偽物聖女になるまで
最初数行以外はアオイ視点です。
「いいかい、クレハ。君の魔力は星の魔力。願いを叶える魔力だ。根本からは無理だけど、溢れた魔力を他の魔力に変換することだって可能だよ。」
「他の魔力に?」
「月の魔力しか聖女と認めないというのなら、お願いすると良い。君の魔力に、君から溢れる魔力を月の魔力にしてください、と。」
「身を固めろ。」
兄の言葉に俺はげんなりした。
「俺は別に液状でも何でもないけどな。」
この前開発した魔力を使った道具の使用報告書に目を通しながら、適当な返事をする。
兄はムッとしながら続ける。
「お前の愛が重いことは分かってる。俺たちの一族の傾向は周りの部下も知るところだ。お前が身を固めてくれれば、この国の皆も安心してお前を信じられる。」
そう言われて俺はため息をつく。
「一応俺はこの10年間、この国のために尽くしてきたつもりなんだけど。」
「いや、確かにそうなんだけどね。お前のそれは罪滅ぼしというか、ただの情というか。」
「……俺、意外と兄さんのことは普通に好きだけど。」
「お、おおう。ありがとうな?いや、まあ、何となく伝わらないでもなかったが、うん。」
兄は急におどおどしだした。一応兄には恩も情も、家族愛もある。
そうじゃなければここまで国のために尽くそうとは思わなかっただろう。
「ただ俺も、お前のことが心配なんだ。お前の存在をいまだに危険視するやつもいる。こんな城の端っこで引きこもらせてるのも気が引けるんだ。お前が身を固めてくれれば、周りのやつらにお前が危険じゃないって言う材料が増えるんだ。」
そんな理由で結婚したくないんだけど。
俺はため息をついた。別に俺は今の生活にそこまで文句はないんだ。不満なことがあるとしたら、それは
「俺はそれより俺の恩人を探しに行きたいんだけど。」
10年前のあの日に俺を救ってくれた恩人を探しに行けないことくらいだった。
兄さんの恋人がコランバイン王国に行くという話になった。サンダーソニア王国の気の弱い病弱なお姫様だった。何とかしたいけど、逆らうことは出来ない。
無理やり兄が表舞台に出て文句を言ったら戦争に発展しかねない。兄は浮かない表情で、お相手のアイカ様もシクシクと泣いていた。
「え?コランバイン王国のやつらはアイカ様の名前も姿も知らないんですか?」
「はい。おそらく、月の魔力を持っていれば誰でもいいのでしょう。」
そこで俺は思いついたのだ。月の魔力の量なら並大抵の相手に負けるつもりはなかった。
「兄さん。俺が行きます。」
「は?」
「アイカ様の代わりに、俺がサンダーソニア王国の姫としてコランバイン王国に行きます。その間に兄さんはとっととアイカ様と結婚してください。」
純粋な国力はコランバイン王国より俺たちの国の方が上だ。正式に結婚してしまえば、アイカ様に手は出せないだろう。それでサンダーソニア王国も保護下においてしまえば後からばれても問題は無いはずだ。
「俺が行って、できれば色々探ってきます。コランバイン王国の弱みとか探せば後々便利でしょう。」
「だがっ……!」
「俺も行きたいんです。国内じゃ星の魔力を持つ人はいなかった。王国の位置の関係上、俺の恩人はコランバイン王国にいる可能性もあります。とりあえず現在の聖女に話でも聞きますよ。」
兄さんはそれでもどこか不安そうだった。だから俺は笑って言ってやった。
「ああ、ついでに結婚相手も探してきますね。」
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