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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あの時の記憶と律すべき過去

作者: 海野美月

設定など甘いところが多々ありますが、

当方初心者故、ご容赦ください。

久しぶりって連絡が来た。

会うのは2年ぶり。

(ゆい)とは元々セフレだった。

俺もその時は、結婚していて結も同じだった。


そして、今は同じようにお互いバツイチになった。

一応、言っておくけどこれがキッカケで離婚したわけではない。


「いきなりどうした?」


「いや、元気かな?って。」


「そうか。」


結は子供がいる。今年小学生になる。


「律くんはどうしたん?」


「元気だよ。」


「違うよ。今さ?」


「あ〜元旦那と会う日なんさ」


「なるほどね。」


「ビール買ってきたよ。」


「泊まる気満々じゃん。」


「いいじゃん久しぶりなんだし。それとも、今誰かいるの?」


「いや、いないけどさ。」


「なんだお互い寂しいね。」


離婚してから俺は特定の相手を作らずにいる。

もうなんか結婚とか誰かと過ごすのは向いてないなって。


ひとりで過ごすのは気が楽だ。

なにも気にしない。

だけど、たまに寂しいと思う時もある。

わがままかな。


「ねぇ、ネトフリ見ようよ。」


「あぁ。何見る?」


「韓国ドラマでなにかいいのない?」


「韓国ドラマか。それならいっぱいあるよ。」


自分から見たいって言った割に早々に手を忍ばせてきた。

抗うことなく俺もそれに従う。


「イクのはやいよ〜もう1回ね。」


「仕方ないだろ〜自分でもやらないんだから。」


結局2回戦が終わってお互い全裸のままテレビ画面見てると

結がいきなり


「ねぇ。私と暮らさない?」


「は?いきなりなに?」


「ダメ?」


「いや、理由は教えて?」


「うーん…。寂しいんだ。」


「寂しいって。律くん居るだろ。」


「律はねあたしの事嫌いなのよ。」


「なんで?」


「わかんない。でも、今日だって約束じゃないのに元旦那に会いに行ってるし。会いに行きたいってうるさいから。」


「ふーん。」


「もう、私は誰からも愛されないのかな?って考えると寂しいの。」


「久しぶりに会っていきなりそれ言われてもなんて言っていいか分からないよ。」


「そうだよね。ごめんね。」


その後、少しして結が自殺した。


なに考えてんだよ。結。

何があったんだよ。

なんで、あの時すぐわかったって言えなかったんだろう。

何回考えても分からない。

嫌なモヤモヤを残して時間だけが過ぎていく。


―――


掃除していた時たまたま本棚の本と本の間に手紙が入ってるのを見つけた。手紙を開いて見ると、


―――

りんへ。

いきなり訪ねてごめんね。

最後にりんに会いたかったの。

久しぶりに会えて嬉しかったよ。

私はもう、ダメみたい。

りんに会う前からもう決めてたんだ。

でもりんのせいじゃないから安心して。


りんと遊んでた時が懐かしいね。

思い出すとなんか泣ける。(笑)

あのころは色々とお互い未熟だったし

その時楽しければ良いってしか考えてなかったね。


りんと過ごした時間がなかったらとっくに私は

この世からいなくなってたよ。

だから、最後に会いたかったの。

好きだったよ。

さよなら。


―――


なんだよ。これ。

結…。


結と初めて会ったのは7年前だ。

「今日からお世話になります。石田結です。よろしくお願いします。」


そう言ってうちの職場に入職してきた。

最初は、話すこともないし挨拶くらいだったけど、

やらたと結に話しかけられるようになって少しづつ

行動を共にすることが増えてきた。


その時、お互い新婚だったしただ仲が良い同僚に過ぎなかった。

だけど3年くらい経った時、結にいきなりキスされた。


そこから関係が始まった。


お互いに、上手くやれてたと思う。

現に離婚の原因は全く違うし。円満に離婚したわけだから。


不倫なんて自分がするとは思わなかった。

でも、結果今はひとりだしそのバチが当たったのかもね。


「ねぇ、ねぇ、りん。今度いつ会えるの?」


「えぇ〜、そうだな。今月は厳しいかな。嫁の誕生日があるし。」


「そっか〜。また会えそうなら連絡してね。」


「わかったよ。」



俺は家庭では良い旦那を演じて、裏では不倫してる。

最低な奴だ。

でも、どちらも問題なく過ごせているんだからいいだろう。


嫁のことは好きだが、あっちの方はあまり相性が良くない。

夜は素っ気ないし、悪く言えばマグロだ。


その点、結は楽しませてくれる。

だから辞められない。

多分、結もそうだと思う。


律を出産してから旦那が受け入れられなくなったと言っていた。

だから、その欲を俺で満たしているらしい。

不思議だよな。


だけど、何故結は自殺したんだ?

