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モブキャラは異世界建築を見直したい

作者: ゆきうさぎ

目が覚めた時には、乙女ゲームのモブキャラだった。

最初は驚いたけど、今は楽しく過ごせている。

ただ元建築士の私にとって、一つだけとても気になっていることがある。

ヒロインと選ばれた男性キャラが結ばれることに繋がる「最終イベント」が、この世界を守る結界を一緒にはりなおす、というものなのだ。

ハッピーエンドでいいんだけど、吊り橋効果もあってラブラブになるのも良いんだけど、この結界崩壊中は大きな揺れが王国全土にあるのだ。


エンドロールでちらっと見えた煙の数々。

そう、ここは揺れがない前提で建てられた都市。そして結界崩壊時に魔物も数々なだれ込んでいた。


モブキャラは、このイベントで一掃されてしまうのだろうか。。。

それは大変!回避せねば!ということで、私の平穏な日々を守るために元建築士の知識を使って活動するよ!

目が覚めた時には、乙女ゲームのモブキャラだった。

最初はとても驚いたけど、それを乗り越えた今は毎日楽しく過ごしている。


以前の自分は建築士として働いていて、やりがいのある仕事に毎日奔走していたけれど、忙しすぎる日々に体は悲鳴をあげていた。一つのミスが、一瞬の気のゆるみが、人の命につながると言われ育てられてきたので、長時間気を緩めることもできず、心身削られているのは感じていた。

新しい乙女ゲームの現実は、夢にしては長いしリアルだし、戻れる要素が今のところ見当たらないので、原理はわからないけれど迷いこんだのだと理解することにしている。

世の中、考えてもどうにもならない時は、悩むことをやめるのも一つの手段だよね。


さて、自分が乙女ゲームの登場人物だと気づいたのは、迷い込んだ物語の登場人物や顔立ちに見覚えがあったからだ。

このゲームは、仕事一筋すぎる私に、学生時代の友人が時間ができたら気分転換に遊んでみて、とオススメしてくれたものだった。

当時から恋愛が苦手な私は、少しだけ遊んでみて、早々にネットでネタバレを読んでしまったのだったけれど、なんとなくストーリーや登場人物を知っていたので気づけた。

原理はわからないけど、迷い込んでしまった今、平和に暮らしたいので、破滅フラグを避けながら生きていこうと思っている。


ただ、一つだけとても気になっていることがある。


この世界の平穏を守る結界があり、それが最終章で一時的に破れてしまう。

ヒロインと選ばれた男性が協力して結界を再度はりなおす、そういうストーリーになっているのだ。

でも、その結界が破れた時に大きな揺れがあるのだ。

この世界では誰もが経験したことのない大きな横揺れ。

結界がはりなおされて、ハッピーエンドで終わるのだけど、仕事柄・・というところもあり、私にはどうしても気になってしまった。

エンドロールの背後にうっすらと見えた数々の煙柱。

揺れがない前提で建てられた都市、一時的に破れた結界に乗じてなだれ込む魔物の数々。


これ、大丈夫じゃないよね。。?

もしかしたら、乙女ゲームと同じ世界では無いかもしれないけど、もし同じだったら?

大きな被害が出た場合、最初に舞台から消えるのはモブキャラだ。

そう、私はモブキャラ。


ということで、今の私は「結界が破られてしまうことが回避できないなら、破れても持ちこたえられる建物にしよう!持ちこたえられる建物の基準を制定しよう!」をテーマに日々生きている。

建築物のモダン化(美観の向上)という言い訳を使い、耐震性を強化しようと、あちらこちらの既存建物を補強するブレースや鉄骨を入れまくった。

揺れに伴う水害対策としては、ダムの建設や貯水施設の増設、防波堤の強化も推進してきた。

また、建築設計のギルドに働きかけて、新しい建物の梁や柱、スラブ(床)の断面を大きくするよう基準を制定し、その考え方が浸透するように根拠や算出方法を教える活動もしている。

そして、最後に結界近くの防衛施設の強化も推進した。そのままの言葉で推進すると、笑い飛ばされてしまいそうだったので、辺境地域交易の活発化と、輸送ルートの多様化に貢献する運河の建設プランと称して提案した。

