第39話: リナ対アリス 2
リナとアリスの戦いは、物理的な力ではなく、データベースを駆使した詠唱技術の応酬であった。観客席に座る生徒たちは、ただ魔法がぶつかり合うだけではない、まさにプログラムの処理速度と柔軟性が試されるこの戦いに目を奪われていた。
アリスは、大人しく控えめな性格のため普段は目立つことはないが、図書委員として地道にデータベースを活用してきた。その知識と経験が彼女の魔法の源であり、リナとの対戦においてもその力を発揮しようとしていた。しかし、アリスは配列という構造に依存しており、その限界に気づき始めていた。
リナは強気で、常に自信に満ち溢れていた。彼女は連結リストという柔軟なデータ構造を使いこなし、詠唱の速度と柔軟性でアリスを圧倒しようとしていた。リナのデータベースには膨大な量のワードが格納されており、それを連結リストで管理することで、彼女は詠唱の順序を戦闘中でも自由に組み替えることができた。
戦闘が始まってから数分が経過し、両者は既に何度も魔法の応酬を繰り返していた。リナは連結リストを駆使して次々とワードを呼び出し、アリスに対して強力な攻撃を繰り出していた。例えば、リナが「火炎」「広範囲」「高威力」というワードを連結リストから呼び出し、瞬時に魔法を発動させる場面では、そのスピードと柔軟性が際立っていた。リナは戦闘中にも詠唱の順序を変え、敵の防御に合わせて攻撃の内容を変更することができた。
「これでどうかな、アリス?」リナは自信満々に問いかけ、炎の魔法を放った。炎は広範囲に広がり、アリスに向かって一直線に襲いかかった。
アリスはすぐに防御の魔法を発動させたが、彼女の詠唱は配列に依存していたため、一度決めた順序を戦闘中に変更することができなかった。アリスの防御は強力だったが、リナの攻撃を完全に防ぐには至らなかった。
「くっ…!」アリスは歯を食いしばりながら防御を試みたが、リナの連続攻撃に次第に追い詰められていった。
リナはその隙を見逃さず、連結リストを操作して「強風」というワードを追加し、炎をさらに強化してアリスの防御を突き崩した。アリスは完全に防ぐことができず、その衝撃に倒れかけた。
「アリス、このままじゃ終わらないよね?」リナは挑発的に微笑んだ。
アリスは心の中で焦りを感じていた。配列というデータ構造に依存している限り、リナのような柔軟な対応は難しい。しかし、彼女は諦めなかった。アリスは最後の力を振り絞り、あらかじめテキスト化してあった「反撃の炎」を発動させた。
しかし、リナはすぐに連結リストを操作し、詠唱を変更して攻撃を受け流した。アリスの攻撃「反撃の炎」は、Ranモード発展前からある魔法の教科書にも記載されている魔法である。リナの予測の範囲内であったため、リナの連結リストによる柔軟な対応が勝利を近づける。
リナが有利に戦いを進めている決定的な要因は、データベースの構造の違いにあった。連結リストはデータの挿入や削除が容易で、戦闘中に状況に応じて詠唱を変えることができる。この柔軟性がリナに圧倒的な優位性を与えた。
一方、アリスが使っていた配列は、データへのアクセスは速いが、挿入や削除が難しく、固定された詠唱の順序を変更することができない。そのため、戦闘中に柔軟に対応することができず、リナの連続攻撃に次第に追い詰められていった。
リナはさらに連結リストの利点を活かし、詠唱のスピードを上げ、攻撃の間隔を短くしてアリスに隙を与えなかった。これにより、アリスは防御のタイミングを見失い、リナの攻撃をまともに受けることになった。
「これで終わりにしよう、アリス。」防戦一方となったアリスに向けてリナは最後の詠唱を始めた。彼女は連結リストから「青い炎」「赤い炎」「強力」「一撃」というワードを呼び出し、詠唱を完成させた。
アリスは最後の力を振り絞って防御を試みたが、リナの詠唱の速さと攻撃の威力には敵わなかった。青と赤の火柱が立ち上がりアリスを包み込んだ。




