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第46話: 王の謁見

大会から数ヶ月、アランは学校での臨時的任用期間を終えて教会での生活に戻ってきていた。授業改善や教材研究、授業評価や年間指導案。Ranモードによって大きな変化を余儀なくされたカリキュラムの改訂は小中高から大学まで全ての学校で行われることになる。この変動の中心となったアランからアルゴリズムを学ぶため人が集まり、教会は対応に追われている。アランは教会に勤める職員から有志を募り、知識を提供する方法について考えていた。


Ranモードの活用が広まることによって、条件や環境の変化によってアルゴリズムが正常に動作しないという相談がアランに届くようになった。人々の行動をプログラムしてしまうため場合によってはRanモード中のエラーは深刻な問題となる。正常の生活ができなくなってしまうことをインシデントと言いアランは既知の誤りを共有することで対応に努めていた。


そんなある日、教会の前に王家の家紋がついた馬車が停車した。突然の王宮からの呼び出しにアランは驚きを隠せなかったが、すぐに馬車に乗り込み、王宮へと向かった。


王宮に到着すると、重々しい空気が漂っていた。案内された大広間の中央には、剣を構えたままじっと動かない王子の姿があった。まるで時間が止まってしまったかのように、王子は一切の動作を停止していた。周囲の人々は困惑し、誰も手を出せないでいる。


「こちらが…王子様ですか?」アランは王の前に跪き、尋ねた。


「そうだ。突然、王子がこのような状態に陥ってしまったのだ。何が起きたのか、誰にも分からない。我々も手を尽くしたが、解決の糸口が見つからないのだ。」王の声には焦りが滲んでいた。


アランは王子の姿をじっと見つめ、すぐに彼がRanモードに閉じ込められていることを悟った。何らかの原因で、王子が無限ループに陥り、現実世界への復帰ができなくなっている。


「どうやら、王子がRanモードで実行していたプログラムが無限ループに陥っているようです。原因を探ってみます。」アランはそう言うと、王子のRanモードにアクセスし、プログラムコードを調べ始めた。


すると、while(x > 0) { x++; }というコードが記述されているのを発見した。アランは即座に問題の原因がここにあることを理解した。このコードでは、xが増加し続けるため、ループ条件であるx > 0が永遠に真となり、ループが終わらない状態が続いているのだ。


「これは…無限ループだ。しかも、終了条件が存在しないため、王子はこの中に閉じ込められてしまったのか…。」アランは深く息を吐き、王子を解放する方法を考えた。


アランは王に向き直り、静かに説明を始めた。「王子のプログラムは、無限ループに陥っています。ループ条件が正しく記述されておらず、while(x > 0)のままx++と書かれているため、ループが終了しないのです。」


王は驚いた表情を見せたが、すぐにアランに一任することを決断した。「アラン、頼む。王子を救ってくれ。」


アランはうなずき、集中してスキルを発動させた。彼は王子のプログラムにアクセスし、問題のwhileループに介入することにした。ブレイクのスキルを使用し、無限ループを強制的に終了させることで、王子を解放することを試みた。


「break…!」アランは心の中で呟きながら、プログラムに割り込みをかけ、無限ループを停止させた。その瞬間、王子の身体が僅かに揺れ、徐々に動きが戻ってきた。


「…うっ…」王子は目を覚まし、周囲を見渡して困惑した様子を見せた。


アランは王子に優しく声をかけた。「ホワイル王子、もしよろしければ、私の教会でプログラミングを学びませんか?こうした事態を防ぐためにも、プログラムの基本を理解することが重要です。」


王子はまだ混乱した表情を浮かべていたが、アランの言葉に耳を傾け、静かにうなずいた。王と周囲の人々も、アランに深く感謝し、王子を救ったことを讃えた。


王宮での一連の出来事を通じて、アランはこの世界におけるプログラミングの重要性と、それがもたらす影響の大きさを改めて実感した。王子が無限ループに陥った問題は、一つのインシデントとして解決されたが、同時にこれからの世界において、プログラミング教育の必要性がますます高まることを示していた。


今回のエピソードでは、「while」文と「無限ループ」、「インシデント」に焦点を当ててみました。while文は、特定の条件が「true」である限りループを繰り返す便利なツールですが、その条件がいつまでも「true」のままであると、プログラムは永遠に終了しません。

インシデントはまず「検知」され、影響範囲を確認しつつ「暫定対応」されます。その後、根本原因を分析し、修正を適用して「再発防止策」を講じます。最終的には検証と報告を行い、今後の防止策を教育・啓発します。

続きも楽しんでいただければ幸いです。よければ★★★★★の評価もぜひお願いいたします。

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