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第43話: ユウト対マックス 3


「break」はプログラムの中で使われる命令で、実行中のループや条件分岐を強制的に終了させるためのものだ。今、ユウトの前に提示されたのは、この命令を使って現在実行中のスキルを強制的に中断し、新たな行動に移ることができるという可能性だった。


(これを使えば…)


ユウトは瞬時に理解した。これを利用してマックスの攻撃パターンを崩し、自分の反撃に転じることができると。


ユウトとマックスは、お互いが限界に達していることを理解していた。次の一撃で、どちらかが確実にリタイヤする。緊張感が高まる中、2人は無言でRanモードに切り替え、最後の攻撃に備えた。

マックスの目が鋭く輝き、彼の右手が高く振り上げられた。次の瞬間、マックスの手刀が勢いよく振り下ろされる。ユウトはその一撃をパリイするため、即座に右手手刀の分岐を通す。ユウトのプログラムは、マックスの動きを正確に予測し、ウェイトに対応する分岐も完璧に通過した。パリィが成功し、マックスの攻撃は見事に防がれた。

「ここまでは。問題はこの先…!」

ユウトはアルゴリズム通り反撃スキルに移行しようとした。その瞬間、マックスがランダムでの反撃を試みる。確率は50%。ユウトはその確率にすべてを賭けていたが、運悪く、マックスのスキルが見事に噛み合い、ユウトの攻撃を逸らした。

ユウトの攻撃は空を切った。アルゴリズムでは3連続攻撃であるため、無人の空間にあと2回のスキルを打ち込んでしまう。その隙を狙うかのように、マックスのアルゴリズムが進む。当たることが確定している反撃はをユウトを仕留める最後の一撃だった。


最初の一撃を空振りした瞬間、ユウトはゴーグル型アーティファクトからbreakをRanモードに割り込ませる。その瞬間、彼の身体が一瞬硬直し、実行中のプログラムが強制的に終了した。


ユウトの視界に光がはじけ意識が遠くなっていく。脳内に現れるエラーメッセージとブルースクリーン。焦る気持ちを持ちながら視界が復帰するのを待つ。


次の瞬間視界が戻りマックスの拳が目の前に迫っていた。

「ここだ…!」


ユウトはマックスの動きに合わせて新たなプログラムを実行した。彼の身体はその指示に従い、完璧に反応した。強制終了させたスキルに代わり、カウンター攻撃のスキルを発動させたのだ。

マックスは、ユウトの動きに一瞬の戸惑いを見せたが、その隙をユウトは見逃さなかった。彼は素早くマックスの懐に飛び込み、全力で拳を突き出した。ユウトの拳がマックスの腹部に深く入り込み、衝撃が体中に広がった。


「ぐっ…!」


マックスは衝撃に耐えようと踏ん張ったが、その体は大きく揺れた。そして、彼の体力ゲージがリタイアを示すラインを超え、試合終了の合図が表示される。

ユウトは彼は息を切らしながらも、マックスに向かって笑顔を浮かべた。


「勝った…」


その言葉を口にした瞬間、ユウトは膝から崩れ落ちた。全身の力が抜け、床に手をついて肩で息をした。スキルの強制終了と新たなプログラムの実行による肉体的、精神的な負荷は想像以上だった。だが、その負荷を乗り越えた先にあったのは、確かな勝利だった。マックスは、ゆっくりと立ち上がり、ユウトに近づいた。彼の顔には悔しさが滲んでいたが、それ以上にユウトに対する尊敬の念が感じられた。


「ユウト、本当に強かった…」


ユウトは微笑みながらマックスの手を握り返した。


「マックス、君が相手だったからこそ、ここまでやれたんだ。ありがとう。」


2人は握手を交わし、共に戦ったことを讃え合った。


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