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第45話: ドローン開発


レオンとフィンが手を組んでドローンの開発に取り掛かるのは、大会が終わってからまもなくのことだった。レオンが森での戦いで得た無線通信技術の発展を踏まえ、フィンは彼の得意とするアーティファクトクリエイションと組み合わせることで、新たな挑戦に乗り出していた。


本体となるアーティファクトは四角い形をしており、角の四隅には風魔法を発動させる魔法石が埋め込まれている。その中心には、ジャイロセンサと加速度センサが取り付けられており、これらのデータをもとに本体中央の演算装置がドローンの姿勢を制御する。さらに、プログラムを格納するための主記憶装置が内蔵され、フィンはRanモードを利用してこれらのセンサから得られる情報を処理することを目指していた。


「これでうまくいくはずだ…」フィンが慎重に言いながら、アーティファクトを起動した。


ドローンは静かに浮上し、しばしの間空中で安定していた。しかし、次の瞬間、ドローンは突如として姿勢を崩し、壁に向かって急速に傾き始めた。そして、激しい音を立てて壁に激突し、床に落ちた。


「……」フィンは黙り込み、壊れたドローンを見つめる。


レオンは呆然とした表情でそれを見つめていたが、やがてフィンが口を開いた。


「まあ、でも、とりあえず浮いたね。」フィンが笑みを浮かべながら言った。


レオンも笑顔を返し、「うん、それが一歩だよ。」と答えた。


アーティファクトクリエイターと呼ばれるエンジニア職を目指しているフィンにとって、トライアンドエラーは日常の一部だ。彼は失敗を恐れず、次の改善点をすぐに見つけて、また新たな挑戦へと踏み出していく。


「とりあえず、次の目標は自立飛行ができることと、1kgの荷物を運べることかな。」フィンはそう言いながら、壊れたドローンの修理に取り掛かった。


レオンは彼の横で、先日の大会を振り返っていた。森の戦いで使用した多くのセンサやケーブルを回収するため、彼は試合の後に半日を費やして森を歩き回った。無線通信があれば、こんな手間は必要なかっただろう。無線通信の技術発展に期待を寄せるレオンは、次の戦いで無線をどのように活用できるかを考え続けていた。


「そういえば、この前話した無線通信の件なんだけど、電波の周波数をコイルやコンデンサの調整で変えることができたんだ。」レオンはふと思い出したように言った。


「それはすごいね。」フィンが返事をしながらも、手はドローンの修理を続けている。「低周波数帯域と高周波数帯域を使い分ければ、遮蔽物に対して強い電波を使うことや、大容量通信も可能になりそうだ。」


「うん。有線から卒業できそうで嬉しいよ。」レオンは笑顔で応じながらも、無線通信の未来について思考を巡らせていた。


彼は、有線通信には多くの問題があることを痛感していた。大会で使用した有線センサは、断線のリスクや、ケーブルを輪のようにまとめた際にコイルが発生し、発熱によって絶縁物が融解することもある。レオンはこれらの問題に対応するため、センサを単純な信号のやり取りに留めるよう工夫していたが、無線通信の技術が進展すれば、さらに複雑で高度な相互制御が可能になると期待していた。


「もしドローンが操作可能になって、大容量の画像データを送受信できるようになれば、カメラの映像での状況判断がもっと簡単になる。」レオンがそう言うと、フィンはふと手を止めて、深く考え込んだ。


「それって、まさに僕たちが目指していることじゃないか。ドローンが自立飛行できるようになれば、探索の幅が広がるし、荷物を運ぶこともできる。」フィンの目が輝いていた。「でも、そのためには姿勢制御をもっと安定させないといけないな。」


「うん、まずはそこだね。」レオンはフィンに同意し、次のテストに向けて準備を始めた。


彼らの試行錯誤は続く。技術的な挑戦と、それを乗り越えた先にある未来を描きながら、レオンとフィンはドローン開発に情熱を注いでいた。


レオンとフィンのドローン開発プロジェクトでは、ウォーターフォールモデルが用いられていた。ウォーターフォールモデルは、設計、実装、テスト、導入といった開発プロセスを段階的に進める手法であり、それぞれのフェーズが明確に区切られているのが特徴だ。


最初に、ドローンの設計段階でセンサの配置やプログラムの構造が見直された。次に、実装フェーズでは、設計に基づいてジャイロセンサや無線通信の機能を組み込む作業が進められた。その後、テストフェーズで実際にドローンを飛行させ、性能を検証。テストの結果に基づいて、再び設計と実装が繰り返され、少しずつ改良が加えられていく。

そして、最後の導入フェーズでは、ドローンが目標の性能を達成するための細かな調整が行われる。


一週間後、レオンとフィンは互いにアイディアを持ち寄り、再びドローンの開発テストに取り掛かった。姿勢制御の問題を解決するために、二人はジャイロセンサと加速度センサの配置やデータ処理の方法を見直すことにした。