過去を思い出しても分からない。

分かるはずもない。

結のことをしっかり見ていたわけではないから。



―――


「ピンポーン♩」


誰だろう?


「はい」


「あ、西山凛太郎さんのお宅でお間違いないでしょうか?」


「はい。どちらさま?」


「結の元旦那の石田健二です。」


「はい?(え?なんで)」


扉を開けると、そこには結の元旦那と律が居た。


「突然すみません。どうしても、律が凛太郎さんにお会いしたいと言いまして。」


「はぁ。律くんが?」


「お邪魔してもいいですか?」


「どうぞ。」


律が?どういうことだ?

確かに、律とは会ったことあるし元旦那の健二とも

数回会ったことはあるが家に押しかけられるような中ではない。


「突然すみませんね。実は凛太郎さんに話しておかなければならない事がありまして。」


「はい。(?)」


「実は、結は殺されたんですよ。」


「え?どういうことですか?」


「確かに、結は自殺をしようとしていたみたいです。でも、殺されたんです。」


「?」


「遺書もあるんです。でも、律が誰かに殺されるところを見ていたらしいんです。」


「律くんが?」


「えぇ。」


「自殺したかのように見せかけて殺した誰かがいるんです。」


「いやいや、いくらなんでも律くんの事を信じろって言われても…」


「もちろん、私も同意見です。でも、これを見てください。」


1枚の絵を渡された。

そこには、結と思われる人の首を縄で閉めている女の絵が書かれていた。


「どういうこと?…。」


「律に聞いてみたんです。どうしてこんな絵を書いたんだ?って。すると律は『見ていたから』って言うんです。」


「結が亡くなったのを最初に発見したのは誰だったんですか?」


「結の母親です。結と律に会いに行きたまたまだそうです。警察も状況証拠から自殺だろうと判断していまして、現に結の書いた遺書も見つかっていますし間違いないだろうと。」


「私が律を引き取って、一緒に過ごしている時に律がその絵を書いたんです。そして、『ママは殺されたんだよ。』って。」


そこまで聞いて悪寒を感じた。

いや、まさかな…。


「そして、律がいきなり『凛太郎さんに会いに行きたい。凛太郎さんなら知っているはず』と言ったんです。」


「律くん?どういうことだ?」


「あのね。りんと一緒に居た人だったの。」


「俺と一緒に居た?」


「うん。ママとねお買い物している時にりんと一緒に居た人だよ。」



いつだったか、買い物してる時に結と律に会ったことがある。

その時は、同じ仕事してる人だよって結が律に言っていた。

そう。その時、隣に居たのは俺の元嫁の京子だ。


どういうことだ?京子には結との関係をバレていないはずだ。

いや、バレていたのか?


しかし、何故それなら離婚する時になにも言わなかったんだ?


