は少し驚いた顔をして、ユウマの元へ行く)
(少女はユウマに抱きつき)
【少女】私それがいい!スイがいい!
【ユウマ】あぁ!気に入ってくれたか!
【少女】うん!
【ユウマ】よしわかった、じゃあ今日から君は「スイ」!
【スイ】うん!私はスイ!パパの子のスイ!
(二人は楽しそうに笑った)
(二人は町まで手を繋いで帰った)
【ユウマ】よし、って、スイはこれからどうするの?
【スイ】どうするのって、パパと一緒にいるよ?
【ユウマ】俺は宿に住んでいるんだよ…スイもいたらお金がもたないからな〜
(するとスイは少し目に涙を浮かべた)
【スイ】パパ、スイ、邪魔?
(ユウマはすぐに涙に気づき)
【ユウマ】あぁ〜!スイ!じゃあ野宿はどうかな?
【スイ】野宿?
【ユウマ】そうだ!野宿ならお金はかからない
【スイ】でもお外危険じゃないの?
【ユウマ】大丈夫、危険なものは俺が全部やっつけてやる!
【ユウマ】(俺には全自動全方位斬撃がある、おそらくは奇襲されても返り討ちにするはず)
【スイ】じゃあスイ、パパと野宿する!
【ユウマ】よし、じゃあさっきのところに戻ろうか
(ユウマ達は南門を再度通り、再び街の外でてた)
【ユウマ】さてと、そういやスイ
【スイ】ん?なに?パパ
【ユウマ】スイは何か能力は持っているか?
【ユウマ】(たしか氷魔法とかあったようなはず)
【スイ】ん〜、わかんない…使ったことないもん
【ユウマ】そうか、なら多分スイには氷魔法が使えると思うんだ
【スイ】氷魔法?
【ユウマ】そうだ、一回試しにあの大きな木に向かって出さないか?
【スイ】やってみる!
(スイは気合を入れ、両手を体の前に出し唱えた)
【スイ】氷魔法!
、、、、、
【スイ】あ、あれ?
【ユウマ】何も…起きなかったね
【スイ】パパ、スイ何もできなかった…
【ユウマ】(スイが落ち込んでる…)
(ユウマはすぐさまスイの元へ駆けつけ、頭を優しく撫でる)
【ユウマ】よーしよしよし〜、スイはいい子だからね〜できなかったのはきっと別の原因があるんだ
【スイ】別の原因?
【ユウマ】そうだ
【ユウマ】(何かわかるか?ナビゲーター)
【???】私頼りですか…
【ユウマ】(いいじゃん別に、何かわからない?)
【???】ふむ、私の見解ですと、魔力の問題、あるいは使える魔法を知らないから扱えていないのでは?
【ユウマ】(なるほど、その二つを試してみるか)
【スイ】パパ?パパ?
【ユウマ】(ありがとうな、ナビゲーター)
【???】いえいえ、お気になさらず
【スイ】パパ?パパ?
【ユウマ】ん?あぁ〜ごめん…どうしたの?
(ユウマはナビゲーターとの会話に夢中でスイが服の裾を掴んで話しかけていることに気が付かなかった)
【スイ】あのね、スイ…魔法使ってみたい!パパ何か知ってる?
【ユウマ】スイ、もしかしたら原因が分かったかもしれない。
【スイ】本当?!パパ凄〜い!
【ユウマ】スイにはもしかしたら魔力が足りていない可能性がある
【スイ】魔力?
【ユウマ】そうだ、だから少し魔力量を見せて欲しい
【スイ】わかった!どうすればいいの?
【ユウマ】俺が見るから、スイはじっとしててね
【スイ】は〜い!
【ユウマ】一般鑑定!
[プロフィール]
名前:スイ
年齢:8
種族:人間
職業:なし
レベル:3
(new)魔力量:8
眷属・従属:なし
耐性:全状態異常無効化
スキル:氷魔法Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ
[2ページ目を見る]
【ユウマ】(よし、ちゃんとできてる)
【ユウマ】(ナビゲーターに頼んで魔力量をプロフィールに乗っけてもらった)
【ユウマ】(本当にあいつ何者なんだよ)
【ユウマ】えぇとね、魔力量は…
【ユウマ】8…か
【ユウマ】(ん?)
【ユウマ】え、8?………8?!!
【スイ】え?どうしたの?パパ
【ユウマ】よーく聞いてよ〜スイ
(スイの肩に手を置き、慎重な顔でスイに伝える)
【ユウマ】スイの魔力量は………
【スイ】スイの魔力量は………
【ユウマ】8…だ
【スイ】8?
【ユウマ】そうだ、8だ
【スイ】8ってどのくらいなの?
【ユウマ】俺は今レベル14で魔力量は70だ。
【スイ】そーなんだぁ
【ユウマ】それでスイはレベル3で魔力量が8
【スイ】それってつまりぃ…
【スイ】えーと、えーと
(必死に計算をするスイ)
【ユウマ】つまり、スイは他よりかなり魔力量が少ないんだぁ!
【スイ】なっ、なんだってぇぇぇ〜
(今にも涙が出そうなスイを慰めようとユウマは)
【ユウマ】スイ
【スイ】んぅ?
【ユウマ】何かしたいことはないか?
【ユウマ】俺にできることがあれば…
【ユウマ】(泣くスイは見たくない…もう俺はスイの親として生きなければ!)
【スイ】じゃ、じゃあ…
【ユウマ】………うん
(スイはユウマの懐に入り、抱きついた)
【ユウマ】!?
