第27話: ユウトのアルゴリズム
ユウトはゴーグル型アーティファクトを装着し、映し出される画面に集中していた。ゴーグルのディスプレイには、クラスメイト達の次の動きを示す矢印やアイコンが映し出されている。未来予測AIの映し出す彼の視界には草原型ダンジョンの広がりと共に、クラスメイトの位置と行動予測が表示されていた。
戦闘が始まると、ユウトは未来予測AIを駆使して相手生徒の攻撃をかわし始めた。目の前の生徒が剣を振り上げると、ゴーグルのディスプレイには次の一手として「右に回避」の指示が表示された。ユウトは瞬時に右に身をひねり、剣の一撃をかわす。
「次はこっちかな…」ユウトは未来予測を確認し、カウンター攻撃を繰り出した。生徒の防御が緩んだ隙を突いて、一撃を加えた。ゴーグルのディスプレイには次の攻撃のタイミングが表示され、ユウトはその指示に従って動いた。
「ちゃんと動きは予測できてるみたい。よかった…」ユウトは敵の動きを完全に予測し、次々と攻撃をかわしていく。未来予測AIは、相手の行動パターンを瞬時に解析し、最適な回避行動をユウトに示していた。
一方で、別の生徒がアランに向かって突進してきた。ゴーグルのディスプレイには「左に回避、パリイ」と表示された。アランは左に身を翻し、生徒の攻撃をパリイして反撃に移った。生徒はバランスを崩し、その隙をついてユウトは一気に攻撃を仕掛けた。
「よし…」ユウトは冷静に敵の動きを見極め、未来予測AIの指示に従って行動を続けた。戦闘は次第に激しさを増し、ユウトは未来予測AIの助けを借りながらも、自分の戦闘スキルを駆使して戦い抜いた。
戦闘が一段落し、水分補給をしながらユウトは未来予測AIの構築時の苦労を思い返していた。彼がこのAIを構築するにあたり、最も困難だったのは大量のサンプルデータを集めることだった。一人でダンジョン攻略をしても、必要なデータを集めるのは容易ではなかった。
「最初は手探りだったな…」ユウトは独り言をつぶやきながら、ゴーグル型アーティファクトの開発過程を思い返す。
ユウトはまず、ダンジョン内での自分の動きを詳細に記録することから始めた。ゴーグルのカメラを使って位置データを取得し、自分の動きとモンスターの反応をすべて記録した。しかし、それだけでは予測AIに必要なデータ量が圧倒的に不足していた。
「もっと多くのデータが必要だ…」ユウトはそう感じ、データ収集の方法を見直すことにした。まず、敵の動きに関するデータを集めるために、特定の条件下での行動パターンを記録することにした。
「ゴーグルの映像に映らない範囲は対象外にしよう。これでデータの精度が上がるはずだ。」
次にユウトは条件を絞り、カメラに映る範囲内でのデータに集中した。また、敵の行動パターンを解析するために、インタラクションデータを活用することにした。敵がどのような動きに反応するかを詳細に記録し、そのデータをもとに未来予測を行うことにした。
「敵が特定の動きをしたとき、それに対してどのような行動を取るか…。いや、相手の行動を引き出せれば…。」ユウトはインタラクションデータを使って、敵の行動を引き出すための動きを分析した。そして、それに基づいて未来予測AIのアルゴリズムを組み立てた。
「行動を引き出してカウンター攻撃を仕掛ける…これならいける。」ユウトは自信を持ってAIを構築し、実際にダンジョンでテストを行った。未来予測AIは、敵の動きを正確に予測し、ユウトの動きをサポートすることに成功した。
しかし、さらに問題が発生した。一度サンプルが取れれば、同じ手順で攻撃してくる敵には完璧に対応できるが、強力な連続攻撃を多用してくる相手には途中でパリイをして反撃に移る必要があった。これを解決するために、ユウトは未来予測AIに新たなアルゴリズムを追加した。
「パリイのタイミングも予測に組み込む必要がある…」ユウトはパリイの動作をAIに組み込み、連続攻撃にも対応できるようにした。さらに、未来予測AIを活用するためのデータが一定量に達すると、データベースを構築し、戦闘中に得たデータを蓄積していくこともできるようになってきた。
「さて、一撃で致命傷になるような攻撃はなさそうだな。落ち着いたら戦闘中のデータを解析してみよう…」アランはデータベースを活用し、未来予測AIの精度をさらに向上させた。これにより、AIは戦闘中に得たデータを基に、次の行動をより正確に予測できるようになった。
「戦闘中に得たデータをリアルタイムで解析し、次の行動を予測する…これが未来予測AIの真髄だ。」アランは自信を持ってAIを完成させ、教育現場の戦闘での実践に臨んだ。
こうして、アランは未来予測AIを駆使して戦闘を続け、敵の動きを完璧に予測しながら勝利を収めた。彼の努力と研究の成果が実を結び、未来予測AIはアランにとって強力な武器となっている。