そんなことを考えていると、健二が

「実は私は結と凛太郎さんがそういう関係だったのは知っていました。でも、私も家庭を省みないで遊んでいたので結にはなにも言いませんでした。」


「はあ。」


「今更、凛太郎さんを責めるつもりはありません。でも、真実が知りたいのです。何かご存知ないですか?」


「うーん。律が言っているのが俺の元嫁なのだとしたら、俺も離婚してから一切連絡を取っていないので今どこで何をしているのかなんて分からないです。」


「そうですよね。お互い離婚してから数年経ちますもんね。」


その後、詳しく話を聞くと、律は近所の公園に遊びに行こうとした際に、玄関に女の人が立っていたらしい。

そこで、「結さんいるかな?」と聞かれたので「うん。」と答えてそのまま遊びに行こうとしたが、気になったのでこっそり家に戻り隠れていたらしい。


そこで、律が言うにはその女に結は絞殺されたとの事だ。


律はまさか結が殺されたとは思わず何か遊んでいるんだろうと思いその後、外に出てしまったらしい。


「しかし、仮に京子がやったとして証拠があるのですか?」


「いえ、私にも分かりません。」


「結の遺書残ってるとなると…。」


「え?凛太郎さんのところにもあるんですか?」


口が滑った。でも、まぁいいや。


結が亡くなる前にうちに来たこと、そして手紙を本棚に挟んで言ったことを打ち明けて結からの手紙を見せた。



「そうだったんですね。あれ?でもこの字は結の家にあった遺書とは字が違う気がする。」


「え?」


「凛太郎さん宛に書いたこの字は結の字ですね。でも…」

健二は鞄から遺書と書かれた封筒を取り出し手紙を俺に見せた。


すると、確かに明らかに字が違う。

え、ちょっと待って、「この字は京子の字だ。」


「正直、離婚して数年経つので結の字なんて覚えていませんでしが、凛太郎さん宛の手紙を見て思い出しました。結はこんな風に丸文字でした。こっちの遺書のような右上がりの字ではなかった。」



ひとまず、俺は京子に連絡してみることにした。

「もしもし?京子?」


「どうしたの?いきなり。」


「ちょっと聞きたいことがあって。」


「うん。何よ?」


「石田結さんが自殺したの知ってるか?」


「え?あぁ、りんの不倫相手?」


「え?どうしてそれを?」


「いやいやバレバレよ。」


「それで、それが何?」



そこまで話した時に後頭部に鋭い痛みを感じた。


「ちょっと?もしもし、りん?。ふふ。」


ん?今、笑った?


「ピッ。ツーツーツー」




痛てぇ。

目を覚ますと何か顔に被せられていて手足が縛られ自由も効かず真っ暗だった。


「うぅ。」


「目が覚めましたか?」


「おい??どういうことだ?」


「いやいや、簡単に家に入れてくれて助かりましたよ。」


「は?」


「結とお前が遊んで来ると、律がいつも私に教えてくれてたんですよ。『今日もりんと一緒に居たよ』って。」


「結がお前と不倫していることを知ってからずっとお前に復讐することを考えていました。」


「結が自殺したのは誤算でしたけどね。私が殺そうとしたのに勝手に死にやがりましたよ。」


「騙したのか?」


「それを言われる筋合いはありませんね。」


「くっ、律?いるのかそこに?」


「律は私の味方ですよ。上手く演技してくれましたね。」


「クソッ」


嵌められた。まさかこんな事になるなんて…。

結…。




―――


「律、よくやったぞ。」

「…。うん。」


その後、


西山凛太郎さん(三十一歳)が自宅で何者かに首を切られ殺されているのが発見されました。後頭部には鈍器のようなもので殴られた痕跡があり、手には遺書のようなものを握らされており、その内容から石田結さん(三十歳)を殺害した容疑者として書類送検されました。



―――


「ねぇ、京子?京子の元旦那だよね?この人。」


「うん。そうだね。」


「あんた別れて正解だね。」


「うん。」


「健二さんはとってもいい人で良かったわ。」


「そうだね。」


(ふふ、私達が殺したのよ。お母さん。)


実は、凛太郎と結が不倫しているのは最初から知っていた。

健二とどうやって二人に復讐するかずっと考えていた。

そんな中、結が自殺をほのめかし始めたので自殺される前に殺そうと計画を企てた。


しかし、寸での差で結が先に死んでしまった。


このままではつまらないと考え、結を殺したのは凛太郎だったということに捏造することにした。

そして、凛太郎を殺そうと。


その後は何もかも完璧にやり遂げた。

健二の知り合いの刑事にも協力してもらった。

凛太郎を殺したのは当時、結のストーカーをしていた宮下勇気(四十二歳)ということにしてもらった。


そして、私は健二と再婚した。

これから幸せな人生を過ごすんだ。





そう思っていたのに。



―――




どうやってあの二人に復讐しようかずっと考えてきた。

母を殺したあの二人に…。

あの時からずっとモヤモヤしていた。

あれで良かったんだろうか?

