表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

逃亡

 オープンしたての時は大反響だった。

 行列のできるラーメン屋として雑誌にも乗ったことがあった。

 しかし今はどうだ?

 ラーメン屋“陣”と聞いてピンとくる奴なんているのだろうか。

 そんなことを自虐的にも考えてしまう。

 今日ももう夕方だが、客は今目の前でラーメン餃子セットを食べている男一人だけ。

 この後もどうせ来ないのだろう。

 赤字がかさむばかりだ。

 七月半ばに差し掛かるが、エアコンも節電と称して使わずに扇風機のみでケチっている。

 妻と子供には逃げられたが、俺にはラーメンを作るしか能がないのだから続けるほか道はない。

 油にまみれたリモコンでチャンネルを変える。

 夕方のニュースだ。

 そう言えば、夕方のニュースの特集に出たこともあったっけ。

 なんて過去の栄光を思い出しながらテレビを眺める。

 この間捕まった、寿々喜節句が逃亡したらしい。

 本名は忘れた。

 インターネット上で“寿々喜節句”として活動していた彼は、名前に“節句”と使っていたことから、節句の日になると、それに応じた殺人を繰り返していた。

 めでたいはずの節句が恐怖の日に変わった。

 さらにそれがエスカレートして、記念日だったら何でもよくなって快楽殺人へと変わっていった。

 ワイドショーをにぎわせていたから世間に疎い俺でも知っている。

 怖いことを考える奴もいるもんだ。

 まったく、そんな奴を逃がすなんて警察もなにをしているんだか。

 寿々喜節句に比べたらラーメン作りしかできない俺の方が、ずっとましだな。

 まあ殺人鬼なんていう人間の底辺と比べているようじゃ、大差ないか。

「ごちそうさま」

 男が食べ終わった器をカウンターの台に置きながら言った。

「まいど。八百九十円です」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 節句さまが殺人鬼!!!! 快楽殺人!! [気になる点] あらすじに関係ないだろ!と思いつつ >七月半ばに差し掛かるが、エアコンも節電と称して使わずに扇風機のみ にギェエエエエエってなり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