第30話: クラス代表決定
草原型ダンジョンの戦闘が終わり、クラス代表決定戦もついに大詰めを迎えた。最後に残ったのはユウト、レオン、そしてリナの3人。彼らはクラス代表に決定し、ダンジョンの出口で待っているクラスメイトたちの歓声が聞こえてくる。
担任のスミスは3人を温かい笑顔で迎えた。
「よく頑張ったね、3人とも。本当に素晴らしい戦いだったよ。」とスミスは称賛の言葉をかけた。
しかし、3人の表情にはどこか満足しきれない様子があった。特にリナの顔には強い決意が浮かんでいる。
「私、最後まで戦いたい!」リナが急に訴え始めた。彼女の目は真剣で、その声には熱意が込められていた。
ユウトとレオンは一瞬戸惑ったが、すぐにリナの気持ちを理解した。彼女が本当に戦いを完結させたいと思っていることを感じ取ったのだ。二人は視線だけでコミュニケーションを取る。
ユウトが目をパチパチと瞬かせる。「(これってリナが勝たないと怒るやつだよね。)」
レオンがウインクで返す。「(そうだな。口聞いてくれなくなるやつだ。)」
リナの熱意は彼女が真面目な性格である。この代表決定戦が自身のの成長の貴重な機会と信じ、2人と戦うことで新たな発想や自分の弱さを見つけられると信じている。ユウトとレオンその性格をよく理解しているがために困惑している。彼女が口を聞いてくれなくなるのは彼女が彼女自身の足りなさを責め、それを2人にぶつけてしまってはなんの解決にもならないし、後で後悔するからである。誰も悪くはない。
ユウトが先に口を開いた。「リナ、君の気持ちは分かるよ。でも、もうクラス代表は決まったし、これ以上戦う必要はないんじゃないかな?他クラスの生徒も見に来てるし、これ以上スキルを見せたら対策されてしまうかも…」
「やだ。」
ここで終えても口は聞いてくれなさそうだと感じた2人はリナの要求を飲むことにした。
ふと、レオンはスキルを使用せず投擲をしてみた。投げたナイフは目標を大きく逸れていく。
「スキルを使わないとそうなんだよな。」
実はレオンにも試したいことがあった。風の影響で目標が少し逸れることは攻撃側にとって困ることだが、実は防御側にとっても困ることだった。Ranモードではあらかじめプログラムして正確動くため利用価値が高いのだが、一度実行が始まれば途中で止まることはできず、予想と違う動きをされると対処できない。これはRanモードの明確な弱点として周知の事実であった。レオンももちろん既知とするところであったが、目の前で起きると印象が変わって見えた。
「アラン先生、ちょっといいですか?」レオンが静かにアランに声をかけた。
「何かな?3人の順位をつけるためのルールは、一撃入れられたらリタイヤということでいいかな?」
レオンは頷きながら答えた。「日も暮れてきてますし、それで問題ないです。」彼は一呼吸置いてから、少し戸惑いを含んだ表情で続けた。「それとは別の話なんですけど、乱数ってどんなアルゴリズムで作ったらいいですか?投擲に対してランダムに少しの誤差を意図的に作りたいんです。」
アランはその質問に少し驚いたが、すぐに理解し、丁寧に説明を始めた。「乱数の生成にはいくつかの方法があるけど、シンプルで効果的な方法の一つに『乱数テーブル法』があるんだ。これは、あらかじめ計算された乱数のリストを使う方法なんだけど、とても直感的で使いやすいんだよ。」
レオンは興味深そうにアランの話に耳を傾けた。「それはどういうふうに使うんですか?」
「例えば、投擲の際に一定の誤差を加えたい場合、乱数テーブルに保存された値からランダムに一つ選んで、その値を元に投擲の角度や力を少しずらすことができるんだ。」アランは簡単な例を挙げながら説明を続けた。「具体的には、100個の乱数をテーブルに用意しておいて、投擲のたびにその中から一つをランダムに選ぶ。これを毎回使うことで、予測しづらいランダムな動きを再現できるんだ。」
レオンは深く考え込みながら、「なるほど、それなら相手の動きも読みにくくなるし、投擲がより効果的になるかもしれませんね。でも、そのテーブルってどうやって作るんですか?」
アランは微笑んで答えた。「テーブル自体はあらかじめ計算しておけばいいんだ。例えば、プログラムや簡単な計算で乱数を生成して、それをテーブルに保存しておくんだ。必要なときにそのテーブルを参照して乱数を取り出すだけだから、処理も非常に早い。取り出すアドレスを決めるのはその時の時間や、索敵スキルで見つかる対象の数とかにすると乱数を選択するための値からも規則性を取り除くことができるよ。」
「なるほど、事前に用意しておくんですね…」レオンは納得したように頷いた。「それなら、精度を高めつつ、投擲にランダムな要素を加えることができそうです。試してみます。」
アランはレオンの理解に満足そうに頷き、「いいアイデアだね、レオン。乱数テーブル法は簡単だけど、使い方次第でとても効果的になる。特に君のように正確な座標を扱う場合、少しの誤差が勝敗を分けることもあるからね。ぜひ、その方法を使ってみてくれ。」
レオンは目を輝かせながら、「ありがとうございます、アラン先生。これで次の投擲がもっと面白くなりそうです。」と感謝の言葉を述べた。
アランは軽く微笑み、「頑張って、最後まで全力を尽くしてくれ。」と励ました。
レオンは満足そうに頷き、乱数テーブル法を試す決意を固めた。そして、心の中で再び戦闘への意欲が燃え上がるのを感じながら、最後の戦いに挑む準備を始めた。
少しのインターバルをとり3人は再び戦いの準備を整えた。彼らはお互いに励まし合いながら、最後の戦いに挑む覚悟を決めた。リナの強い意志と二人の優しさ、レオンの研究心が交じり合い、彼らの絆はさらに深まっていく。