歳を重ねる事に戻れない過去に囚われるようになった。


当時、母は自殺しようとしていた。

今なら分かる。母はずっと苦しんでいた。

あのクソ親父に毎日虐げられていた。

子供の頃は分からなかったが、今思い出すと胸が苦しい。

結果的に母は自殺したがそれを母が好きだった人のせいにしているのはおかしい。


それに、その人も殺したわけだ。

よく覚えている。子供の頃よく遊んでくれた。りん。

子供だったから詳しくは教えて貰えなかったが、ただ「このことは絶対に秘密だ。それを破ればその時はその時だ。」と

クソ親父に言われた。


クソ親父と再婚したあの女も腐っていた。

腐った奴には腐った奴がくっつくんだなと毎日思っていた。



そして、今日その事を話に警察署にきた。

全てを打ち明けるつもりだ。

何年も前のことを今更聴いて貰えるかわからないけど。


もちろん、自分も罰を受ける覚悟だ。

そう、決めてから証拠を集めてきた。

あの、バカ親達はなにも気づかなかった。

俺があの時のことを覚えていないだろうとたかをくくっていたのだ。


俺の前でもお構い無しにその時の話をしていたし、

スマートフォンを持つようになってからは録音しながら

あの時のことをクソ親父とクソ女に話してもらった。


詳しく教えて貰えないと思ったがそこはバカなやつらだ、自慢げにあれこれ話してくれた。


もちろん、その時は俺も二人に対して思ってもないことを言ったり嘘をつき続けて来た。


そしてようやく。成人した。

長かった。大人として見てもらえる。

子供の証言では信用は得られないからずっと辛抱した。


そして、ばか親達は逮捕された。

結は自殺。りんは他殺。そして、宮下勇気という被害者。

警察内部の黒いコネクション。

全てを俺の証言で変えていった。


もはや言い逃れできないくらい証拠を提示したおかげで、上手くいった。


クソ親父は母が自殺する前に殺そうとしていたこと。そして、りんの殺害及び無関係な人間を警察の協力のもと殺人の容疑をきさせたこと、当時未就学児だった俺を利用して犯行を及んだことなどから死刑判決となった。


クソ女は、殺人における幇助の罪だけだったが裁判上で俺の事を殺してやるなどと叫んだり暴れたりしたおかげで無期懲役となった。



そして、当然俺は親子の縁を切った。

俺はお母さんの子供だ。お前たちの子供ではない。


叶うのなら、お母さんとりんの子供になりたかった。

その人生を送りたかった。

りん、お母さん、ほんとにごめんなさい。

こうすることしか俺には出来なかったよ。

あの時二人を守れなかった。

今、後悔してもなにも変わらない。

わかっているけど。



―――



どうして私はここにいるのだろう。

暗くて冷たい。

どうして、こうなったのだろう。

そう、全ては律というガキのせいだ。

あいつはやはり一緒に殺しておくべきだった。


ある日突然、我が家にやってきた警察になにも出来ずに連行されあっという間に刑が確定してしまった。


健二は死刑だ。あはは。おかしい。笑っちゃう。

そして、私は無期懲役。なんで?ふざけんな。クソガキが。


絶対にここを出て、あいつを殺す。

私の幸せを奪ったあいつのことは許さない。


―――



もう何年経ったのだろう。

毎日同じ生活をする。同じ時間に起き作業をして寝る。


「3097番、面会だ。」


「はい。」


扉を開けると、座りながら無言でこちらを見るあいつが居た。


「何のよう?」


「まだ、生きていたんだな。」


「ここを出てお前を殺すまでは死なない。」


「ふっ、腐ってるな。」

「クソ親父の刑が昨日執行された。あれから18年。ようやくといったところだな。」


「お前もせいぜい刑に服するんだな。」


クソガキー!!!殺してやる!殺してやる!


「おい、やめなさい。!面会終了。」



完全に狂っている。



―――


それから12年経った時、京子は獄中で亡くなった。

無縁仏にしてもらった。


俺の人生にはいらない。


ようやくこれで二人に報告出来る。

京子が無期懲役になったのは納得いかなかったがそれも仕方ない。直接手を下したわけではないから。


でも、長かった。あの狂人ぶりのおかげで仮釈放なんて話は出なかったし出ても断るつもりだった。



お母さん、りん、ようやく終わったよ。




―――



「律、律の名前はねお母さんが命名したのよ?」


「そうなの?」


「うん。周りの人のお手本になるような素晴らしい人になって欲しい!って意味があるの。自分だけが良ければいいなんて人にはならないで、誰かのことも助けてあげられるようなね。」


「ふーん。」


「大きくなったらきっとわかるわ。」





あの時の温かい記憶は絶対に忘れない。


そして、俺は弁護士資格を取得し誰かの救いになれるように日々懸命に働いている。






この名に恥じぬように。









最後までご覧頂きありがとうございます。


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