表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/67

第44話: 大会のふりかえりと反省


大会が終わり、校内は普段の静けさを取り戻していた。だが、出場した生徒たちの心にはまだ興奮が残り、彼らの話題は自然と大会の出来事へと向かっていた。


アランは日没に照らされた教室へと足を運んだ。今日は大会に出場した3人、ユウト、リナ、そしてレオンと共に振り返りの時間を持つことになっていた。彼ら3人がどのように感じ、何を学んだのかを知ることは、今後の成長にもつながる重要なステップだ。


教室に入ると、ユウトたちは既に集まっていた。リナは机の上に広げたタブレットにペンを走らせており、レオンは窓際に立って空を飛ぶ鳥を眺めている。ユウトは静かにアランの姿を見て、少しだけ頷いてみせた。


「さて、今日は大会のふりかえりをしようと思います。みんな、お疲れさまでした。」アランは温かい笑みを浮かべて言った。


「お疲れさまでした!」リナが元気よく答える。レオンもユウトも、それに続いて静かに挨拶を返した。


「まずは、個々の試合について振り返ってみようか。」アランは教卓に立ち、端末の画面を共有した。

「リナ、君からどうかな?」


リナは少し恥ずかしそうにしながらも、自分の戦いについて語り始めた。「最初はうまくいったんですけど、アリスとの戦いで、彼女がデータベースを上手く使って詠唱を組み立ててきて…かなり焦りました。でも、連結リストを使ったことが最終的に勝敗を分けたと思います。」


アランは頷きながらリナの話を聞いていた。「そうだね。リナは詠唱がワードを一部入れ替えするだけで、適切な魔法を選択することができていたね。データを格納するために配列を作るところまではアリスも同じだったと思う。でも新しい発想として、各セルにポインタというアドレス(番地)を割り当てて連結することを取り入れた。そうした応用力が勝利に繋がったんだと思う。今回の大会を通じて新たに学んだことや、今後の課題はあったかい?」


リナは少し考え込んでから答えた。「やっぱり、まだデータベースからの抽出方法が浅かったかなって。さっきレオンとも話したんですけど図書館のデータベースにアクセスするのは通信速度の問題もあるので、正確に抽出したテーブルを用紙することでもっと効率よく詠唱を作れる方法があるんじゃないかって…試合後にSQLというプログラム言語がRanモード用スキルとして解放されたので試してみたいです。」


「それはいい考えだね。今はまだ杖にワード数の制限があるけれど、中等部に上がればワード数の上限が解放される。その時にデータベースの活用練度が上がっていれば長文詠唱の中級魔法でも、効率的に唱えることができるはずだよ。新しい挑戦が楽しみだね。」アランはリナの向上心に感心したように微笑んだ。


続いて、レオンが口を開いた。「俺の戦いは、索敵方法にも違いはあったけどそれぞれの特徴を活かした戦いができていたと思う。勝てたのは通信方法の問題を事前に理解していて解決できたかの違いだったかな。今回はセンサの動作を簡素にした上に有線接続にしたけど、無線通信ほどの事由は無かったし。フィンにラグが発生していなければ負けていたのは俺だと思う…。フィンとは無線通信についての研究とジャイロセンサを使ったドローンという飛行型アーティファクトの開発をしたいと話しています。」


「レオン、君は索敵能力をうまく活かしていた。だけど、通信環境の問題は大きかったみたいだね。雷魔法を用いた通信方法は電波と呼ばれる波を利用したものだとされている。実は私から発生している声が君に届いているのは音波という波なんだ。音には高音(高い周波数)と低音(低い周波数)が存在している。60Hzの周波数と言えば1秒間に60回の振幅があるんだ。」アランは彼の目を見て話す。


「うーん、電波にも高い周波数と低い周波数があるということですか?高い周波数で通信をすればデータの送受信が速くなりそうですね!」レオンは真剣な表情で答えた。


「それに加えて低い周波数には物質を透過しやすいという特徴があるんだ。低音が壁を通過してよく聞こえるのはそのためなんだよ。ドローンの開発は索敵の用途だけでなく私たちの生活環境を変えてしまう可能性があるよ。戦術や技術的な改善だけでなく、人々の生活を良くする視点も持つことは次のステップへ繋がるはずだよ。」アランはレオンの努力に感心しつつ、次に目を向けたのはユウトだった。


「ユウト、君はどうだった?」アランが尋ねると、ユウトは少しだけ間を置いて答えた。


「僕は…やっぱり、最後の『break』の発動が、自分にとって大きな変化だったと思います。だけど、あれはアーティファクトから割込ませて発動させたもので、リスクも大きかった。もう少し…準備が必要だったのかなって。」


アランはユウトの言葉に深く頷いた。「そうだね、スキルの強制終了というのは、この世界では私たちの体の機能を一時的にせよ遮断してしまう。リスクと隣り合わせの技術みたいだね。予めbreakをプログラム内に書き込んでおくことで適切なアルゴリズムとして実行できるはずだよ。新しい命令はこれからも身につける機会があると思う。それをどう扱うか、今後の課題だと思う。今回は危険な行動だったけれど、それを乗り越えた君の成長も感じるよ。」


ユウトは少しだけ笑顔を見せた。「ありがとう、アラン先生。これからも頑張ります。」


アランは教室を見渡し、3人の顔を一つ一つ見つめた。「みんな、それぞれが大会を通じて多くのことを学び、成長したね。そして、今後も課題は尽きないと思う。だけど、その課題こそが成長の糧になる。これからも、一緒に頑張っていこう。」


3人は同時に頷き、アランの言葉に耳を傾けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