【スイ】ふふ〜♪
【スイ】スイ、ここ好き〜♪
【ユウマ】そうか、それはよかった
(スイを温めるように体を丸めたユウマ)
【ユウマ】おやすみ…スイ
【スイ】うん!♪
(翌朝)
(ユウマは起きた、スイはまだ寝ている)
【ユウマ】(動いたら起きちゃうよな…起きるまでじっとしてるか)
【スイ】すぅ、すぅ、
【ユウマ】(子どもって、こんな感じなんだな)
【ユウマ】(大変だけど,すごく元気がもらえるな)
【スイ】すぅ、すぅ、んぅ…
(スイは目を少しずつ開け、日の光を浴びた)
【スイ】んぅ?パパ?
【ユウマ】おぉ、起きたのかスイ
【スイ】うん…
(まだ眠そうなスイ、目を少し擦り、ユウマに言う)
【スイ】おはよう…パパ
【ユウマ】あぁ、おはよう…スイ
(二人は微笑ましそうに起床した)
(ユウマはスイの魔力量を上げるためにレベルアップが一番いいのではないかと思った…だがそれには一つ懸念点があった)
【ユウマ】(そういや俺が倒しちゃったら俺がレベルアップするよな?どうしよう)
【???】能力吸収を使えば他人に経験値を渡すことが可能ですよ
【ユウマ】(ナビゲーター?それは本当か?)
【???】はい、能力吸収改め、 能力吸収は倒した相手の能力を自身のものとして吸収することができます。
【ユウマ】(どうやったら経験値がスイに行くんだ?)
【???】それには一つ条件があります
【ユウマ】(条件?)
【???】能力吸収を進化させることです。
【ユウマ】(進化…進化の実を食べればいいのか?)
【???】はい、どうやら能力吸収の方も進化条件はクリアしているようです。なので後は実を食べれば進化できます。
【ユウマ】(そうか、なら食ってやる)
【ユウマ】スイ〜、すこーし離れててくれないか?
【スイ】えぇ〜…!
【ユウマ】ごめんよ〜、すぐに終わるからな〜
【スイ】むぅ…わかった
(スイは二歩、三歩とユウマから距離をとった)
【ユウマ】(よし、じゃあさっそく)
(ユウマはカバンから進化の実を取り出し、食す)
【ユウマ】ふぅ〜…
【ユウマ】(これでいいのかな?)
(するとユウマの体が光り始め、数秒後には消えた)
【ユウマ】(終わったのかな?)
【ユウマ】スイ〜もういいぞ〜
【スイ】は〜い!
(スイは走ってユウマの元に戻った)
(スイはユウマのもとにもだったと同時にユウマに抱きついた)
【ユウマ】(よほどなついているな…俺が育てなきゃいけない…スイを…覚悟を決めなきゃな、親として、スイの親として)
【???】進化できました。進化して、能力吸収は名称が変わりました。
【ユウマ】どんな名だ?
【???】それはご自身でご確認を
【ユウマ】(なんだそりゃ)
【ユウマ】プロフィール!
[プロフィール]
名前:如月ユウマ
年齢:15
種族:人間
職業:冒険者
レベル:14
眷属・従属:なし
耐性:なし
スキル:全自動全方位斬撃、(new)能力吸収支配
能力吸収:黒炎爪撃、炎息
(new)支配:なし
【ユウマ】(能力吸収がに支配がついてる?!)
【???】はい、どうやら本来とは違った進化をしたようです。
【ユウマ】(え?それってどういう?)
【???】説明は一旦後にしませんか?
【ユウマ】(え?どうして?)
【???】スイ様が何かおつらそうにしております
【ユウマ】(え?)
(ユウマはスイを方を見る…すると)
【スイ】う…うぅ…
【ユウマ】ど、どうしたスイ?
【スイ】なんかね…お腹が痛いの…
【ユウマ】痛い?まさかなんか良からぬものが入ってたのか?
【ユウマ】まかせろ、スイが食ったものを売ったやつを八つ裂きにしてやる
(ユウマはとてもスイには見せられないような、とある奇妙な冒険の主人公のような顔をしていた)
【???】いけません!今はとりあえずスイ様を!
【ユウマ】はっ!そうだった
(ユウマは急いでスイをトイレに行かせ、外で待っている)
【ユウマ】ふぅ〜、危なかった〜…
【ユウマ】ナビゲーターのおかげだよ、あそこでナビゲーターが言ってくれなかったら、俺はきっと暴走してたかもしれないな
【???】お役に立てて光栄です。ですが、スイ様のためにあそこまでやるほど、あなた様はスイ様を大事に思っているですね
【ユウマ】!!!
【ユウマ】(たしかにそうだな、そうなってきているな)
【スイ】パパ?
【ユウマ】(ん?)
【ユウマ】あぁ〜スイ、もうお腹は大丈夫か?
【スイ】うん!もう大丈夫!
【ユウマ】よかったぁ〜
【スイ】ねぇ、パパ?
【ユウマ】ん?どうしたの?スイ
【スイ】スイは、パパの子?パパの子になれてるかな?
(ユウマはスイの肩に手を乗せ)
【ユウマ】今はまだ、スイは俺をパパと思っていなくてもいいよ…でも
【スイ】………
【ユウマ】俺は、少なくともスイを俺の子じゃないなんて思わないよ
【スイ】!!!
【スイ】パパ!
(スイはユウマに抱きつき、少しの間ユウマの元で泣いた)
(この時がのちのちのユウマの、親としての決意が実った瞬間である)