第58話: アルゴリズムの改善
レオンとフィンは、前回の実験結果を振り返りながら、迷宮の地図をテーブルに広げていた。ドローンを使った探索は一部成功したものの、効率的とは言えなかった。
「僕たちの方法だと、どうしても時間がかかりすぎるね。」フィンがため息をつく。
「そうだな。行き止まりや無駄な道が多すぎて、探索が非効率になってしまった。」レオンも同意する。
アランが口を開いた。「もう一歩進んだ方法を考えてみようか?迷宮をもっとシステマチックに捉えるんだ。」
「どういうこと?」レオンが首をかしげる。
「迷宮を一つのネットワークとして考えるんだよ。」アランは地図を指しながら説明を始めた。「各部屋や通路の交差点を点とし、それらをつなぐ道を線として捉える。つまり、迷宮全体を点と線で構成された構造として見るんだ。」
フィンは目を輝かせた。「それって、まるでネットワークのようだね。そうすれば、点と点の間の最短経路を計算できるかもしれない。」
「その通り。」アランは頷いた。「この方法なら、ゴールまでの最も効率的な道を見つけることができるはずだ。」
レオンは興味深そうに地図を見つめた。「でも、どうやってその最短経路を見つけるの?」
アランは微笑みながら説明を続けた。「まず、スタート地点から各点までの移動コストを計算するんだ。移動コストは、道の長さやモンスターの出現率などを考慮して設定する。次に、コストが最も小さい道を選んで進んでいく。これを繰り返すことで、ゴールまでの最短経路が見つかるはずだ。」
フィンは感心した様子で言った。「なるほど!移動コストを計算して、最も効率的な道を選ぶんだね。」
レオンも納得したようだが、疑問を投げかけた。「でも、それって全ての点を確認しないといけないんじゃないの?計算量が多くなって、時間がかかるんじゃないかな。」
アランはうなずいた。「確かに、全ての点を確認する方法だと時間がかかる。でも、ここで工夫ができるんだ。」
「工夫?」フィンが問いかける。
「そう。スタート地点からゴールまでの推定距離を使って、探索する範囲を絞り込むんだ。つまり、ゴールに近づく可能性が高い道を優先的に探索する。これにより、無駄な計算を減らせる。」
レオンは感心した表情で言った。「なるほど!推定距離を使えば、効率的に最短経路を見つけられるかもしれない。」
フィンも同意した。「じゃあ、さっそくその方法を試してみよう!」
そう言ってフィンはドローンのプログラムを書き換え始めた。新しいアルゴリズムでは、各点の移動コストとゴールまでの推定距離を考慮して、最も効率的な道を選ぶように設定した。
「これで準備完了だ。」フィンが言うと、ドローンが再び迷宮の入り口に向かって飛び立った。
ドローンはスタート地点から各点への移動コストを計算しながら、ゴールに向かって進んでいく。途中で複数の分岐点が現れるが、移動コストと推定距離を基に最適な道を選択している。
「見て!ドローンが無駄なく進んでいる!」フィンが興奮気味に声を上げた。
「本当だ。前回のように行き止まりに当たることもなく、スムーズに進んでいるね。」レオンも嬉しそうだ。
ドローンは順調に進み、予想以上に早くゴール地点に到達した。
「やった!成功だ!」フィンが喜びの声を上げる。
アランも微笑んでいる。「うまくいったようだね。移動コストと推定距離を使ったおかげで、効率的に最短経路を見つけることができた。」
レオンは感謝の意を込めて言った。「アラン先生、ありがとうございます。おかげで新しい方法を見つけることができました。」
「いや、これは君たち2人の取り組みの成果さ。」アランは答えた。
フィンはふと考え込んだ。「でも、これで完璧ってわけじゃないよね。もっと改善できる点はあるんじゃないかな?」
アランはうなずいた。「その通りだね。例えば、モンスターの動きや新たな障害物が現れた場合、それらをリアルタイムで反映させる必要がある。」
「たしかに。動的な状況にも対応できるように、アルゴリズムを改良する必要があるね。」レオンも同意する。
「じゃあ、次はそれを目標にしようか。」フィンが意気込んで言った。
「そうだね。引き続き改良を重ねて、より完璧なアルゴリズムを目指そう。」アランも前向きだ。
3人は再び頭を突き合わせ、新たな課題に取り組み始めた。迷宮の攻略はまだ続くが、彼らの絆と知識は確実に深まっていた。
『ダイクストラ法』と『A*アルゴリズム』は、最短経路問題を解くための有名なアルゴリズムです。どちらもグラフ構造を使って、スタート地点からゴールまでの最短経路を見つけるために用いられますが、計算方法にいくつか違いがあります。
1. ダイクストラ法(Dijkstra's Algorithm)
目的: スタート地点から各地点までの最短距離を求めるアルゴリズム。
使用シーン: 最短経路を求める場合(例えば、道順やネットワーク経路)。
仕組み:
グラフの各辺に「重み(コスト)」がついている場合に使う。
スタート地点から他のすべての地点までの最短経路を求める。
スタート地点から行ける地点の中で、コストが最も低い経路を優先的に探索していく。
ゴール地点までの最短経路が見つかるまで続ける。
特徴:
コストが負でない場合に使える。
全体的にゴールまでの「コスト」が最小のものを常に選ぶため、効率的。
優先度付きキューを使って効率的に探索する。
簡単な例: 都市Aから都市B、C、Dへの最短経路を見つける時、各都市間の距離(重み)が違うとすると、ダイクストラ法はAからB、C、Dの距離を比較して、最もコストが小さい道を優先的に探索していく。
2. Aアルゴリズム(A Algorithm)
目的: スタート地点からゴールまでの最短経路を、効率的に見つけるためのアルゴリズム。
使用シーン: 最短経路だけでなく、探索の効率化が必要な場合(例えば、ゲームのキャラクターが迷路を通る際など)。
仕組み:
ダイクストラ法に似ているが、スタート地点からのコストだけでなく、「ゴールまでの推定距離」も考慮に入れる。
探索する際に、今どれくらいゴールに近づいているかの「見積もり(ヒューリスティック)」を計算に使う。
スタート地点からのコストに、ゴールまでの見積もり距離を加えた「評価値」を計算し、その評価値が最も低い経路を優先して探索する。
特徴:
「ヒューリスティック関数(ゴールまでの見積もり距離)」を使うため、効率的な探索ができる。
具体的には、最短経路を探しながらも、常にゴールに向かって進んでいるという感覚で進む。
より複雑な経路探索やリアルタイムでの経路探索に使われる。
簡単な例: 迷路のスタート地点からゴール地点までの最短経路を探す際に、A*アルゴリズムはスタート地点からの距離だけでなく、ゴールまでの距離も「推定」して、無駄な道を避けて最適なルートを探す。




