第二十話:新風
アラン先生が非常勤講師として本校に勤務してから三ヶ月が経過した。彼の採用は小学生たちが予期せず高校卒業試験に合格した出来事を受けてのものだった。この驚異的な成果が、私たちの教育の常識を根底から覆し、学校に新しい風を吹き込んだ。
最初のうちは、アラン先生の提案する新しい教育方法、特に「Ranモード」の採用に対して、議論が巻き起こった。特にベテラン教員からは強い抵抗があり、新しい技術を取り入れることに対して懐疑的な声が多かった。しかし、アラン先生はその革新的な手法で、徐々にその効果を示し始め、教員たちの間で支持を集めるようになった。
アランが最初に大きな支持を得たのは、若手教員の間だった。彼らは新しいアイデアに開かれており、アラン先生の方法が生徒の学習意欲をいかに引き出しているかを実感していた。その影響は徐々に広がり、さらに彼が開いたワークショップや研修会での体験が、他の教員の心も変えていった。
たとえば、中堅教員のスミス先生は当初、新しい教育法に懐疑的であったが、実際にアラン先生のワークショップに参加してから考えを改めた。スミス先生は自身のクラスでRanモードを試み、生徒たちの反応の良さに驚いた。その結果、彼は他の教員たちにも積極的にアラン先生の方法を試すよう勧めるようになった。
スミス先生としては今までの教育方法に自信を持っており、根拠として多くの生徒に慕われて教員生活を送ってきていた。しかし、1人1台端末のような指導方法を変えるようなレベルではなく、教科書の改訂に留まらない、小中高の12年間のカリキュラム内容が大きく変わってしまう異常事態に変わらざるをえなかったという。勉強会で若手教員達の熱量に当てられた後の酒の席で、「もう10年早くアラン先生に出会いたかった。」と嘆きながら、複雑な表情を見せていた。正直、私も教卓に立つ立場であれば苦労するのは間違いなく、同情に似た気持ちで酒を注いであげていた。
校長として、私はこの変化を慎重に監督し、全ての関係者がこの変化を理解し、受け入れられるよう努めた。アラン先生の採用がもたらした初期の波紋が学校全体に肯定的な影響を及ぼし始めたのは明らかだった。
変化に対する抵抗は依然として存在するものの、教員たちの間での成功例が増えるにつれて、反対意見は徐々に少数派となった。(個人的に同情はしている。)新しい教育法がもたらす可能性に多くの教員が期待を寄せ、私たちの学校は新たな未来への道を着実に歩み始めている。
これから私たちは、アラン先生が導入した教育法をどのように根付かせ、発展させていくかが問われている。報告を受けた王宮からの視察隊としてホワイル王子が来校される予定もある。新しい教育法がもたらす可能性に期待を膨らませつつ、彼との残り少ない時間を最大限に活用し、さらなる学びを深めていく。
アラン先生の任期はあと3ヶ月。教育に携わるものとして変化を喜ばしく思う反面、スミス先生のように苦労する先生達がいることを思うとこれ以上の成果が生じないことも願ってしまう。
頭の痛い問題である。




