新聖女のお願い
「イメージが大切ですよ。アオイ様。」
「イメージ?」
「魔力を抑えるんですが……無理やり抑えるのはあんまり良くない気がします。」
「気がする……。」
「半分独学なので理屈とかは知りません。」
「おー……。」
とりあえずあれから1週間くらい頑張って、アオイ様は自分の魔力を感じられるようになりました。なので次は抑える練習です。
「抑えるというか、周りから感知されなければ良いんですよ。だから魔力を隠す方向の方が楽かな~と思います。」
「魔力を隠す……ですか。」
「魔力は多分、水だと思うと扱いが楽だと思います。」
「つまり……水を隠す……?」
「蛇口をしめるとかもありですけど私は湧き水のイメージを使ってます。」
「湧き水……。」
「そうです。森の中に湧く、湧き水。」
森の中にあれば周りから見えにくいですよね。
「深い森の方が周りから分かりにくいですよ。」
「つまり深い森の中に、湧き水である魔力を隠せばいいと。」
「そうです。」
物分かりが良いようで何より。
アオイ様は目を閉じてイメージを固めているようです。
静かに魔力の様子を見ていると、少しずつ溢れている魔力が分かりにくくなっていきます。
「こんな、感じ……?」
「はい!よくできてますよ。」
月の魔力が感知できる人でも、怖くなさそうなレベルまで魔力が抑えられているのを確認して頷きます。
「本当?」
「はい。」
「よっしゃ!!」
「!?」
突然の声に今度はこっちが驚きます。意外と声が野太いんですが?!
見れば何やらアオイ様が感動した様子で手をわなわなさせています。
……何だろう、この動き。でも目が何かキラキラしていて綺麗というより
「可愛い……。」
「え?」
「っ!!」
どうやら心の声が漏れてしまったようです。いけない、いけない。思わず口を手で塞ぎます。
それからアオイ様の様子を確認するとアオイ様は何とも言えない表情でこちらを見ていました。
「えっと……すみません。失礼でしたよね……。」
「い、いえ、そうではなく可愛いと言われたことは……あまりなかったので。」
「そうなんですね。確かにアオイ様は可愛いというより綺麗系ですし。」
「っ……!」
意外とアオイ様は表情豊かです。今もうっすら頬を染めていて可愛らしい。
私がだらしなく表情を緩め続けていると、アオイ様は少し拗ねたように唇を尖らせました。
「まあ……良いです。褒められてるんですし。」
「そうです。褒めてますよ。」
何か開き直ったアオイ様に同意します。
そうです。可愛いは正義って私の保護者も言ってました!
「アオイ様?」
アオイ様は静かに私をジッと見つめてきます。その海のような深い青に私を映して……
(沈黙が!気まずい!!)
なんで黙って私を見るんですか?!
……それにしても綺麗な瞳。息をするのも忘れちゃいそうなくらいです。私が憧れていた月の魔力は、アオイ様にこそ相応しいのでしょう。
近づいてくる青い瞳に、私はぼんやり見とれてしまいました。
「うん!やっぱりクレハには私のそばにいてもらわないと!」
「え?!」
「聖女の力の使い方なんてクレハにしか聞けません!!」
いきなりアオイ様が笑顔でそんなことを言い出しました。
それは困るんですが?!というか、王子に言われなくても私は時期を見て城を出ていくつもりだったのです。遅くなればなるほど……保護者が心配してしまいます。
私の困惑が表情に出ていたのでしょう。
「お願いです。」
アオイ様は私の手を両手で包んで
(お互い座ってるのに上目遣いとか器用ですね?!)
目をうるうるさせて……
「ダメですか?」
と捨てられた子犬のような雰囲気を醸し出してきました。
「ぅぐっ………………分かりました。」
その結果、私が折れました。
アオイ様のお願いテクニックは見た目フル活用です。自身の魅力を分かった上でやっているに違いありません。アオイ様の魔力とかより、そういうとこの方が末恐ろしいと思うのですが?
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次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。




