第63話: 実技試験2 最初の挑戦者たち
ドームの中央で輝きを放つ模擬モンスター。その圧倒的な存在感に、多くの挑戦者たちは思わず息を飲んでいた。準備フェーズを終え、最初の挑戦者たちが前に進み出る。彼らは自信に満ちた表情を浮かべ、それぞれが用意したスキルや武器を構えていた。
アランが穏やかな声で告げる。「最初の挑戦者たち、準備はよろしいですか?」
「はい!」
その声と共に、模擬モンスターの赤い瞳が再び輝き、試験の幕が開けた。
最初の挑戦者たちは、石碑に刻まれたヒントに基づき作戦を立てていた。だが、その読み解きは決して正確なものではなかった。
「最初の三撃で鎧を砕く、と書いてあったよな?」
「ああ、だから一斉に攻撃を加えればいいんだろう!」
彼らは全員でモンスターの正面に立ち、一斉攻撃を仕掛けた。剣や魔法が容赦なくモンスターの硬質な外殻に叩き込まれる。だが、モンスターはほとんど怯む様子もなく、その巨体を揺らして爪を振り上げた。
「なんだ、全然効いてないぞ!」
「まさか、もっと強い一撃が必要なのか?」
その時、モンスターが反撃を始めた。鋭い爪が一閃し、挑戦者たちの1人が吹き飛ばされる。すぐに2人目も、モンスターの尻尾の一撃を受けて地面に倒れ込んだ。
遠くからその様子を見ていたユウトは眉をひそめる。「…あれ、うまくいってないな。」
リナが腕を組みながら分析する。「多分だけど、攻撃の種類を変えるとか、何か条件があるんじゃない?」
挑戦者たちは焦り始めていた。石碑のヒントに基づいて「三度の衝撃」と解釈した攻撃は、実際には「三種類の異なる属性の攻撃を当てる」という意味だったのだ。だが、そのことに気づける者は誰もいなかった。
「もう一回だ!次はもっと強く叩き込むぞ!」
挑戦者たちは無計画にスキルを繰り出し続けたが、モンスターの鎧は微動だにしない。逆に、時間だけが無情にも過ぎていった。
モンスターの赤い目が一層輝きを増し、行動パターンが変化した。爪を振り回し、尻尾で薙ぎ払い、次々に挑戦者たちを追い詰めていく。
「ダメだ、攻撃が全然通らない!」
「このままだと時間切れになるぞ!」
彼らは次第に混乱し、連携も取れなくなっていった。そして、制限時間が近づいた頃、アランが落ち着いた声で告げた。「時間切れです。最初の挑戦者たちはここまで。」
模擬モンスターの動きが止まり、その場に静寂が訪れる。挑戦者たちは肩を落としながら退場し、次の挑戦者たちに期待を託した。
遠くからその一部始終を見守っていたユウトたちは、挑戦者たちの戦いから多くのことを学んでいた。
「…やっぱり石碑のヒントをもっと深く解読する必要があるね。」リナが冷静に指摘する。
フィンが腕を組みながら補足する。「ヒントを読み違えると、どんなに力を尽くしても無駄になる。さっきの連中、焦りすぎてたな。」
「最初の攻撃が効かないってわかった時点で、戦術を切り替えるべきだった。」ユウトは小さく息を吐きながら言った。「でも、モンスターの反撃があんなに強いと、冷静さを失うのも無理はない。」
「じゃあ、次はどうする?」リナが問いかける。
ユウトは一瞬考え込み、やがて微笑んだ。「まず、石碑をもう一度調べて、モンスターの行動パターンをもっと細かく把握しよう。それから、全員でスキルを連携させる方法を考える。」
挑戦者たちの失敗は、ユウトたちにとって貴重な教訓となった。
彼らは石碑に刻まれたヒントを改めて分析し、どのスキルをどう使えばモンスターの行動を封じ込められるか、議論を重ねた。
「絶対に成功させる。」ユウトの目には強い意志が宿っていた。
次の挑戦者として立ち上がる時が近づいていた。緊張感の中に高まる期待感が漂い、試験の本番がいよいよ本格化しようとしていた。




