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江戸・江戸物語!  作者: 綾瀬ぷーや
4/5

招かれざる客

バッ…と、ちか子と利通は勢い良く構えた。


二人の正面には、男が一人。


筋肉質で、黒い肌には傷がちらちらと見える。

目つきが悪くいやらしい笑みを浮かべている。

特に際立つのは彼の薄汚い緑髪。


不愉快な笑みを浮かべる人間。

ちか子は思わず不快そうな顔をする。


「おーおー、可愛い女の子もいるじゃん♡

さっさとこんなとこぶっ潰してお兄さんと

遊びに行こうよ♡」


太く汚い声だ。

一瞬恐怖を顔に浮かべたちか子を庇うように、

利通が一歩前に出る。


「関係者以外立ち入り禁止のはずですが。

それに、海老名先生の力で普通の人間には

この場所は見つけられないはずです。



…反逆者の輩か何かでしょう?」


利通が顔を下に向けて、眉を寄せて上目遣いで

不愉快そうに問う。


男がニタニタと笑いを続けて今度は利通を

見やる。男が利通を捉えた瞬間、心底気味悪そうに顔を歪ませる。


「まつ毛が長いねぇ…。背も高いねぇ…。

鼻も高くてぇ、顔の輪郭がシュッとしてるねぇ。






不愉快!!吐き気がするなぁっ!!」


汚い黄ばんだ歯を覗かせて唾を吐き出した。


シン…と、一瞬の沈黙が起こる。

"何かが起こる"、とちか子と利通は理解した。



「_どっせぇーい!!」


男が声を張り上げて足を地面に叩きつけた。

その瞬間、利通の足元に微かな違和感が生じる。


足元を見やると、高速で地面に亀裂が生まれていた。あっという間にそれは人など軽々落ちてしまう穴へと変化する。


一瞬で足場を奪われた利通は抵抗する間もなく落下する_と、思われた。



「ッ!!…まだ死ねないなッ!」


利通の空いた足元に、爆発したような光が生まれる。しかしその音は…表現するなら"電気"。


バチッと強めの音が鳴ったかと思ったら、

利通は飛躍するように宙を舞い、安全な地面に

華麗に着地する。


「身体能力も良いだと…?憎い、憎い、憎ぃぃぃ!!!」


男が爪を噛んで地団駄を踏むと、それに合わせて

各所に亀裂が高速で生まれる。



しかし。


ちか子も利通も、今度は先程の倍の反射神経で

亀裂が大きくなる前に避けていた。


更に苛立ちに顔を歪める男に、ちか子がニヤリと

楽しそうに笑みを浮かばせながら言う。


「海老名先生の方針は"一度受けた攻撃、

二度目以降は必ず避けなさい"や!海老ちゃんはスパルタなんやで!舐めんな!」


そう言い切ると共に、ちか子が後ろへ大きく飛び下がる。ちか子が着地した地点は近くにあった木の枝。


そして、大きく口を開けて、"声"を放った。


「""さっさとお帰りくださいやがれ!!!""」


それは、ある一種の波動だ。

ちか子の口から出た波動は、男に向かって一直線に向かっていく。


男はその波動にまんまと当たると、しゃがみこみうずくまって痛がっている。


一方、ちか子の声は届いたにもかかわらず

波動に当たっていない利通は何も変わった様子は無い。


つまり、このちか子の声の種は波動に当たっている人物にのみダメージが行く仕組みなのだ。


「う、おごぉぉあッ!!」


耳を抑えて苦しむ男。追い打ちをかけるように、

利通が男に手を向けた。


「殺しはしないよ。俺らは君とは違うんだから。





…かえって苦しむ結果になってしまうのかな。」


利通が口を閉じた瞬間、激しい光が生まれ、

バチバチと音を鳴らして男へ向かって進み、直撃する。


「あ"ァッあ!!」


そう、悲鳴を上げたと思えば、男は白目をむき、

数回小さく呻いたあとに泡を吹いて気絶した。


男の哀れな結末に嫌悪を隠さずにちか子が

顔を歪めた。


「こーんな弱いんに、なんで一人で突っ込んで来たんやろな?」


「余程のバカじゃないかぎり、

こんな無鉄砲に突っ込みはしない。」


(余程のバカじゃないかぎり、ね。)


利通は最後の自分が放った攻撃を思い出す。


確実に仕留めるために利通が狙った箇所は

腹だ。しかし、男は不思議な事に身体を動かし

腕に命中させた。


結果として、利通の電撃は少しでもかすれば

それは身体全体に行き渡るので男は目論見通り

気絶した。


けれど大事なのは"超高速の電撃に反応した"事実だ。


死に際の冴え渡った反射神経か、それとも_



利通が神妙な顔で悩んでいるのを見兼ねてか、

ちか子が男に背を向けて利通に笑いかけた。


「とりあえずコイツは先生に報告しとこや。

触るの嫌ややから持ってけんわ。利通クン

見張っててくれん?」


「良いよ。俺が見張ってる。」


利通が頷く。しかし、途中で利通の整った顔に

戦慄が走る。利通の視線の先には_



確かに気絶したはずの男が起き上がり、今にも

ちか子に襲いかからんとしていた。


ちか子はまだ気づかない。

利通は焦燥感に苛まれながら声を出そうと口を開けた。



利通が声を出そうとするのと、男が走り出すのは

ほぼ同時だった。





「ちか子__!!!」

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