第十四章: 出発の準備
朝早く、教会の広い庭で、ユウト、レオン、リナはダンジョン攻略に向けての最終準備をしていた。アランは彼らの装備を一つひとつ確認し、必要な物資をリュックに詰め込む手伝いをしている。
「皆、しっかりと準備はできているかな?」
アランは三人を見渡し、彼らの緊張した表情を和らげようと穏やかに話し始めた。
「この冒険では、何よりも自分たちの安全が最優先だ。忘れてはいけないのは、この世界には一瞬で傷を癒す回復呪文やポーションが存在しないことだ。だからこそ、安全第一・防御第一で行動し、無理はしないことが大切だよ。」
レオンが軽く頷き、リナも不安そうにアランの顔を見つめていた。ユウトは、少し緊張を感じながらも、アランの言葉に真剣に耳を傾けていた。
アランはさらに彼らに具体的なアドバイスを与えた。
「ダンジョン内では、予期せぬ危険が常に伴う。だからこそ、お互いをよく見て、助け合うこと。お互いの位置を常に把握し、危険を感じたらすぐに声を上げるんだ。」
この世界には端末による通信を行うことができるが、その通信方法には風魔法が利用されていた。高い建物が街に少ないのはそのためでもあり、遮蔽物の多いダンジョン内では通信装置はほぼ機能しないのが常識とされている。
アランはレオンのリュックから小さな地図を取り出し、ダンジョンの概略を示しながら、進むべきルートを説明した。「この地図には主要な分岐点が記されている。迷ったら、この地図を見て、常に知っている安全なルートに戻ることができるようにしよう。」
最後に、アランは各自に小さな笛を手渡した。「これは非常用の笛だ。何かあったら、この笛を吹いて、周囲に警告してくれ。」
装備のチェックが終わり、ユウト、レオン、リナは準備完了の合図として、それぞれが大きく深呼吸をした。アランは彼らを励ましの抱擁で送り出した。
「大丈夫だ、君たちはきっとうまくやれる。忘れるな、冒険は楽しむためのものだ。お互いを信じて、支え合って進んでくれ。」
アランの言葉に、三人は心強さを感じつつ、教会を背にしてダンジョンへの道を歩き始めた。
それぞれの心にはわくわくとした期待と、未知への挑戦への緊張が入り混じりながら、新たな冒険の幕が開けようとしていた。




