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14.戦いを終えて

「申し訳ありません……ドロシー様が姿を消されてから私たちも周囲のバグの対処で精いっぱいでなにがあったのかよくわかっていないのですわ。その上、私も気づいたらこんなことになってしまって……」

「そう……でも、他の五大精霊たちとも連絡がつかないなんて……」



 戦いも終わってウインディーネから話を聞いていた俺たちだが、彼女も詳しいことは知らないようだ。それはともかくだ……



「なあ、ウィンディーネがドロシーの上に座っているのってつっこんじゃだめか……?」

「何を言っているんですの!! ここはわたくしの特等席ですのよ!! もしかして嫉妬しているのかしら? 残念ですわね。百合に挟まる男は死罪ですわ!!」

「別に私は百合じゃないんだけど……それに、クリアーは私の大事な信者なんだから仲良くしなさい」

「信者……ですの……?」



 ドロシーの言葉にウィンディーネが俺を観察するように 上から下まで見て……そして、俺の持つ剣でその瞳が止まった。



「ふーん、面白いギフトを持っているようですわね……それに私を助けてくださって感謝いたしますわ。ドロシー様の第一の部下!! ウィンディーネが心よりお礼を申し上げます」

「あ、ああ……」



 ウィンディーネはやたらと第一の部下ということを強調すると優雅な所作でお辞儀をする。先ほどまでのギャップに困惑していると、彼女はドロシーの方に振り向く。



「ではそろそろ本来の仕事に戻りませんと……このままではこの世界の水分が枯渇してしまいますわ」

「ええ、よろしく頼むわ。ウィンディーネ」

「え? どこにいくんだ?」



 まるで別れを告げるかのようなウィンディーネの言葉にドロシー頷くのを見て驚きの声をあげてしまった。

 てっきりこのまま同行すると思っていたのに……



「この世界の精霊は本来は自然と共に生きて管理する存在なの。こういう風に人前に姿を現す方が珍しいのよ。久しぶりに会えて嬉しかったわ。ウィンディーネ。ほかの精霊たちに会ったらよろしく言っておくわね」

「はい、わたくしても久々にドロシー様のぬくもりを感じることができて幸せでした。ああ、人間、ちょっといいかしら?」



 彼女がドロシーにほほ笑み辞儀をした後に俺に耳打ちをする。



「ドロシー様と共にいてくださってありがとうございます。あの方は寂しがり屋ですので……」



 そして、真剣な表情になって言葉を続ける。



「このことはドロシー様には内緒にしてほしいのですけれど……おそらく私をバグに侵したのは五大精霊の誰かですわ。気を付けてくださいまし」

「なっ!!」

「ちょっと二人で何を話しているのよ」



 衝撃の事実に驚愕の声を漏らしていると、ウィンディーネはいたずらっぽく指を唇に置いて、そのままドロシーに抱き着いていた。



「うふふ、嫉妬ですの? ドロシー様が美しいからって、エッチなことはしてはいけませんと注意しただけですわよ」

「何を言っているのよ、馬鹿!!」



 顔を真っ赤にしたドロシーにクスリと笑うとウィンディーネの姿が徐々に薄れていく。自然に帰ってこの世界の水を浄化するのだろう。



「では、ドロシー様、頑張ってくださいませ。あと、人間。ドロシー様のことを……くれぐれも頼みましたわよ」



 その言葉を最後にウィンディーネはその姿を消していった。まるでそこには誰もいなかったかのように跡形もない。

 しいて言えば泉にさきほどまでの黒い水の代わりに透き通った水が湧き出てきたことくらいだろうか?



「そろそろ行く……」



 ウィンディーネが去っていったところを見つめていたドロシーに声をかけてようとしてやめた。彼女は久々の部下に再会したとというのにすぐに別れなければいけなくなったのだ。

 色々と思うことがあるのだろう。ひょっとしたら寂しいのかもしれない。



「ドロシー……俺はちょっと上の様子を見てくるよ。だから、もうちょっとその泉を見張っておいてくれ」

「……ありがとう。でも、もう大丈夫よ。別にウィンディーネとは別れたわけでじゃないのもの。いつか必ずあえるわ。それに……」



 彼女はその瞳にわずかな涙をためながらほほ笑んでいった。



「私にはあなたがいるもの。寂しくなんかないわ。あなたは私と一緒にいてくれるでしょう」

「そりゃあ、俺はお前の一人目の信者だからな」



 女神さまのデレに顔を真っ赤になっているのをごまかすように軽口を叩き地下室から地上へと戻るのだった。





「わー、めでたい、めでたいぞ!!」

「祝え祝えーーこんなにめでたいことはめったにないぞー!!」



 カイと合流し村に戻ると、なぜか宴会が行われていた。俺たちが出発するときは殺伐としていたのになにやらみんな嬉しそうに酒やごちそうを楽しんでいる。

 俺たちが困惑しているとこちらを見つけたサラが駆け寄ってきた。



「救世主様、ドロシーさんありがとうございます!! 盗賊をたおしてくださったんですね。」

「ああ、それはいいんだけど……一体何がおきてるんだ? 討伐祝いにしては準備が良すぎないか?」

「それはですね、井戸が……枯れていた井戸が復活したんです!! だから、少し贅沢をしようと話していたら、救世主様たちが盗賊を倒してくれたと聞いたのでお祝いをしようって話になったんですよ」

「お前の眷属はすごいな」

「そう……さすがはウィンディーネね……」



 サラの言葉に俺たちは顔を見合わせる。これはウィンディーネの力だろう。さっそくこの世界に貢献してくれているようだ。



「やはりお二人は救世主様でしたね。せっかくです。お二人も飲んでください。秘蔵のお酒なんですよ」

「ああ、じゃあ、遠慮なくいくか」

「ええ、そうね」



 そうして俺たちはお言葉に甘えて、杯をかわる。俺たちの初勝利とウィンディーネの頑張りにだ。

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