トワイライト 2
二人から映画「トワイライト」みたいな結婚式をしたいとメールがあった。
「映画、ご存知ないですか?」
「あら、知ってるわよ。そこの老人は知らないでしょうけどね」ってオババ。
やっぱ、根にもってる。
老けたって言われたことで、怒ってる。
で、オババがこういう映画知ってるはずないから。
「私も知っているわ。ハワイナイトでしょ」って叔母。
ハ、ハ、ハワイナイトって?
あれ? 聞き間違い?
トワイライトだから。
もしかしてハワイの結婚式だと勝手に脳内変化した?
「ハワイで結婚ですか。でも、優ちゃんは高齢妊娠中で、旅行がむずかしでしょう」ってオババ。
オババまで脳内変化、完璧にしてる!
すっかりハワイになってる!
二人で同時にシンクロしてハワイにしちまった。
違うから、誤解だから。
「ハワイで結婚ですか」と、叔母もダメ押し!
ほんの数秒のスキをつかれ、ゴールテープ、先に切られちゃった。
トワイライト、ハワイナイトじゃないから。
まずい。非常にまずい!
違いますって訂正する好機をモノにできなかった。
この手痛い数秒で世界はカオスになった。
二人とも、どっちも引く気がなく、いま間違いを指摘するって、どんだけ危険なことか。
ことによると、強豪ふたりがこっちに向かって突進してくっから。
だから、いっそ映画を見せちまえって、そうして、指摘せずに、なんとなく悟らせようって。トワイライトは映画の話だってこと。
「あの」って、私は間に入った。
「実は、見せたいものがありまして」
オババがこっちを向いた。
「それは、結婚と関係があるの」
「あります、非常にあります。それこそ、関係しかありません」
「そうなの。じゃあ、いいわ。ところで、年齢だけは私より若いけど老けて見える人に聞いてちょうだい。どうするのって」
隣にいるじゃないか。まだ、話をしないつもりか。
オババ、素知らぬ顔で目の前のお茶をズズってすすっている。
「あの、叔母さんはどうしますか?」
「なんのことでしょう」
聞こえてるでしょ!
「見せたいものがあるんです。優ちゃんたちの結婚に関係した大事なものです」
「あら、よろしいですよ」
うわ、こっちは高慢ちき態度できた。
で、私、ともかくテレビをつけ映画を検索して探したわけです。
『トワイライト/ブレイキンドーン Part 1』
森の結婚式がある作品で、優ちゃんがこれを見て、こんな結婚式にしたいってやつ。
「これなんですが」
「映画がどういう関係があるの」と、叔母。
見る気、まったくなさそう。
「ヴァンパイアの映画で、この映画を見た優ちゃんが結婚式を同じにしたいって言ったんです」
「ハワイの映画なんですね」
まだ、そこから一歩もすすんでないんかい。
「ま、ご覧になれば、優ちゃんの気持ちがわかるかと」
で、私、映画を見せた。
でね、この映画、冒頭で若い男ジェイコブが、上半身の服脱ぎ捨てて裸になり狼男に変身するんで。
その瞬間、
「ヒョエ! はしたない」って叔母、顔をそむけ。
「おや、なかなかいい男じゃない」って、オババは嬉しそう。
それで、叔母が、「もう、あなた、いったい幾つなの、はしたない」
「おや、私、若い男の裸なんて見慣れてますからね。別居10年の人さまとは違います」
「オタクの夫は。確か、もうすぐ80歳に」
と、まあ、二人の直接会話までもっていけた。
ある意味、やり切った感がある。
で、その後、結婚相手なら狼男がいいとか、いや、ヴァンパイアの男がいいとか。もう、うるさいのなんの。
ちなみに、オババ、イケメン設定のヴァンパイア役のエドワードを。
「青っちょろい男ね、これが今のいい男なの。まったくそうは思いませんよ」
そりゃ、この映画、低予算だから。
トップ俳優なんてギャラ高くて雇えなかったから、ディカプリオとか、そんな俳優出せるはずもなく、その辺りを攻めると辛い映画なんだ。
超美男美女のヴァンパイアという原作設定が、出演俳優のおかげで、
辛い……。
で、すぐ結婚式に森がでてきて、ふたりとも押し黙った。
ハワイじゃない。森だ。
テレビの前でオババと叔母、ちょこんと座って神妙に見てた。
言い忘れたが、映画、前半部分、ほぼラブシーン。
新婚旅行に出かけた二人、海に裸ではいったりと、もう、延々とラブシーン。
私……、そのこと忘れてた。
お察しくださいませ。
(つづく)
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