元聖女は怖がらない
「良いですか、アオイ様。自分の中の魔力を感じてください。アオイ様のはあれですよ。お風呂のお湯でも張るのかって勢いの5倍くらいの勢いで溢れかえってるんですから。」
「溢れかえりすぎなのでは?」
「溢れかえりすぎなんですよ。月の魔力が感知できる人たちからしたら最早、恐れの対象です。」
「恐れの対象……。」
城の中の教会関係者がアオイ様に挨拶に来ない原因は多分これだと思います。
私の抑えた魔力でも国を守る義務は果たせていたから、アオイ様ほどの力だと何が起きるか分からないんでしょう。
ちなみに王族とか上層部の大半は腐ってるので月の魔力の感知も殆どできません。今回はラッキーでしたね!
「とりあえず同調しますから、アオイ様は自分の中の魔力を感じてください。」
向かい合って座った状態で私はアオイ様の手を両手で包み込みました。
意外と手が大きい……。いやいやそうじゃなくて……探るのは、アオイ様の魔力の発生する場所。……本当に綺麗な、月の魔力……。この感覚をアオイ様に伝えて―――
「クレハは?」
「え?」
「クレハは怖くないんですか?」
どういう意味でしょうか。
魔力を探りながら考えます。私は教会に怖がられてないのかってことですかね?
「私は魔力を抑えているので」
「クレハは、私が、怖くないんですか?」
意味が違ったらしいです。アオイ様はゆっくりと尋ねてきました。私はその問いかけに、魔力感知をやめて顔を上げます。とても真剣な響きだったので、ちゃんと応えるべきだと思ったんです。
思ったよりアオイ様の顔が近くてびっくりしましたけど。
「怖くないですよ。」
「クレハは月の魔力が分かるんですよね?」
「分かりますよ。」
「じゃあなんで」
「アオイ様は悪い人じゃないですよね。」
「……え?」
「じゃあアオイ様の魔力も悪いものじゃ無いですよ。」
それに一応私も偽物聖女になれるだけの力はあるのです。最悪どうにかできると思います。その辺りのことは口には出しませんけど。
それでもアオイ様はまだどこか不安そうな表情。私はとりあえずアオイ様を安心させるために頑張って微笑みました。
偽物聖女スマイルにどれくらい効果があるか知りませんが、無表情よりマシだと信じたい!
「大丈夫です。私は、アオイ様のこと、怖くないですよ。」
努めて微笑んでそう言えばアオイ様は一瞬息を飲んだ後、表情をほころばせました。
「ありがとう。私、クレハのこと大切にするわね。」
アオイ様の笑顔の方が破壊力が高い!!これが本物聖女スマイル!私浄化されちゃいそうです。
アオイ様の笑顔の威力に流されて私はアオイ様の言葉の意味を深く考えませんでした。
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次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。




