4.異世界の女神様
目の前の光景に俺は目を奪われていた。ソレはただの石像ではないと『バグコレクター』である俺にはわかる。
まるで天才的な芸術家が創ったかのような美貌、まるで生きているかのように自然な焦りの表情。そして何よりも強力で……前の世界で見たことのないな強力で禍々しい気配を放つ歪み(バグ)
「この力……俺がもらうぞ!! 『歪み喰らい(バグイート)』」
虹色に輝く剣が石と化した女神に触れると同時に、すさまじい抵抗を感じる。
こんなのは初めてだぞ!! バグが抗っているだと!!
なんだこれは……こんなバグを俺は知らない。剣を通して俺まで石化してこようと襲い掛かってくるバグ。驚愕しながらも俺はその目を喜びに染める。そして、俺はこれまでの経験をフルに活かしてバグを喰らいつくそうとしたその時だった。
女神を覆っていた石が生き物の様に動き、その周囲の空間が歪んだかと思うと、全長5メートルくらいの巨大な蛇が現れた。
「キシャー!!」
「は? バグが魔物化しただと……?」
そして、そいつがこちらを睨みつけた時だった。嫌な予感がしてとっさに体をそらしたものの、やつの視界に入った俺の右手が石化していく。
「ははっ! すごいな! お前!」
俺は狂喜の声をあげる。こんな風に変化し、しかも襲ってくるバグなんて初めて見る。元々強力だったこともあるが長年放置されて進化したのだろう。
「キシャーーー!!!」
「まともに戦ったら俺はおろか、ノイズだって勝てなかっただろうな……」
バグ蛇の視界に入らないように接近しながら、石化した右腕をバグイートすると、石化バグはあっさりと解除される。
「だけど、相手が悪かったな!! 俺はバグの専門家なんだよ!!」
虹色に輝く刃がバグ蛇をとらえた。伊達に前の世界で何年かもずっとバグを浄化し続けていたわけではないのだ。あらゆるバグへの対処方法が俺の頭の中にある!!
バグ蛇の体を俺のバグイートが喰らいつくしていく。
時間にしてどれくらいたったかはわからない。虹色に輝いていた剣がひときわ輝いて、何か巨大なものを吸収したのだと本能的に理解した。
「これは……あなたが助けてくれたのですか……?」
そして、ようやく手にしたバグを俺は確かめる。
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Aランク『バジリスク』
あらゆるすべてのものを石化させる。その力はこの世界を管理する女神すらも逃れることはできなかった。
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「うおおおおお!! すっげえ!! Aランクなんて、先代女神のために浄化した時以来じゃないか!!」
「あの……すいません……聞こえてませんか?」
「この世界は宝の山だぁぁぁぁぁ!!! 俺は世界中のバグを手に入れてみせるぞ!!」
「ちょっと、話をききなさいっての!!」
「うおおおおお!?」
俺が喜びのあまり踊り狂っているとバグの中の人が大声で叫んだ。やっべえ、バグを解除したんだから女神も復活するよな。
「こほん……」
彼女は無視してしまったからか唇を尖らして不満そうにしていたが、俺が見つめていることに気づくと仕切り直しとばかりに咳ばらいをする。
「あなたが私を助けてくださったのですね……」
その少女は何事もなかったかのように芸術品のように美しい笑顔を浮かべて俺を見つめる微笑む。腰まである銀色の髪はまるで月の光でも浴びているかのように神秘的に輝いており、透き通るような白い肌に全体的に華奢でありながら、胸元だけ豊かなその体は見るものを惹きつける。
「私はこの世界を侵食する歪み(バグ)によって身動きを取れなくなっていました……救ってくださってありがとうございます」
その少女は優雅に礼をする。その姿はなんとも美しくて……人間離れした外見とあいまって何とも神秘的だった。
まあ、人間じゃないから、当たり前なんだけどな。
「それでお願いがあるのですが、私は長く眠っていたために力が弱っています。もし、よろしければ力を取り戻すお手伝いをしていただけてないでしょうか? 」
「いやです。自分で頑張ってください」
「はい、ありがとうござ……え、ちょっと待ってよ、なんで、ここは普通オッケーするところじゃないの? 私は女神よ……? 神様なのよ?」
俺が即答すると纏っていた神秘的な雰囲気はかき消えて、慌てた顔で叫び声をあげる。こちらが素なのか口調もくだけたものになっている。
「ああ、タダじゃ嫌って事かしら? もちろん、お礼はするわよ!! 今ならあなたを大司祭に任命するわ!! ここの神殿も好きに使っていいし、ギフトだってあげるわよ!!」
大司祭という言葉に俺は前の世界でのことを思い出してしまう。確かに神殿では偉い立場だったが扱いはくそだった。それに、ギフトももう持っているしなぁ……
それに……今度は自由に生きたいと思うのだ。
「あ、もう間に合っているんで大丈夫です。頑張ってください!!」
「ちょっと押し売りに対する態度みたいなのやめてくれない!? 傷つくんだけど!! こういう場合は……ええい、これだけは使いたくなったけど!!」
そういうと少女はやたらと思いつめた表情で俺を見つめてきた。この女神、まさか力を使うつもりなのか……
「その……もしも、力を貸してくれるっているのなら……抱きしめてあげるわ!! こんなサービスめったにしないんだからね!!」
谷間を強調させるポーズを取りつつも、顔を真っ赤にして、唇を震わせながらそんなことを言う女神に俺は何と答えればいいのかわからなくなる。
まさか色時掛けでもしているつもりなのか……? この女神もしかしてポンコツなんじゃ……
そんなことを思った時だった。何か巨大なものがズシンズシンと足音をたてて近づいてくる。
「な、何なのよ!! 私の神殿に何が……」
「そういえば強力なバグにおかされた魔物がいるって言ってたな……」
しょうがない戦うかと剣を構えると、予想外なことがおきる、女神はまるで俺を守るかのように一歩前へと踏み出す。
「あんた、逃げなさい!! ここは私が何とかするわ」
「いや、だって……」
「いいから行けって言ってるのよ!! 力が弱っているからって、女神なのよ。命の恩人くらい助けて見せるわ」
目の前の女神は俺が知っている女神では絶対言わないであろうことを口にしたのだ。
異世界の女神と邂逅しました。
ここから物語が始まります。
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