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11.VS盗賊

 バグの方へと向かうドロシーを追いかけていき、盗賊たちのアジトの近くの崖から下を眺めると多数のテントが張られているのを遠目にわかった。



「この中からバグを感じるんだけど、地下に泉でもあるのかしら……テントで隠してる可能性もあるわね」

「こいつら、こんなにいたのか……これじゃあ、村が……」



 盗賊たちをにらむようにしてカイがつぶやく。

 テントの数からして盗賊の数はざっと数十人くらいだろうか。なかなかの人数だ。確かにこれでは村の衛兵たちだけでは倒すことは難しいだろう。



「ねえ、クリアー、結構な数だけど倒せるかしら?」

「俺はバグ持ち相手には強いけど普通の敵にはそこまで強くないんだよな……まっとうに戦ったら苦戦すると思う」

 


 前の世界に置いてきてしまった強力なバグさえあれば話は別だが、今の手持ちのバグだけでは勝てないこともないだろうが、苦戦は免れない。

 険しい顔をするドロシーだが、彼女が何を考えているかは俺にはわかった。この女神さまは困っている善人を見捨てるという選択肢はしないだろう。

 


「そう……だけど、放置はできないわね……何か作戦はないかしら」

「確かにこんな数は三人では無理だよな……でも、こいつらが村を襲ってきたらサラねーちゃんも……」

「おいおい、話を聞けって。言ったろ? まっとうに戦ったらつらいってさ」



 険しい顔をする二人に俺はおどけた笑みを浮かべる。最後まで話を聞いてほしいな。



「だから、正面からは戦わない。俺はこういう小手先の戦いが得意なんだよ」



 そういって二人に作戦を説明するのだった。





 カイと別れて、バグリリースを使ってあたりに毒霧を充満させて十分程の時間がたった。そろそろ盗賊たちも気づいてもいい頃だが……



「くっそ、なんだこれ……気分が……」

「敵襲か……? それともここもなんか変な毒が発生してやがんのか!!」



 まるで巣に毒を放たれた虫のようにテントから何人かのふらふらとしながら盗賊が出てくる。



「ふははは、これが俺の愛しきバグの力である!!」

「なんというか……卑怯ね……」

「いいから今のうちにさっさと倒すぞ!!」



 なぜかちょっと引いた様子のドロシーの声を聞きながら俺は駆け出して、盗賊共に斬りかかる。ちなみに俺にはバグのおかげで毒の耐性が、ドロシーは状態異常回復の魔法を使っているので、影響はない。



「なんだこいつ!! 敵だ!!」

「くっそ、体が……」



 捕虜がいる可能性も考え、治療をすればすぐに治るような毒だが、相手を弱らせるのには効果的だったようで、盗賊たちはろくに抵抗もせずに俺に斬り伏せられていく。

 ちなみにドロシーはというと……



「私の世界で悪いことは許さないわ!! 光の弾よ!!」



 魔法を使ってノリノリで倒していた。こいつも結構容赦ない性格なようだ。その甲斐もあって盗賊たちはどんどんその数を減らしていった。そろそろ動きがあってもいいはずなんだが……



「お前ら情けねえなぁ!! 何をやっているんだよ!!」

「まったく、俺たちがいないと何もできねえんだなぁ」



 こいつらが幹部なのか、周りに比べて豪華なテントから顔色の悪い男が二人剣を持って出てくる。ちらっと見えたテントの中身には近隣の村から奪ったのか、金目のものや裸で震えている女性も見えた。



「くそだな……こいつら……これだったらバグの方がずっとましだ……」

「許せないわね……同じ人間なのになんでこんなことを……」



 俺とドロシーが嫌悪感をあらわにしていると男たちはにやりと笑った。



「あ、なんだ? 妙な魔法を使うようだが不死身の俺たちには毒なんぞ効かねえよ!!」

「は、そっちの女はえらい美人じゃねえか!! ちょうどほかの女も欲しかったんだ!!」

「うう……気持ち悪い視線で見られて不快だわ……」



 俺は男たちとドロシーの間に割って入るようにして剣を構える。うちの女神さまは人の欲望が苦手みたいだからな。

 それに……バグに侵されている敵ならば俺の得意分野だ。



「じゃあ、汚い欲望に支配されたやつらは浄化してやらないとな!! 歪み喰らい(バグイート)!!」

「「ぎゃぁぁぁぁぁあ!!」」

「そんな俺たちは不死身の力を得たんじゃないのか?」

「こいつらは何者だ!?」



 俺に斬られた幹部の二人は悲鳴をあげてあっさりと体内から黒い水を垂れ流して息絶える。そして、俺は虹色に輝く剣を掲げて大声で叫ぶ。



「お前らの不死身の力ははわが女神ドロシー様の加護のある俺には通じない!! 女神の力をその目に焼き付けるがいい!!」

「女神だと!! 毒をまいたり、不意打ちをしたりとなんて卑怯な連中だ!!」

「うう……毒霧と奇襲なんて女神っぽくないのに……そして、不思議と力が湧いてくるのが、悔しいわね……」



 女神への信仰は何も善の感情だけではない。女神への恐怖心もまた信仰心へとなるのだ。神の存在を肯定することには違いはないからな。

 そして、こうして目立つようなことをしたのにはもう一つ意味がある。カイが潜んでいる森の方から一本の矢が飛んできて、一つの質素なテントに突き刺さる。



「クリアー、作戦通りね!!」

「ああ、行くぞ!!」



 俺たちは逃げ出す盗賊たちを無視して、矢が突き刺さったテントへと向かっていくのだった。



女神さまの信仰心があがったぞ!!



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