第2話「冒険前夜」(二)
◇
「本当なんですか、それ」
私は牢獄に閉じ込められた男に言う。
「ああ。恐らく、〝歴史上の特異点〟となる人物を見つけ、私のところに連れて来させれば、必ず時空が元に戻る」
「なるほど」
「だが」
男は顔の横に人差し指を置く。
「その人物、どうやら旅をしているらしいんだ」
「え? どこを?」
「さぁな。そこは君たちに任せるよ」
そう言って、男は牢獄の中にある椅子に腰掛ける。
「さぁって。それを見つけるのがあなたの仕事じゃないの?」
「そうとも言う。しかし、私が見つけ出そうとすると、あいつは必ず俺を襲ってくるんだ」
「襲う?」
「さぁ。それは見つけた後のことだから、あまり気にしないでおくれ」
男は「さぁさぁ行った行った」と言わんばかりに、手を振る。
(旅人で、見つけたら襲われる・・・・・・。何を言っているんだ?)
私は内心そう思いながら、鏡の中へ入った。
(・・・・・・って、君〝たち〟って何⁉)
◇
「よし。見つけ出そう」
彼は立ち上がる。
「え? 良いんですか」
「ああ。私の国を救う為にも、手伝ってあげても良いさ」
「あ、ありがとうございます」
「良いよ。礼なんて。これは国存立の危機なんだからさ」
そう言うと、彼は「さぁ、行くとするか」と城門を示す
「はい。行きましょう」
私たちは城門の外へ、向かって歩んだ。