「今回のテストでは、姿勢制御をもっと細かく調整するために、ジャイロセンサの感度を上げてみよう。」フィンが提案した。


「それに、加速度センサから得られるデータをもう少し詳細に分析してみる。風の影響やドローン自体の微細な振動も考慮に入れる必要があるからね。」レオンは図書館で得た資料を見ながら、改良点を挙げていった。


二人はそれぞれの役割を分担し、ドローンの設計を再構築していった。レオンは無線通信の改善に取り組み、フィンは演算装置と主記憶装置のプログラムを最適化した。センサからのデータがどのように処理されるべきか、そしてどのように飛行を安定させるかが焦点となっていた。


「無線通信の周波数調整がうまくいけば、これまでの問題は解決できると思うんだ。」レオンは、電波の周波数を低周波と高周波で切り替える仕組みを導入した。


「遮蔽物がある場合は低周波を使い、広範囲のデータを送るときは高周波に切り替える…なるほど、それなら安定して通信ができるね。」フィンはその設計を受け入れ、プログラムに組み込んだ。


一方で、姿勢制御の改善にはさらに細かい調整が必要だった。ドローンが浮上したときに起こるわずかな揺れも見逃さないように、ジャイロセンサと加速度センサのデータをリアルタイムで処理するようにプログラムを修正した。


「ドローンが浮かび上がったとき、空気の流れがどうなるかを予測して、そのデータを基に姿勢を調整するアルゴリズムを作ったんだ。」フィンは、新たに設計したプログラムをレオンに説明した。


「いいね。それならドローンが安定して浮上するはずだ。」レオンは期待に満ちた目でフィンを見つめた。


すべての準備が整い、二人は再びドローンをテストすることにした。フィンがアーティファクトをRanモードに切り替えると、ドローンは前回よりもさらにスムーズに浮上した。最初は少し揺れたものの、すぐに安定し、空中に静止することに成功した。


「成功だ…!」レオンが歓喜の声を上げた。


「やったね!」フィンも嬉しそうに笑顔を浮かべた。


しかし、喜びも束の間、ドローンは再び少しずつ姿勢を崩し始めた。フィンはすぐに制御プログラムを修正し、なんとかドローンを安定させようと試みたが、再度の衝突を避けるためにドローンを緊急着陸させることにした。


「まだ微調整が必要だな…」フィンは苦笑しながらドローンを見つめた。


「でも、着実に進歩しているよ。前回よりもはるかに安定してた。」レオンはフィンを励ますように言った。


その後、二人は細かな調整を続けながら、ドローンの姿勢制御を完全にするための方法を模索した。センサからのデータ処理に加えて、フィンはドローンのプロペラの回転速度を個別に制御するプログラムを導入した。これにより、ドローンが偏った姿勢になった場合でも、迅速にバランスを取ることができるようになった。


「これで、プロペラの制御がもっと精密になるはずだ。」フィンは新たに書き換えたプログラムを確認しながら言った。


「うん、それならもう少し大きな荷物も運べるようになるかもしれないね。」レオンも納得した表情で頷いた。


フィンとレオンは、ドローンが1kgの荷物を運べるように調整を続け、ついにその目標を達成した。試行錯誤を繰り返し、彼らは最初の設計から大幅に改良を加えていった。


「これで、自立飛行と荷物運搬の両方ができるようになった。」フィンは達成感に満ちた声で言った。


「でも、まだ完璧とは言えないな。もっと大きな荷物を運んだり、長距離を飛行できるようにするためには、さらなる改良が必要だ。」レオンも現実的な課題を見据えていた。


「そうだね。でも、ここまで来たんだ。この調子でどんどん改良を重ねていこう。」フィンも前向きに応じた。


二人はさらに多くの課題に取り組み、ドローンの機能を向上させるための新たなアイデアを模索し続けた。無線通信の精度向上、姿勢制御のさらなる安定化、そしてドローンの耐久性を高めるための素材選定。彼らの挑戦はまだ始まったばかりだったが、着実に進展していることに喜びを感じていた。


「これからも、たくさんの壁にぶつかるだろうけど、それがエンジニアの醍醐味だよね。」フィンは楽しそうに言った。


「そうだね、失敗から学ぶことも多いし、何より挑戦することが楽しい。」レオンも笑顔を返した。


二人は新たな目標に向けて、再びドローンの開発に取り掛かる。これからどれだけの時間がかかるかは分からないが、二人にとってその時間はかけがえのないものであり、何よりも価値のある経験となった。


今回は、「ドローン開発」に挑戦するレオンとフィンの物語でした!「ジャイロセンサ」「加速度センサ」「無線通信」といった技術要素を取り入れながら、二人が試行錯誤する姿を描いてみました。特に、開発プロセスにおける「ウォーターフォールモデル」の活用は、彼らが計画的に進める様子を強調できたのではないかと思います。


まだまだ試行錯誤の段階ですが、少しずつ成長していく彼らの姿を楽しんでいただけたら嬉しいです。次回も、彼らの新たな挑戦に期待してくださいね!


もし今回の話が面白かったと思っていただけたら、ぜひ「★★★★★」の評価をお願いします。応援してくださる皆さんの声が、次回作への大きな力になります!

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