3.予想外の出会い
村に戻ってお礼をしたいという少女の提案を断って、俺は一人で神殿を目指していた。別にこの世界の女神さまが心配というわけではない。
この荒れ果てた地に、バグに侵された魔物の存在、女神の存在を知らない住民の存在から、この世界に何が起きているのか気になったのだ。
それに……強力な変異種がいるという事はそれだけすごいバグがあるっていう事だ。そう、俺は……元々バグという存在が好きなのだ。様々な存在に影響を与えるバグ。前の世界では仕事だったこともあり発見してからすぐに浄化していたのであまり強力なバグはあまり見れなかったが、この世界にならばまだたくさんのバグが野放しにされているだろう。
たくさんの種類のバグをみることができて、しかも俺はそれを手に入れることができる……最高かよ!! 追放してくれたノイズとヘラに感謝だな。
そんなことを考えていると、「くぅーー」と情けない音が響いた。そういえば研究中だったのでろくにごはんも食べていなかったのだ。
俺はせめてものお礼にと……少女からもらったサンドイッチを食べることにした。
「なにこれうますぎる……」
しゃきしゃきのレタスと乾燥したハムの触感がばい……どれくらいおいしいかというと語彙力がなくなるくらいやばい……
前の世界では、あまり食事というものに力をいれていなかった。特に俺はメスガキ女神にきらわれていたからか、味のしない栄養のある液体ドリンクと硬いパンばかりだったしな……
あとは、時々、ヘイズのやつが、『別にあまっただけだから勘違いしないでね』とか言いながら黒焦げの肉をもってきてくれたくらいである。炭の味しかしないあれは何だったんだろうか……
「ご馳走様……バグを探すついでに各地でうまいもんでも食べるのもありかもしれないな……」
満足げに平らげた俺は異世界での初の食事を終える満足しながらつぶやくのだった。
「これが神殿か…階段がぶっこわれてるな……」
食事を終えてしばらく歩くとようやく石造りの建物が見えてきた。山の上にぼろぼろの神殿がそびえたっている。
それはいいのだが、何か巨大な生き物でも暴れたのか、神殿へと行くための階段が破壊されていやがる。
元は階段だったのだろう、当たり一面に風化しかけの岩が落ちているのを確認した俺はちょうどいいサイズの岩に乗る。
形もちょうどいいな。
「さっそくさっきのバグを有効活用させてもらうか『歪み放出』」
俺はゴブリンから奪った巨大化バグを足元にある岩に移したのである。しかも、効果をより強化して。
「うおおおお、テンションがあがるな!!」
岩がどんどん大きくなっていき徐々に神殿が近づいてくる。なにかのアトラクションのようで楽しくて、思わず声を上がてしまった。
そして、神殿の入り口まで巨大化した岩から飛び降りてバグを回収する。
朽ちた神殿に足を踏み入れるとそれはどこか神秘的で、どこか不吉な雰囲気を漂わせている。
俺が知ってる神殿と随分と違うな……
白亜でできた壁に宝石などがちりばめられた成金趣味……じゃなかった綺麗な神殿を思い出してそんなことを思う。
「なんかお化けがでたり、呪われそうだな……」
そんな独り言をつぶやきながら入ると、俺を迎えるかのように神殿の中心部にあったのは驚くほど精
巧な人を模した石の像だったのだ。
いや、これは石像じゃない。これは……
「女神の体か……しかも、強力なバグに侵されてやがる……」
予想外の光景に俺はごくりと息をのむのだった。
というわけで異世界の女神と邂逅しました。
これからどうなるか、おたのしみに!!
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