運河、、別名、、水堀。。。


誤解なきよう補足しておくと、私はモブの小娘なのでたいした力はない。

ただラッキーなことにお父様が文系の高官だったため、彼経由で働きかけた。

モブなのに変に注目を集めて、学園で目をつけられても困るしね。


そんなこんなで、毎日忙しくしていたら運命の日が次々にやってきた。

ヒロインの入学。

キャラクターたちとの出会い。

ぶつかりあう悪役令嬢とヒロイン。


次世代の様子をみて、未来を憂う世論。

格差社会が加速し、食糧問題が顕著になりつつあるという不穏な情勢。

それを象徴するかのように、ある衝撃的な提案をする新聞記事が出た。

パニックに陥る民衆。

炊き出しなどを通じて民衆との関わりを深めていくヒロイン。

彼女を助ける男性キャラクターたち。


そして、結界の崩壊。

はりなおすヒロインと男性陣。

(あれ?男性キャラって一人だけ選ばなきゃいけないんじゃないの?キャラ全員選べるんだ?)

平和が再度訪れ、結局ヒロインは誰とも結ばれなかった。


ヒロインの選択による影響か、決壊崩壊に向けて暗躍した犯人が王族の一人だったからなのか、不穏な情勢やこれまでの政治に対する不満が爆発したのか。

その後、この国は王権政治から立憲君主制へと大きく舵を切っていった。


そして、、肝心の決壊崩壊の被害について。

予算的な問題や説得力不足もあり、私が提案した設計や作戦がすべて行われたわけではなかった。

けれど、被害は最小限に抑えることができた。

揺れによる建物の全崩壊は免れ、倒壊事故による犠牲者は、いなかった。

本当に、、よかった。。

魔物の侵入も、水堀、、、いや、運河が足止めとなり、軍が対応できるようになるまでの時間稼ぎが出来たことで、被害を最小限にすることができた。


ちなみに犯人が結界崩壊に向けて暴走した理由は、将来への不安だった。

解決策の見えない食糧問題にとらわれ、いつしか人口を減らせば良いと考えるようになってしまったそうだ。

民衆パニックの発端となった新聞記事を書いたのも、この犯人だったそうだ。


犯人の心配をよそに食糧問題は、おおむね解決された。

運河の建築によって大幅にフードロスが改善され、運河の付近に浄水場が建設されたことで、稲のような食物も作ることができるようになったのだ。

そんな経緯もあり、運河建設プロジェクトの旗振り役だった建築設計ギルドは表彰された。


そして私は、結界崩壊時に一掃されることを無事回避!!

その後、なぜか宰相の次男に見初められ、結婚することになった。


「ある時、僕は建築設計ギルドに出入りする君を見た。女性が入るのは珍しいから、とても目立っていたんだ。建築の現場は砂埃まみれだし、肉体労働をする男性ばかりの場所だ。貴族の若い女性に刺激が強いのではないか、君の安全がなんとなく心配で、その日は物陰からこっそり見守っていた。

それ以来、僕は君の姿を目で追うようになり、ある日、君が様々な活動をしていることに気づいたんだ。なぜ君があんなに必死だったのかは分からなかったけど、僕は力になりたくて、学生時代は頭を突き合せたり、一緒に仕事をしたこともあったよね。

そして、あの結界が崩壊した『再生の日』。僕は君のこれまでの行動の真意に気づいたんだ。僕だけじゃない。上の世代の者たちも、あの日以来、君に一目置いている。

つまり、その、僕が言いたいのは、僕はあなたの知恵や行動のすべてを理解することは出来ないかもしれない。だけど、これからは誰よりも近い場所で、あなたに寄り添っていきたいのです。だから、その、平和を願うあなたが描く未来を、僕も一緒に実現していきたいのです。」

そういって、三角形の宝石がついた指輪が入った箱を開けた。


三角形は、前の世界では建築士会のマークだった。以前の私を忘れないよう、自分の目的を忘れぬように、そんな思いを込めて、私はその形のネックレスをオーダーメイドして、常に身に着けていた。

彼は、私にとってネックレスが大事なもので、三角形のマークも私にとって特別なものだと知っていたのだ。

彼は、その指輪は婚約指輪としてではなく、彼のお気持ち表明のプレゼントのつもりだったらしいが、私はすごく気に入ってしまい、婚約指輪として今でも毎日着けている。


現在は、かわいい子供にも恵まれ、建築設計ギルドの一員として働いている。

私はモブキャラなので、基本的には事務作業を担っているが、手が空いたら設計もさせてもらっている。

そのうち、私が設計した建物を建てられたら、と願っている。


きっと、私が違う人生の記憶を持っていることは誰も気づいていない。

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