第三章: 初めてのダンジョン
夏休みのある晴れた日、アランとユウトは、いよいよダンジョン探検に出発することになった。教会での準備が整い、必要な装備や道具も揃った。アランは教会のスタッフや地域の人々からの激励を受けながら、ユウトと共にダンジョンの入り口へと向かっていた。アランの心の中には、わずかな緊張と大きな期待が混ざり合っていた。
ダンジョンの入り口は、古びた石造りのアーチが神秘的な雰囲気を漂わせていた。その周囲には自然の苔が生い茂り、静寂に包まれていた。アランとユウトはそのアーチをくぐり、深い闇の中へと足を踏み入れた。
ダンジョンの内部には、暗く湿った空間が広がっており、古い石の壁には奇妙な模様が彫られていた。アランはランタンを掲げて周囲を照らしながら、ユウトに優しく声をかけた。
「大丈夫、ゆっくり進もう。」
ユウトは少し不安そうな顔をしていたが、アランの言葉に少しずつ勇気を取り戻していた。
「はい、先生。頑張ります。」
しばらく進むと、突然前方から小さなスライムが現れた。スライムはその柔らかい体を揺らしながら、二人に向かって近づいてきた。アランは冷静にスライムを観察し、「これがスライムか…」と呟いた。
「ユウト、スライムを倒すためにはまず落ち着いて行動しよう。僕が手本を見せるから、それを見て学んでね。」
アランはスライムに向かって歩み寄り、持っていた木の棒で一撃を加えると、スライムはあっさりと倒れた。アランはその倒し方をユウトに説明しながら、スライムの特徴や攻撃のポイントを教えた。
ユウトはスライムに対してぎこちない動きを見せていた。アランの助言を受けながらも、スライムに対する恐怖や不安が拭えず、何度挑戦してもスライムを倒すことができなかった。アランは彼の後ろで支えようとしながらも、ユウトの焦りと困惑を見て心配そうに見守っていた。
「どうしても倒せないよ…」
ユウトは汗をかきながら、苦しそうに呟いた。その言葉にアランは優しく声をかけた。
「大丈夫、ユウト。今日は初めての挑戦だし、うまくいかないこともあるよ。焦らず、少しずつ慣れていこう。」
宿題の写生を終えた後も、ダンジョンの中での戦いは続き、ユウトは何度もスライムと対峙しようとするが、その度にうまくいかずに時間が過ぎていった。アランはユウトの側でサポートしながら、少しでも自信を持てるようにと励まし続けたが、ユウトの手にはまだスライムを倒すためのスキルがしっかりと身についていなかった。
数時間が経ち、ダンジョンを後にすることになった。
「ごめんなさい、先生…」ユウトは申し訳なさそうに頭を下げた。
アランはその様子を見て微笑み、優しく肩を叩いた。
「大丈夫だよ、ユウト。今日は一日目だし、これから少しずつ経験を積んでいけばいい。諦めずに続けようね。」
二人はダンジョンを後にし、帰路についた。アランの心には悔しさと共に、次回の挑戦に向けた決意が芽生えていた。ユウトの成長を心から願う感情は異世界に転生する前と変わらないものであった。