偽物聖女は距離感がおかしい
とりあえずアオイ様は湯浴みを終え、部屋でお茶をすることにしたようです。
「クレハが国中に魔力を流しているのと、クレハの髪が短いのは何か関係があるの?」
お茶の用意をすると、そんなことを尋ねられました。口調が砕けてるのは性別を明かしたからですかね。
聖女は普通、髪を伸ばします。髪は魔力を貯める優秀な媒介になるからです。髪が長ければ長いほど、魔力を貯められます。まあ、私の逃亡についてくるつもりのアオイ様になら話しても良いでしょう。
「そうです。結構前から地方に行くたびに髪を切り落として魔力を貯められるように、魔力が国中に行き届くようにしていました。」
この国のあちこちに私の切った髪が散らばっている……。そう考えるとゾッとしませんね?
「まあ、確かに攪乱には良いかもしれませんが。」
アオイ様はそう言いながら短い私の髪に触れてくる。いかんせん髪が短いので距離が近い。
「アオイ様……。」
「んー?」
「アオイ様!!」
流れに任せて髪に口づけようとするアオイ様を押しのけます。
流石に看過できません。前から距離は近かったけれど、性別を明かしたら何か遠慮がなくなりました。
普通逆じゃない?男性ってバラしたんなら、もうちょっと距離感が大事だと思うんですが。
「クレハ。あーん。」
「だから、もうそういう戯れは、んむっ。」
離しているのに口の中に菓子を突っ込まれます。
突っ込まれたら食べるしかないですよね。もぐもぐごくん。飲み込んでから口を開きます。
「もう、ここでは良いですけど、私と一緒に逃げたらこういうのは無しですよ。」
「どうして?」
「私の保護者が……保護者的な方が、私に近づく……特に男性に対して厳しいからです。」
「……へえ?」
アオイ様は何やら挑戦的な笑顔。不穏な予感しかしないんですが。
「まあ、私の保護者も問題ですが……。そもそもアオイ様は何者なんですか?」
「私はアオイよ?それ以上でもそれ以下でもないわ。」
うーん。男なのに聖女としてここにいる人の言葉の信憑性とは……。
私の視線が胡乱気なのに、アオイ様は苦笑します。
「いや、実際俺はアオイなんだよ。それは本当。」
つまりアオイという名前は本名だと。
「ここに来る予定の元々のお姫様の名前はアイカ様だった。」
「ふぁ?!」
唐突な人物紹介に驚いてしまいます。誰です?!アイカって。え?
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