元聖女は知らない
現在の王子の婚約者は新聖女アオイの方です。元聖女クレハは現在はただの新聖女の侍女のはず……です。
「君っ!!そのチョコレートに魔力を込めて食べさせただろう。」
「失礼ですが、どうしても毒殺が恐ろしいので魔力を込めさせていただいています。」
王子が持ってきたお菓子に魔力を流すというのは、確かに王子を疑っているようでちょっと失礼かもしれません。チョコレートを味わいながらどうフォローすべきか言葉を探します。
「そうじゃない!!自分の魔力をクレハに取り込ませるなんてっ!!」
そうじゃないんです?どうやら論点が違うようです。
形式的でも毒を仕込まれているか疑われたのが嫌だったのかと思ったんですが。
「クレハもお茶を魔力で抽出してくれてますし、大丈夫です。」
アオイ様はにっこりと、笑顔を王子に向けます。王子は何やら驚いたような顔で私を見て、それから軽く首を横に振りました。
「クレハは小さい時から城にいたから他人の魔力を摂取する意味をしらないだけで」
「回復のためとかじゃないんですか?」
思わず口を開いてしまった。
他人の魔力を摂取する意味。そんなの回復や状態異常回復のためだと思っていたのだけれど。
「王子も私が聖女だった時、疲れたからと言って疲労回復用に私の魔力のこもったお水を飲んでらっしゃったじゃないですか。」
そう言えば王子は頭を抱えてしまいました。
……ヤバいこと言っちゃっいましたかね……。それとも口を挟むのは無礼過ぎましたか?!
「へえ……。何も知らないクレハにそんなことを?」
アオイ様は相変わらずニコニコしていたけれど、その言葉はどこか鋭いです。
というか、さっきから何か私の知らない常識が前提にある気がするんですが。
「いや、僕は本当に疲労回復を」
「それなら解毒目的で私がお菓子に魔力を込めても、それをクレハに食べさせても良いですよね?」
「ぐっ……。」
でも多分ツッコまないほうが良いんでしょうね。知らない方がいいことも世の中にはあるわけですし。
君子危うきに近づかずというやつです。聖女から君子にジョブチェンジしましょう。え?教養が足りない?世間知らずだから無理とか、今更手遅れとか言わない言わない。
現実逃避をしている間に何か決着がついたみたいです。
「というわけでクレハ。いつもみたいに私にも食べさせて。」
勝ち誇った笑みを浮かべたアオイ様は、王子に止めを刺したいご様子。
やめてさしあげてください……。
むしろ婚約者は王子なんだから王子に食べさせてもらってください。
多分この後クレハはアオイの圧に負けてると思います。多分。
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