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プロローグ
日本が嫌いだ。
病院の窓から見える東京の景色を目に、力なくそう呟いた。
人生、何もかも上手くいかない。まるでゴールのない迷路に迷い込んでいるような、そんな気分だった。そびえ立つ灰色のビルが出口を塞いでいるように見える。それも、自分の進む方向だけに。
この世は地獄だ。もうやり直すことはできない。すべてを憎んでいる。僕の中には激しい憎悪と破壊衝動が渦巻いている。しかし、と僕は平静さを取り戻そうとした。嫌なことを考えないように努力する。この、負の感情のスパイラルに一度陥ってしまえば後戻りできない。それがはっきりと脳内にイメージできた。かつて、日本を代表するアニメーション会社を燃やしたキチガイがいた。彼のような失うものがない人のことをこう呼ぶ。
無敵の人と。
自分はそうはなりたくないのだ。たとえ他者から見て僕が無敵の人であったとしても、そんなどうしようもない人間にまでは堕ちたくない。僕はただ、ひっそりと、誰にも気づかれずに死にたいだけなのだ。