月の聖者の言葉
保護者が穏やかに昔話をするように、私に言い聞かせる。静かに記憶に水滴を落とすように。
それは、確かに見た光景ではないのかもしれない。
あやふやな記憶と憧れでできた心象風景かもしれない。
それでも私は見たのだ。あの深い森の中、泉のそばで、なによりも美しく輝く月を。
「あ……え……?」
あの美しい月が、アオイ様?え?
私が顔を熱くして混乱しているとアオイ様が歩いて距離を詰めてきました。
「クレハ。俺は10年前のあの日から君を探していた。俺が人間になれたのはクレハのおかげなんだ。本当にありがとう。そして」
アオイ様が私の手を取ろうとしてきますが、一応接触はさせない方面のようで保護者が私を抱えたままアオイ様の手をよけます。
そうです。ここまでずっと私は保護者に抱えられていますからね。
いや、だって、今アオイ様に触れられたら心臓が
「クレハ。君が10年前の恩人であることとは別に、俺は君に惹かれていた。」
「ふぁい?!」
「あまり良いうわさを聞かない国の、出来損ないと言われた聖女に最初は興味なんて無かった。けれど、実際に会ってみたらクレハは、本当に、素直に笑うから」
クレハが笑うのが嬉しかったし、クレハが淹れてくれたお茶は美味しかった。
なによりクレハは俺を怖がらずに、楽しそうに接してくれた。
「クレハ。俺は大切なものは大切にするし、手放そうとも思わない。他の誰でもない、クレハに、ずっと傍にいてほしいんだ。その……す、好きだ!!俺と結婚してできればサルビア王国で一緒に暮らしてください!!」
これは……あれですね。アオイ様も相当テンパってますね!!
陶器のように白い肌があんなに赤くなるなんて予想外です!それに最後の方は敬語でしたし
「……クレハ。」
「ひゃい!!」
「現実逃避は止めて、彼の言葉に向き合ってあげなさい。」
うう……テンパってるのは私もです。
いや、だって好きな人に告白されたんですよ?!あんなに此の世のものとは思えないくらい綺麗な人に!!現実逃避しない理由が無くないですか?!
「ちなみにあなたの父親はサルビア王国の前国王の弟。そうなるとあなたの立場は王族では?」
そう言えばそうです!!よく考えてみればそういうことです。
王族には正直良い思い出があんまりないんですよね。主にコランバイン王国の皆さんのせいですが。
「一応前国王が俺を養子という立場で迎え入れてくれたので……今の国王と俺は兄弟関係です。」
「つまり王弟か。」
意外とお偉いさんなのでは?それって今の王様に子どもができない限りは次期国王の立場なのでは?
「俺はクレハを聖女としてサルビア王国に連れていくつもりはありません。コランバイン王国とは違い、たった1人の聖女に負担を押し付けなくても魔物から国を守ることがサルビア王国には可能です。星の魔力を持つことを隠さなくても、聖女に祭り上げられることが無いように、俺が手を打ちます。」
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次回で最終回予定です。最後までお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。




